日常生活活動
Activities of Daily Living, ADL
解説:池田光穂
日常生活活動とは、日ごろの生活における動きの状態のことである。
ところが、これが英語のActivities of Daily Living の頭文字言葉(アクロニムという)である ADL (エーディエル)と表現されると、とたんにリハビリや介護系の専門用語になるから不思議である。
もちろんリハビリや介護の現場で働いている専門家は、その業務における正当化や権威と絡まった知識実践のモデル(=あこがれの対象)を近代生物 医学の専門家(要するに医師)に求めるので、ADLということばは、ジャーゴンつまり専門家や仲間内しか通用しない符丁になる。
つまり「ADLが自立=自律していない」「ADLが改善した/悪化した」「ADLをよくするのがリハビリの務め」などと使われる。このような表 現を聞かされた本人あるいはその家族は、リハビリや介護のプロたちが、なにが難しい独特の言葉を使っているので、敬服すると同時に不審に思うのである。し かし、これはこの用語の本来の使い方にもどれば、それぞれ「まだ具合がわるく解除が必要だ」「具合や調子がよくなった・よくできるようになった/わるく なった・できなくなった」「具合をよくしたり・できるようにするのが、リハビリの役割です」という至極簡単な意味である。もちろん、リハビリや介護は、豊 かな臨床経験とそれを裏打ちする科学的データにもとづいて、その専門職性が保障されているので、その技法や内容に根拠はきちんとあり、この部分に関しては 当事者や家族は、専門家に納得いくように説明していただく権利を有していることは言うまでもない。
知識実践のモデル(=あこがれの対象)を近代生物医学の専門家に委ねるシステムが、ごく普通の人とのコミュニケーションを疎外する実例として、 このような「ちょっとした悲劇あるいは喜劇」は銘記されるべきだろう。
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専門家によるADLについては以下のようなものがある。
脳卒中者のADL:全介助、床上自立、屋内自立、屋外自立の分類[二木・上田 1992]
リンク
文献
二木立・上田敏『脳卒中の早期リハビリテーション』第二版、医学書院、1992年
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