憂鬱な存在の多様化の必然性について
解説:池田光穂
西洋近代のプロジェクトが、世界を均質化し管理の徹底化にほかならないものであるとしたら、そのプログラムは未来において破綻する運命にあることを予言しておこう。
他方で、均質化への抵抗や非均質化への無反省な賞讃の帰結として、相対主義をなんでもありの多様性論のままにしておくことは、その代価として、「不幸な多様化」を招来することもまた事実である。
世界の均質化、管理の徹底化というプログラムは必然的に破綻し、招来する多様化そのものは人間の道徳にとっては価値自由な展開を遂げるはずだから、多様化万歳という主張には、多様化には人間にとって都合のわるい「不幸な多様化」が生まれることを覚悟しておかねばならない。
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