SSRI, 選択的セロトニン再吸収阻害剤
Selective Serotonin Reuptake Inhibitors
セロトニンを神経伝達物質として放出する神経細胞のシナプスにおけるセロトニン濃度が低いことが、うつ症状の原因仮説とされている。
セロトニンを放出する神経細胞は、シナプスにおいて神経伝達物質としてセロトニンを放出し、セロトニン受容体をもつ別の神経細胞を刺激する はたらきがある。セロトニン放出神経細胞は、また一度放出したセロトニンを、セロトニン伝搬体(トランスポーター)という細胞膜にあるメカニズムによっ て、セロトニンを再び再吸収――これをリアップテイク(reuptake)――して、ふたたび神経伝達物質として利用するメカニズムがあるといわれてい る。
SSRI(選択的セロトニン再吸収阻害剤)は、このメカニズムに障害を与え、シナプスにおけるセロトニンの遊離状態の濃度を一定のものに維 持する働きをもつことになる。
このことにより、うつ症状を改善するというのである。
そのなかで、フルオキセチンという物質で、米国に本社のあるイーライリリー・アンド・カンパニーが発売している商標プロザックがもっとも有 名である。1988年に発売され、奇跡の抗うつ剤ともてはやされ、2005年のプロザックを含めた抗うつ剤の売り上げは、203億ドルになるといわれてい る。
他方で、プロザック服用により自殺願望が強くなるという研究論文が発表されて以来、SSRIの科学的有効性に関する議論や、臨床試験におけ る正当性の根拠について疑われはじめ、大きな社会問題になった。
ヒーリー、ディビッド『抗うつ薬の功罪:SSRI論争と訴訟』みすず書房、2005年(Healy, David ., 2004. Let them eat Prozac : the unhealthy relationship between the pharmaceutical industry and depression. New York : New York University Press.)
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