現場力と実践知
2009年度 第2学期
Practical wisdom for Human Care
□ キーワード:現場力、実践知、対話、コミュニケーション
□ 講義目的
1. 実践知や身体知に関する文献的な知識を手がかりとして、現場力を考える視点の多様性を確認する。
2. 場との関係を考慮しつつ、自分自身の身体を用いて、知覚や感覚、運動、思考といった人間の営みを根本から問い直す。
3. 現場の多様な関係性の中から、具体的な人間の営みを方(専門的な実践を含む)や知恵を見い出す方法を検討する。
□ 講義内容
私たちは、ある場所に足を踏み入れたときに、思うように動けなかったり圧迫感を感じたり、あるいは逆に、スムーズに動けたり言葉が浮か んできたりすることがあります。本講義では、受講者のそれぞれが活動する場において経験することが、何によって促されたり決定されたりしていのかを考えま す。そのため、現場において活動する主体である自分自身の〈身体〉の営みとこの身体とともにある実践の知恵を多様な視点から問い直すことを目指して設計さ れています。
具体的には、文献学習、ロールプレイなどを取り入れた経験学習、グループディスカッションを組み合わせながら、授業を進めていきます。 そのため、受講生による積極的な参加を期待します。
※10月20日と11月10日は身体を動かすワークショップのため、教室は保健学科実習室 III でおこないます。教室が変わるので注意してください。また、12月22日のCSCDシンポジウムとは、吹田キャンパス内のコンベンションセンターで開催さ れるCSCD創設五周年記念シンポジウムのことを指しています。
● 「現場力と実践知」過去の 開催年度の参考資料
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現場とは
私たちは様々な社会活動に参加しています。例えば、家族の団らんや学校でのゼミナール、友人との交流、職場での専門的な実践などがこれ に相当します。本講義では、複数の人々が参加して具体的な活動が行われたり、その活動の中で知恵が育まれたり、伝承されている場所を「現場」と考えます。 つまり、より日常的な交流の場から専門的な実践が行われている場を、幅広く射程に入れております。
現場力とは
複数の人々が活動する場所では、その場の雰囲気や居心地、ある種の圧力の加減などを感じ取ったり、その場を見渡しながら活動が行われた りしています。同時にどれらを足場としながら、そのときその場で求められることを瞬時に判断したり、行為に移したり、あるときには立ち止まったりじっと 待ったりすることもあります。
現場力とは、ある現場において行っている上述した行為の中に宿されている知恵、つまり、その場と人と人の関係の中から生まれてくる雰囲 気などの感受性や応答性、そのときその場での求めに応じて行動する臨機応変さ、間やタイミングの取り方、対人コミュニケーションと深く関係する実践の知恵 のことをいいます。そのような知恵は、ある場所における具体的な活動の中でこそ生み出され、育まれ、共同実践の中で伝達されうるものと考えます。[→リンク]
実践知とは
実践知については、アリストテレスのプロネーシスから始まり、現在に至るまで様々な言説がみられますが、ここでは、その場で求められて いることが熟慮された行為のことを言います。「知」を「行為」と言い換えていることに違和感を覚えられるかもしれませんが、その行為自体にある種の「知 恵」が含み込まれているのです。また、その場で求められていることは、状況によっても、参加者による考え方によっても変わる可能性がありますので、強く文 脈に依存した知恵であると考えます。[→リンク]
本講義では
現場力と実践知という概念自体を問い直すことを目的としています。そのため、先人の多様な言説を確認する作業をおこないます。また、概 念を明確にしていくために、実際に身体を動かしてその感受性を研ぎ澄ませたり、具体的な経験を問い返したりする作業を行います。自分自身が感じていること や無自覚のうちに行っていることの再発見は、現場の実践から、ある種の知恵を見い出す方法を学ぶことにもなるでしょう。
さらに、現場は複数の参加者で構成されています。その構成を再現する受講者間のディスカッションを定期的に行います。授業自体をひとつ の現場と見立てて、その場でどのように知恵が生み出されてくるのかを体験することも授業内容に含まれます。
関連科目として、第1学期に開講する「臨床コミュニケーション I 」「ディスコミュニケーションの理論と実践」、第2学期に開講する「臨床コミュニケーション II 」、夏期に集中講義に開講する「医療対人関係論」があります。ただし、これらを受講していなくても履修可能です。
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