医療過誤
Medical Mistake
解説:池田光穂
医療過誤あるいは医療ミスとは、期待される治療からの逸脱のうち過失あるいは未必の故意によるものである。
治療からの逸脱の判定は、患者や患者の家族あるいは第三者の医療者による価値尺度から決められるものではなく、それらは判定のための誘因とな る。治療からの逸脱の正式な判定は、刑事あるいは民事における司法当局の裁定にもとづく。さまざまな社会的要因により司法の判定に至らない医療過誤がある ために、実際の件数はそれよりもはるかに多い可能性があるが、それを正確に推計したデータはほとんどない。
医療過誤数の推定を実際に法廷に持ち込まれた医療訴訟から正確に推計することには無理があるが、一定の参考にはなろう。
「本邦の医療訴訟は、1997年は597件であったが、2004年には1110件まで増加。2005、2006年ともに1000件を下回ってい るが、ここ10年で訴訟数がほぼ倍増している。また平均審理期間は1997年の35.6か月から2004年の26.9か月と短縮されているが、一般民事訴 訟の平均審理期間(8.4か月)と比べ依然として長い時間を要している」という報告がある(『医学界新聞』2738号, p.5, 2007年7月)。
また、ロバート・ウッド。ジョンソン財団のカーンによると「米国では病院で防ぎ得る医療ミスのため毎年9万8000人が死亡し、交通事故死亡者 数4万3000人の倍以上。さらに、これらは病院における入院患者の数の推計死亡者数であり、高齢者療養施設や精神病院、外来外科手術センターなどを含め ばさらに増える」という(同紙より)。
文献
カーンとシン『沈黙の壁:語れることのなかった医療ミスの実像』瀬尾隆訳、日本評論社、2005年(Wall of silence : the untold story of the medical mistak es that kill and injure millions of Americans)
Copyright, 2007 Mitzu Ikeda