海外の研究者とつきあう
How to communicate with your future academic colleagues outside of your country
君は将来を嘱望された研究者である。
国内での学会発表もある程度こなしてきた。プレゼンに対する度胸も少しずつついてきた。
もうそろそろ海外での学会発表もやらなければならない時期になってきた。もちろん、海外の同年代の研究者や影響力のある研究者の名前のリス トも少しずつではあるが増えてきた。
次回の学会発表の折りには、あこがれの大教授の謦咳(けいがい——近くで教えを乞う)に触れたいし研究者のつきあいの幅も増やしたい。さて どうすればよいのだろうか?
相手が、 自分と同クラスの研究者であれば気軽にメールを書いて、会いにいったり、研究とは別に一緒に飲食したり、おしゃべりもすることは可能である。
しかし、多少偉い先生であるとか、あまり素性の知られていない研究者の研究室に訪問する時にはどうすればよいのか?
言語の壁やコミュニケーションの壁のほかに、文化の違いもある。そういう時に初対面の研究者にどのようにアプローチすればよいのだろうか?
(1)今日日は電子メールがあるので、まず、会いたい研究者に電子メールを書けばよい。もちろん、面識のない人には、相手の身分がどのよう なものであろうと礼儀——その際には自分の文化体系の準拠する規準に任せればよろしい——を守ることは言うまでもない。
(2)会うまでにCVつまり、Curricum Vitae 要するに履歴書を書けばよい。もちろん、日本語の履歴書のようなものを翻訳するのではなく、自分の研究歴や研究論文のリストなどが、ある研究に関するあな たの英文履歴書のスタイルがよろしい。その際にはあまり形式張った情報ばかりではなく、これまでの研究の経過や、会ってどのようなことについて情報交換し たいのかについて、短いエッセーなどがあってもよい。もちろん、正式なCVがすでに作られてある場合は、それを流用して、エッセーを別につければよいので はないだろうか。
(3)その分野の中で著名な先生は忙しいことがあるので、直接メールを書いても秘書が返事をよこすことがある。したがって、アポイントメン ト(面接予約)の文面は第三者に読まれてもよいような文体で書かれるのが好ましい。
(4)訪問時間を守ることは重要である。特に日本人や韓国人は時間に正確だという文化的ステレオタイプが欧米の人や欧米で教育をうけた人た ちにあるので、そのようなステレオタイプは大いに利用し、「期待どうりの行動」をすることは、したがって、あなたに対する文化的ステレオタイプを信じ込ま せることにより、逆に様々な誤解からあなたを防ぐ働きがある。
(5)おみやげを持参することも効果がある。ただし、大げさなものは逆に相手を困惑させることがあるので、ちょっとした小物でよい。ただ し、先方の好みや宗教的タブーに関しては、一応配慮しておいたほうがよい。
(6)面談が上手くいった時には、お礼の手紙[メール]を書くのがよいだろう。ただし、日本人が得意の外交辞令ばかりのものよりも、なぜ先 方とコミュニケーションがとれてよかったか、という下りがあれば、先方が喜ぶだけでなく、あなた自身による面談の総括にもなる。
相手から情報をえるだけという戦略的コミュニケーションばかりだと、こちらの熱意も冷めてしまう。むしろ、研究の過程で必然的に生じる人間 的出会いを大切にすることが、あなたの大きく成長させることもお忘れなく!
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