医療人類学のレッスン
出版企画趣意宣言
◆ 池田光穂・奥野克巳編『医療人類学のレッスン』学陽書房、2007年、総268ページ出版企画書作成時に起草したアジビラの文章(宣戦布告?文)
21世紀を迎えた今、医療人類学に 対する新たな期待が浮上している
さて振り返るに、20世紀の生物医学の隆盛がもたらしたさまざまな社会的問題に、文化概念を 軸に斬り込み、斬新な解釈と新しい生き方の指針をもたらしたのが20世紀の医療人類学の成果であったといえよう。
しかしながら、すでに命脈を絶ちつつあったスタティックな文化概念を、現代の生物医学の解釈 にただ持ち込んだだけの学問は、統治概念を軸としてカメレオンのごとく変容する生物医学がもつダイナミズムを理解するのには、いささか力不足であった。
生物医学が21世紀の社会において中心的な位置を占めるにつれ、その相対的な認識論的解体を も含む〈批判的なものとしての医療人類学〉はリメイクされる時に近づいている。
新しい社会的文化的理論が登場する中で、今、次世代を担う学徒に対する挑戦的かつ良心的な意 図をもった医療人類学の教科書が提供されなければならない。
文化人類学の最新の成果を踏み外すことなく、かつ同時に21世紀の医療人類学でなければ担え ない、斬新な視座を初心者にもわかりやすく提供することが求められている。
したがって、本書は、次世代のヘルスケアを担う看護学・保健学・基礎および臨床医学を学ぶ学 部学生、あるいは学部教育を終えたばかりの大学院初学年ならびに社会経験の当初において、保健医療の現場に飛び込んだ際に社会的文化的諸現象を理解するこ との重要性を痛感する社会人、ならびに保健医療分野の圏外において、医療人類学の存在を知り、その可能性を信じて、はじめて本格的に勉強しようとするすべ ての入門者に対して開かれたものである。
21世紀の医療人類学のグローバルスタンダードがどのようなものであるかは、日々の研究を通 して感じている各執筆者によって、この教科書は自信をもって書かれているはずである。
文責:池田光穂(ca. 2006 Nov.?)
池田光穂・奥野克巳編『医療人類学のレッスン』学陽書房、2007年、総 268ページ
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