" 天声人語 "
2000年 5月 02日 カメラ5・2
▼中米グアテマラで、連休を楽しんでいた日本人観光客ら が、暴徒化した地元の住民に殺 傷された。なぜ不幸な事態になったのだろう。文化 人類学の池田光穂・熊本大学助教授 (43)[当時:現・大阪大学]に聞いた。
▼池田さんは、調査のため毎年のようにグアテマラに行く。 事件のあったトドス・サント ス・クチュマタンには何度も長期滞在した。町の人 のほとんどはインディヘナ(先住民族 )。男性は色鮮やかな民族衣装をまとうが、これはグアテマラでも珍しいそうだ。
▼この4、5年、先住民族の暮らしぶりを見られる観光地と して知られるようになった。 ホテルも5、6軒に増えた。事件現場では朝市が週 に2回開かれ、ごった返す。それを目 当ての観光客が、バスで乗りつけ、写真を撮ったり土産を買ったりして引きあげていく。
▼人びとはおおむね平和的だ。事件の報に、池田さんは困惑 している。けれども素地はあ ったと思う。一つは政情、社会の不安。あちこちで 騒ぎが起こる。巻き込まれた記者が殺 されもした。一つは、白人や白人との混血者に対する、先住民の警戒感。子どもをさらっ て臓器を売買 するといったうわさを、池田さんも耳にした。
▼そして、一つがカメラである。「撮られてオレたちが喜ん でいると思うなよ。写真を売 ってカネをもうけているんだろう」と池田さんは言 われた。撮影を邪魔された人もいる。 国境を越えたメキシコ側の村落には「撮るな。撮って殺された者もいる」と警告文があっ た。
▼積もった不安と不満。だれかが向けたカメラがそれに火を 付けた、と池田さんは推論す る。興味本位で撮られれば、人は愉快ではない。悪 意はなくても、気持ちを無視したと受 け取られるかもしれない。
▼すぐに「危険な地域」と決めつけないでほしい。相手と、 人間として向き合っている かどうかも考えてみてほしい。そんなふうに池田さ んは語った。
【出典】
朝日新聞社論説室『天声人語 2000年1月-6月』Pp.188-9、東京:朝日新聞 社、2000年
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文献
Paul, Benjamin. 1950. Symbolic Sibling Rivaly in a Guatemalan Indian Village. American Anthropologist 52:205-218.
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