社会的文脈
Social Context
解説:池田光穂
まず福島真人(1993: 125)の次の言葉に耳を傾けてみよう。
「文脈とはただそこにあたかも物のようにあるのではなく、むしろ我々が対象の意味を自分なりに理解する為に、その都度構成するものであ る」(p.125)。
この見方は次に述べるような意味において、我々に新鮮に聞こえる。
社会構成主義者(social constructionist)は、しばしば社会的事実の構成的現実に関するさまざまな事例を通して、社会的事実の構成の多様性を示唆する。このこと は、社会的事実には社会的文脈依存性があることを読者に伝える。しかし他方で、社会的文脈決定論に呪縛されると、今度は逆に社会的文脈そのものを物象化し たり、社会的文脈の固有性(唯一であると信じてしまうこと)を信じてしまう。しかし、行為者からみれば、社会的文脈はその都度構成されるものであれば、社 会的文脈に柔軟性や多様性があることは当たり前のように思える。
したがって、社会的文脈を物象化したり、唯一固有のものであったりする偏見から観察者は自由になれと、この文章は語っている。
文献
福島真人「解説」レイヴとウェンガー著/佐伯胖訳『状況に埋め込まれた学習――正統的周辺参加』産業図書, Pp.123-181、1993
Copyright Mitzu Ikeda 2006