帝国医療とラテンアメリカの身体
スペイン植民地時代の医療制度
「中南米入門」と題する本講座に、帝国医療や身体論というテーマがふさわしいのか講師自身が当惑しています。本演題にあるように、ラテンアメリカという領域あるいは文化範疇が実際に〈身体〉をもつというのは全くの冗談であるかあるいは知的に高度な比喩的表現に他なりません。
私ができるのは、中央アメリカにおける私自身の経験から、現地の保健医療は今どんな状態におかれているのか、またどのようにして人々の生活の中に保健医療が組み込まれているのか、そしてまさにラテンアメリカの〈身体〉とはいったい何なのかについてご紹介し、それについて考察することでしょう。文学・文化・政治など第一級の諸先生のハードコアな講演とは違う、儚くもまたか弱いソフトな肌をもつ〈身体〉という観点から入る、これまでとは違ったもう一つの中南米入門になれば幸いです。
講師紹介
池田 光穂(いけだ みつほ) 大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授
1956年大阪市内で生まれました。鹿児島大学理学部生物学科卒業後、大阪大学大学院医学研究科博士課程単位取得済退学。医科学修士。1984年から3年間、JICA青年海外協力隊員としてホンジュラス共和国保健省に派遣されました。専門は医療援助協力の文化人類学的研究ですが、グアテマラにおいて先住民が受けた内戦の暴力の社会的効果、コスタリカにおける生物多様性の社会的意味などにも関心を持ち続けています。著書『実践の医療人類学』(2001)世界思想社、共著『マヤ学を学ぶ人のために』(2004)世界思想社など。ホームページ:http://cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/
Copyright Mitzubishi Chimbao Tzai, 2005
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