ディスコミュニケーションの理論と実践
2007年度 第1学期
〈身体〉とディスコミュニケーション
西村 ユミ
■講義内容および目標
1 遷延性植物状態(意識障害)患者の定義や映像をもとに、私たちの〈身体〉がコミュニケーション/ディスコミュニケーションを、どのように成り立たせているのかを考える。
2 また、上記のように考えたとき、〈身体〉をどのような存在として考えていたのか(=前提)を確認する。
□遷延性植物状態患者について
○Jennett & Plumによる遷延性植物状態患者の定義
一見、意識が清明であるように開眼するが、外的刺激に対する反応あるいは認識などの精神活動が認められず、外界とのコミュニケーションをはかることができない。(Jennett, B & Plum, F., Persistent Vegetative State after Brain Damage; A syndrome in search of a name. The Lancet, April 1, 1972)
○日本脳神経外科学会植物状態患者研究協議会による定義(1972年)
useful life を送っていた人が脳損傷を受けた後で以下に述べる6項目を満たすような状態に陥り、ほとんど改善がみられないまま満3カ月以上経過したもの。
(1)自力移動不可能。
(2)自力摂食不可能。
(3)尿失禁状態にある。
(4)たとえ声は出しても意味のある発語は不可能。
(5)「眼を開け」「手を握れ」などの簡単は命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思疎通が不可能。
(6)眼球はかろうじて物を追っても認識はできない。
○脳に何らかの重い障害を受け昏睡、つまり意識を失い、外界からの刺激に全く反応しない状態におちいった後、呼吸活動や眼の対光反射など生命徴候だけはもどったものの、外部との意思の疎通がまったくあるいは通じない状態が続くこと。脳死とは異なる。
○脳死と植物状態
脳死の定義:脳幹を含む脳全体の機能の不可逆的停止
生命維持装置によって人工的に心臓や肺は動いている(=体は生きている)が,脳機能が停止した状態をいう。
臓器移植法 第六条「脳死した者の身体」とは,脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されるものの身体をいう。
□〈身体〉とは?
(1)演じてみる
傍らに存在する身体に対して、私たちはどのような態度を示しうるか?
身体は、精神・心・意識と対をなすものか?
□遷延性植物状態患者のVTR鑑賞
1)VTR『あせらないけどあきらめない』の視聴(約15分)
2)グループワーク(約30分)@4人/G
◆次回は動きやすい服装で来てください。
クレジット:2007年6月21日(木) ディスコミュニケーションの理論と実践(10) 担当:西村ユミ〈身体〉とディスコミュニケーション
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