「病むこと」とのコミュニケーション(1)
西村 ユミ
20071025 臨床コミュニケーション 文責:西村ユミ 「病むこと」とのコミュニケーション(1)
◆ 講義内容および目標
(I)「病むこと」として遷延性植物状態という病を例に挙げ、「意識の徴候が見られない状態」「応答が不可能な状態」にある者に出会ったとき、私たちはどのような態度を取り得るかを考える。
(II)その出会いにおいて、病む者とどのようなコミュニケーションが行われているのかを考える。
1.遷延性植物状態患者について
□遷延性植物状態患者の定義
一見、意識が清明であるように開眼するが、外的刺激に対する反応あるいは認識などの精神活動が認められず、外界とのコミュニケーションをはかることができない。 (Jennett, B & Plum, F., Persistent Vegetative State after Brain Damage; A syndrome in search of a name. The Lancet, April 1, 1972)
□日本脳神経外科学会植物状態患者研究協議会の定義(1972年)
Useful life を送っていた人が脳損傷を受けた後で以下に述べる六項目を満たすような状態に陥り、ほとんど改善がみられないまま満三カ月以上経過したもの。
(1) 自力移動不可能。
(2) 自力摂食不可能。
(3) 尿失禁状態にある。
(4) たとえ声は出しても意味のある発語は不可能。
(5) 「眼を開け」「手を握れ」、などの簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思の疎通が不可能。
(6) 眼球はかろうじて物を追っても認識はできない。
(中山 研一・石原 明編『資料に見る尊厳死問題』、日本評論社,1993)
□脳死との違い
脳死の定義:脳幹を含む脳全体の機能の不可逆的停止
生命維持装置によって人工的に心臓や肺は動いている(=体は生きている)が,脳機能が停止した状態をいう。
臓器移植法
第六条「脳死した者の身体」とは,脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定されるものの身体をいう。
大脳死と全脳死
・脳幹(中脳+橋+延髄)=生命維持の機能
・大脳が死に脳幹が生きている状態―大脳死(=植物状態)≠脳死
・その逆が脳幹死(イギリスでは,脳幹死=脳死と定義する)
・大脳と脳幹の両方(=全脳)が機能を停止した状態―全脳死(多くの国での脳死の定義)
(倫理の公民館〔http://www.ne.jp/asahi/village/good/ethics.html〕より一部抜粋)
関連ホームページ
・脳死について:http://www6.plala.or.jp/brainx/index.htm
・遷延性植物状態患者の回復例について:http://www6.plala.or.jp/brainx/recovery2000.htm
2. 遷延性植物状態患者(意識の徴候が見られない者)とのコミュニケーションについて考える
□VTR『あせらないけどあきらめない』の視聴(約15分)
□グループワーク(約40分)@5〜6人/G
□発表+まとめ
[課題]
1)遷延性植物状態患者(意識の徴候が見られない者)に出会ったとき、どのように関与するか/関与しないか/関与できないか等々について話し合う。(VTRに映っていた、看護師、家族の行為も参考にする)
2)また、そこにはコミュニケーションが成りたっているか否か、成りたっているとすれば、それはどのようなコミュニケーションであるかを考える。
〈メモ〉
● 【臨床コミュニケーション2】にもどる