危機管理技術の学としての文化人類学
La otra Entrada de la manejamiento de Crisis
「規律社会ではいつもゼロからやりなおさねばならなかったのにたいし、管理社会では何ひとつ終え ることができない」「規律社会における見せかけの放免と、管理社会における果てしない引き延ばしは、まったく違うふたつの司法生活の様態である」
——ジル・ドゥルーズ『記号と事件』(邦訳、p.295)
「危機管理としての熱帯病対策」集会を、文化人類学の研究対象として眺める
研究集会のタイトル(=命題)の前提:危機としての熱帯病(流行)
熱帯病の新規出現・蔓延・これまでとは異なった流行パターン(人為を含む)を問題化し、それ らへの方策を練る。
具体的な問題には、それぞれ解決法がある。解決法を模索すべきだ。(→学問としての近代 医療の特徴のひとつ)
a) それぞれの解決法には、なにか一般的・共通する点があるはずだ。それを学びたい。
b) 直接役立たないにしても、ほかの解決法には、自分たちが取り組んでいる問題系を解き明かしてくれるヒントがどこかにあるはずだ。それを叶えてくれるのでは ないか。
【余滴】
危機管理:不測の緊急事態の予防と発生後の対応措置
危機管理の外交モデル
ガリ前・国連事務総長「平和への課題」
予防外交 preventive diplomacy
平和の創出 peace making
平和の維持 peace keeping
平和の建設 peace building
平和執行部隊(peace enforcement unit)
“ある学問を知るには、その研究者が具体的に何をやっているかを知ることだ”
文化人類学の2つの実践(相互に有機的に連関)
i) フィールドワークの実行
ii) 民族誌および民族誌論文の生産
とそれらをめぐる果てしない議論
i') 聞き取りを中心とした定量的あるいは定性的なデータの収集
フィールドワーク調査の2つの隠喩
1. 測定(measurement)
ii') 対象の人たちがどのように生きているか(何を考え、何を感じ、どのように行動しているのかを「理解」する)
よい民族誌の条件
1. 妥当な説明(論理整合性)
2. 解釈の公共性(実践の可能性を引き出す)
3.1 文化分析のプラグマティックな応用
利用可能な資源としての文化
人びとが危機にどのように直面しているのか、ということについての現状の把握
ドロップ・アウトしている学生に、「知識を押しつけるタイプ」の勉強の意義について 教えるのはナンセンス
彼女/彼らの学問観やライフスタイルをフィールドワークを用いてデータを収集す る。民族誌論文を通してその現象を理解する。
2つの戦術
(1)人びとがもっている固定観念を解放し、別の知識体系に基づいたプログ ラムを用意する。
(2)管理当局に対しては、そのようなプログラムを可能にさせるような社会 環境の整備への助言・提言をおこなう。
3.2 「文化分析のプラグマティックな応用」に対する実践的な批判活動
文化分析のプラグマティックな応用に従事する文化人類学者は、その行為を正当化するために、 それを当たり前で所与のものとする(=自然的態度)傾向がある。
文化分析のプラグマティックな応用をおこなう人類学者を学問的にモニターする監査制度と しての批判的視座が必要になる。
医療援助協力の事例:
現地における保健教育計画には、現地の文化を人びとが生きる資源として利用して いるという現象を分析モニターできる人類学者(=応用人類学者)が必要である。
応用人類学者は、現地の文化分析をもとに、現地の人たちの文化習慣に則した教育 プログラムの策定に関与する。
と同時に、それらのプログラム全体の動態を研究対象とする人類学者が、教育プロ グラムに関わるすべてのスタッフ(応用人類学者も含まれる)と現地人社会との調査把握し、モニターする権限を与える。(この人類学者はネィティヴ人類学者 が望ましい)。
煮ても焼いても喰えない文化人類学者(=旨くない)
堅い革底として使う(=唯一の取り柄がある)
情報資源としての文化人類学 者をお忘れなく!
人間のあらゆる知的営為に不可欠なこと
反省を開放してくれる「安全弁」として
人文社会科学を忘れることは人類滅亡への道
毎日新聞(長崎版)に掲載された筆者(ホーマーではありません)の後姿 2002/12/25撮影
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099