盲目であること
Being Blindness in Medical Anthropology「開発途上地域で白内障を病むとはどういうことをさ
すのか?」
という、骨太の民族誌調査をやっていただきたいような気がします。また、そんな研究というものは、あまりみかけないからです。
ただし、それだけでは、あまりにも調査対象の範囲が狭いので、病院や診療所が把握する眼疾患患者のみならず、市井の失明者――先天者あるいは中途失明者な
どすべてを含む――などにもインタビューを敢行して、眼が見えないことの文化的意味、まわりの人たちの反応、公衆衛生政策の進展により、どのような変化が
みられたのか? 専門家にも幅広くしらべていただければ、よい研究になると思います。
他の世界の地域との比較研究、広く「盲文化」と呼ばれているものの、普遍性と特殊性(後者は文化依存的現象になりますね)を明らかにすべきですね。
でも、上にあげた、研究は医療人類学という分野の研究なので、看護や保健学では「そんなの研究ではない」とおこられそうです。
医療人類学は、病者がどのようにして社会を生きているのかを明らかにすることで、専門家はその病者にどのようなアプローチをすべきなのかについて多角的に
考えるからです。
当然、研究地域の言語や文化に精通する必要があります。
Patient-oriented で Professional-oriented
の学問ではないのです――もちろん医療専門家に特化した医療人類学研究もありますけど……
もし御手元に拙著『実践の医療人類学』があれば、第11章〜第13章をお読みくださいませ。
Gwaltney, John L., The thrice shy : cultural accommodation to blindness
and other disasters in a Mexican community. Columbia University Press,
1970. というエスノグラフィーがありますが、日本ではほとんど入手できません。
文献
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