第3章 フィールドセッティングに関する覚書:「実験室における社会実践の民族誌学的研究」
研究対象になった神経生理学教室は、大阪大学大学院医学系研究科の佐藤宏道(さとう・ひろみち)研究室である。言うまでもなく佐藤は本研究の共同 研究者であり、研究対象であると同時に研究者本人そのものである。従って本研究において、研究倫理上の理由による匿名化の措置という例外を除くと、登場す る人物は実在する。
特定の具体的な個人の名前を挙げているにもかかわらず、この報告書は筆者たち(第5章のみ佐藤宏道、他の部分は文書の引用を除いてすべて池田光 穂)がつくりあげた広義の文学上の作品(literary works)としての性格を有するものである。したがって、この報告書に書かれているものは、現実の歴史的事実や資料を相互に付き合わせた状況の公正な構 成であることを努めたが、不作為による錯誤が含まれているかもしれない。したがってこの報告書に記載されているものは、筆者たちがつくりあげた一つの社会 的構築物――事実に根ざしているがその事実提示においては学問的想像力による仮構であるもの――であり、その文責はそれぞれの筆者に属する。
さて佐藤宏道研究室(以下、佐藤研)は、1995年当時、それまで大阪大学医学部バイオメディカル研究教育センターの講師から大阪大学保健体育部教授に就任した時にはじまる。現在の准教授の七五三木聡(しめぎ・さとし)はその前年に保健体育部に助手 として就任しており、現在の助教の内藤智之(ないとう・ともゆき)とともに研究室の常勤のスタッフである。佐藤研発足の10年後に所属母胎の保健体育部は廃止され、研究室は医学系研究科認知行動科学研究室と名称を変更している。
2008年4月1日現在この3人のスタッフを含めて、研究員ならびに大学院生がいる。
佐藤 宏道 医学系研究科・教授
七五三木 聡 医学系研究科・准教授
内藤 智之 医学系研究科・助教
石川 理子 日本学術振興会特別研究員 ・PD
岡本 正博 生命機能研究科 ・博士課程後期2年
原 真一郎 生命機能研究科・博士課程後期1年
尾崎 弘展 医学系研究科・博士課程 1年(医学士)
北村 晃大 医学系研究科・博士課程1年(医学士)
佐藤研の正式な構成メンバーは以上であるが、準構成員のような存在がいる。例えば、工学部の学部生2年生のI君は、大阪大学に入学した志望動機そ のものが人工視覚のデバイスの開発にあり、そのための基礎を学ぶために、佐藤研に出入りするようになっている。学生や大学院生が研究室に出入りするように なるルートは、研究室に属する教員がおこなう授業、ジャーナルクラブと呼ばれる抄読会 、輪読会 、および不定期におこなわれる学術セミナー などである。
研究室にとってはリクルートの現場になり、また当該研究室の研究内容に関心のある学生や院生には、将来のメンター(指導教官)になる可能性のある 人に関する情報収集のよい機会になるこれらの勉強会の社会的意味は重要である。実際に佐藤研でも。このような経験をもっている人には、現在のスタッフであ る内藤助教が、京都大学大学院生の時から佐藤研に出入りし、石川研究員は基礎工学部の4年生時から、現在の大学院生の岡本氏は同学部の2年生から佐藤研の 行事にかかわってきた。2008年に入学した尾崎氏は先に述べたI君と同様、学部の1年生の時から佐藤研に関わっている。
準構成員になる最初のステップはジャーナルクラブへの出入りであるが、より重要なことは、佐藤研の論文生産にとって最も重要なイベントである、動 物実験に立ち会うことである。佐藤研の教員メンバーは通常時には大学の授業担当があり、学期の期間は十分に実験に専念することができない。動物実験は、動 物に行動訓練をさせておこなう慢性的なものと、一定の処置をおこなった後に麻酔下のもとで動物から電気記録を集中的に収集する急性的なものがある。とくに 急性実験は、実験の手続きに入ると昼夜を問わず連続して実験データの収集をおこなう必要があるので、まとまった時間が必要になる。したがって、春(連休を 含む)、夏、冬のまとまった休暇の時期が佐藤研にとっての「データのかきいれ時」になる。このような実験に立ち会う経験は、その後のジャーナルクラブでの 論文の読解にとって大いに役立ち、また研究室の活動に「参加している意識」を高めることに大いに貢献する。
