キャンパスにおける〈ドラッグ汚染〉を考える
On "drug use"
problem in Japanese univercity campuses
■「不正大麻・けし撲滅運動」を(2018年)5月1日から実施します(平成30年4月27日厚生労働省リリース)
「厚生労働省と都道府県では、5月1日(火)から6月30日(土)までの2カ月間、「不正大麻・けし撲滅運動」を全国で実施します。......「大麻」
やあへん系麻薬の原料となる「けし」は、大麻取締法、あへん法などにより、栽培の免許を持つ人以外の栽培が禁止されていますが、依然として乱用目的で不正
栽培をする人が後を絶たない状況です。また、自生している「大麻」や「けし」を除去する取り組みも継続的に行っていますが、いまだ根絶には至っていませ
ん。国内の大麻事犯者の検挙数を見ると、平成26年から3年連続で増加しており、平成28年には2,722人となっています。/そのため、厚生労働省と都
道府県では、内閣府や警察庁をはじめとする関係機関の協賛を得て、不正栽培の発見に努めるとともに、自生している「大麻」や「けし」を一掃するための除去
活動を集中的に行います。また、「大麻」の乱用が深刻な問題となっている若年層に向
けて、脳や身体に及ぼす危険性・有害性を伝える政府広報の実施や、ホームページの掲載、SNSでの情報発信などを通じた啓発活動を行ってい
きます」。出典:http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000204516.html(2018年5月3日確認)
■練習問題
■ 事件のアウトライン
「関西大学(大阪府吹田市)の学生らが大麻を所持していたとして、大阪府警薬物対策課などは(2008年5月)15日、同大学工学部4年・ I容疑者(24) (同市千里山松が丘)ら3人を大麻取締法違反(営利目的所持など)容疑で現行犯逮捕した、と発表した。/I容疑者は「関大の千里山キャンパスなどで、約3 年間に在学生や卒業生を含む約40人に売りさばいた。キャンパスは夜間も出入りでき、警察のパトロールもないので安心だった。白昼、学内で購入した学生ら と一緒に吸うこともあった」と供述しており、府警は購入者についても同法違反(譲り受け)容疑などで立件する方針。/他の逮捕者は、電気作業員・N (23)(大阪市淀川区)、飲食店アルバイト・S(23)(同市東淀川区)両容疑者。/発表によると、3人は5月8〜12日、それぞれの自宅で乾燥大麻 2〜100グラムを所持し、更家容疑者は自宅押し入れで大麻草15本の栽培もしていた疑い。/府警によると、3人はスケートボード仲間。I容疑者は約5年 前から大阪・ミナミで外国人らから入手して吸引していたが、約3年前から金を稼ぐ目的で転売を始め、携帯電話で注文を受け、仕入れ値に約1割を上乗せした 1グラムあたり5000〜8000円で売っていた。/同大学では、昨年1〜2月、別の男子学生が大麻と覚せい剤取締法違反容疑で奈良県警に逮捕されてい る。(2008年5月15日22時07分 読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080515-OYT1T00689.htm)
■ 容疑者のモラル意識
「関西大(大阪府吹田市)キャンパスで大麻を密売していたとして、大麻取締法違反(所持)の現行犯で逮捕された……I容疑者は「大麻を吸う ことは悪いことじゃない。そんなにもうけていないし、欲しい人に売るから問題ない」と供述(出典:共同ニュース http: //news.goo.ne.jp/article/kyodo/nation/CO2008051601000013.html)。
■ 社会問題としての大麻汚染
「大阪府吹田市の関西大学千里山キャンパスで大麻が密売されていた事件で、大麻取締法違反の疑いで逮捕された関大工学部4年、I容疑者 (24)が府警薬物対策課の調べに対し、「友達には割安価格で販売した」と供述していることが16日、分かった。大麻をめぐっては昨年、別の関大生が摘発 されたのをはじめ、関東学院大(横浜市)ラグビー部による事件などが相次いだ。インターネットなどを通じて大麻の種子が売買されるなど、学生ら若者の間で “大麻汚染”が確実に広がっている。/同課によると、I容疑者は関大の正門が24時間開放されていることを悪用し、夜間も構内の芝生広場で大麻を密売。同 級生や後輩、趣味のスケートボードで知り合った仲間には仕入れ値の1グラム当たり約4000円より500〜1000円だけを上乗せした割安価格で販売した という。/大麻を安価で売るI容疑者の携帯電話番号は口コミで広がり、購入者は関大OB、現役を含む約40人にのぼっていた。/学生の間で蔓延(まんえ ん)する大麻汚染は昨年11月、関東学院大ラグビー部でも発覚。ラグビー部寮の一室で元部員が大麻を栽培したとして逮捕、さらに部員12人が吸引を認め た。昨年初めには関大生が大麻取締法と覚せい剤取締法違反容疑で逮捕。大手予備校の河合塾福岡校でも大麻密売で当時18〜19歳の予備校生ら少年5人が逮 捕される事件もあった。/こうした学生らによる大麻取引の実態を府警幹部は、「若者の間で大麻使用の罪悪感が薄くなっているのでは」と危惧(きぐ)する。 /警察庁によると、大麻の所持、栽培、売買などで検挙される人数は増加傾向にあり、平成18年には過去最高の2288人に上った。19年は2271人と横 ばいだったが、20代が約7割を占めた。30代以上が約7割を占める覚醒(かくせい)剤に比べ、大麻は若年層が目立つのが特徴だ。/税関当局の密輸動向で も、19年の不正薬物全体の摘発件数(359件)のうち重量で約6割を大麻草・大麻樹脂が占めた。「大麻汚染の広がりを反映している」という。プロの密売 人だけでなく学生など一般人が安易に密輸にかかわるケースが増えているとされる。/背景には輸入雑貨店やインターネットで比較的簡単に大麻の種子が手に入 る事情がある。大麻取締法は栽培や葉の所持を禁じているが種子の販売については規定がない。暴力団が絡む覚醒剤に比べ、トレンドやファッションで使用する 若者も多いという。/府警幹部は「ネットで気軽に買えたり、育て方も調べられる手軽さが、若者の間で大麻汚染が拡大している原因になっている」と指摘して いる」(出典:http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/e20080516000.html?C= S)。
■ 大学の統治問題としての〈ドラッグ汚染〉
週末[2008年第3週]の関西大学のドラッグ(大麻、覚醒剤など)汚染のニュースは、多くの大学関係者にとって戦慄すべき事件であった。
その後の取り調べなどから警察からの会見報道なども、大学は学生の薬物依存についての危機管理がわるいというメッセージを十分に読むことが できる。
つまり(1)容疑者が使用・売買・栽培について悪びれることがない、(2)キャンパスが警察が入り込まない聖域とみなされディーリングの温 床になっている、というこの2点である。
しかしながら関大の学長が、謝罪記者会見(大学側からみれば教育や生活指導に失敗したと認識しているようだ)に、警察庁からのポスターを持 参し、それを記者の前に見せフラッシュを浴びるというのは、滑稽というかお粗末としかいいようがない。ポスターの掲示をしているから防げるものではない し、逆にポスターを掲示したり(場合によっては、以前にあった薬物利用による学生の転落事件の時におこなわれただろうが)訓辞を掲示するだけで具体的な対 策を講じていなかったことがまるわかりになってしまったからだ。学長にはゴッフマンの社会学を勉強していただく必要があるだろう。
ここでは、警察は大学の生活指導にとって大きな影響力を果たすことに成功しつつあるようだ。
それにくらべて大学の対応はどうだろうか?――警察のような戦術に対応したマスコミ対策を講じているだろうか?
どうせ、関大はゼロトレランスの原則で、被疑者たちが自供した時点ないしは前倒しで無期休学、刑が確定した時点で懲戒にもとづく退学か除籍 という処理をすることだろう。しかし、このゼロトレランスの問題点は、大学が厳しく対応したという点で、一時的に社会への申し開きは実現できるだろうが、 むしろ、蔓延しつつある汚染問題への切り札にならない。なぜなら、汚染されていない大学などどこにもないし、ゼロトレランスそのものが類似の犯罪のを生じ る抑止力になっていないからである(ゼロトレランスは一時的な抑止力にはなるが、根治治療ではないからだ)。
というわけで、シジフォスの神話ならぬ、学長は再び記者会見で、頭を下げる練習にあげくれるのである。
(出典:http://d.hatena.ne.jp/mitzubishi/20080519)
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