このような佐藤研の有りさまは、まさにレイブとウェンガー[1993(1991)]の言う実践コミュニティ(community of practice)そのものである。実践コミュニティとは、徒弟制にもとづく伝統的職場、近代社会制度としての職場や学校などでみられる、集団への参与を通して知識と技巧の修得――これを状況的学習(situated Learning)と呼ぶ――が可能になる社会的実践がくりひろげられる場のことである。状況的学習において、実践コミュニティに参与することを通して学ばれる知識と技能の初期のプロセスのことを、正統的周辺参加(Legitimate Peripheral Participation, LPP)という。実践コミュニティへの参加は、状況的学習の深度によりLPPから十全参加(full participation)に移行すると、モデル化されている。すなわち状況的学習とは、外部表象化された〈知識や技能〉を学習者の内部に取り込むというメタファー で、語ったり理解したりすることのできる学習である。
私(池田)は、佐藤教授が学んだ大阪大学大学院医学研究科修士課程の同じ出身者の当時の同級生であり、旧来の友人である。研究期間中に我々の同じ 職場である大阪大学には同じ学年の同窓生は誰もいない(2008年3月31日現在)。そのため私が本研究の構想を披瀝した際に、佐藤教授は私の研究の趣旨 について容易に理解してくれ、かつ共同研究者として承諾していただいた。したがって、このことは他のリサーチデザインのもとでの、実験室の民族誌的研究と は相当に異なる可能性がある。
この場合の他の研究との違いには、利点と欠点があるように思われる。まず利点としては、研究者と研究対象のラポール(信頼性構築)の大きさであ る。従来、研究の公開性や透明性が重要とは言われているものの、制約された時間と資金のもとで効率よく実験に励もうとする自然科学の研究の現場では、文化 人類学というよそ者がその実験の内容に介在することは、その研究の効率性を下げるために一般的に好まれないだろう。あるいは、そのようなことについて足手 まといにならなくても、直接の研究成果にはむつび付かない人類学者の介入は、迷惑がられることはあっても歓迎されることはないだろう。他人の生活に闖入に 根掘り葉掘り聞き倒す文化人類学は、共同体のメンバーにとって必ずしも嫌悪されるわけではないが好奇の眼でみられると同時に不審がられる。それらを払拭し て友人になるには、ただひたすら時間がかかるものである。私が以前コスタリカの熱帯研究機関(OTS )で生態学者を調査した時には、非常に奇異な関心を持たれるか、完全に無視されるかのどちらかであった。
佐藤教授を共同研究者にした背景には、調査におけるラポールの確立を早期に確保して効率よくデータをとろうとするプラグマティックな動機以上のも のが私にはあった。それは研究成果に関するリフレクシブな情報を長期にわたって研究者と被調査者の間に確立する試行モデルのようなものを開発したいという ことである。文化人類学者の受け入れとその分析を当の被調査者に還元することは、実利的な応用人類学のような「具体的に明日から役立つ」助言につながるも のではない。長期にわたる――といっても我々がこのまま定年までこの場で働いても今後たかだか10年ほどに過ぎない――専門家(神経生理学者)がもうひと つの専門家(文化人類学者)を媒介にして、非専門家の人たち(他の分野の研究者、学生や院生さらには社会の人々一般まで)と専門知識の翻訳や理解に貢献す る科学技術コミュニケーション・モデルができるだろうかということである。
現在、大学の社会へのさまざまな貢献(大学業界では「社学連携」というジャーゴンがある)が模索されている。その中のひとつにサイエンスショップ (Science Shop)というものがある。サイエンスショップ とは、市民がもつ疑問や社会的課題を持ち込むことができ、かつ、それらに対して一定の成果を、持ち込んだ市民に対してのみならず、公共的な領域(パブリッ ク・ドメイン)に提供することができる組織のことである。サイエンスショップの「ショップ」は、商業資本主義的な意味での商店を意味するものではなく、む しろワークショップで使われるプロジェクト単位の「工房」と言われている。サイエンスショップは、1970年代にヨーロッパの大学文化の中で発達してきた もので、特に最初にできたユトレヒト大学をはじめとしてオランダの大学にはサイエンスショップが常設されているという。アメリカ合州国では、CBR、コ ミュニティベースドサイエンスつまり「コミュニティに根拠をもつ研究」という同様の伝統があったとの主張すらある。
このような手法は確かにやってみる価値があるだろう。しかしながら、大学は同時に自律的な研究組織でもあるので、ショップを媒介にして生産した知 識をトレードするだけでなく、公開と透明性の理念にもとづいて、最先端の基礎研究の現状を「わかりやすく」市民に伝える必要も大いにある。そして、活動そ のものを市民に理解してもらい、納税者や篤志家などに直接的には大きな社会的利益には繋がらないが基礎研究への財政的ならびに道徳的支援を獲得することも 重要だと私は考える。そのために先に述べた専門家(神経生理学者)がもうひとつの専門家(文化人類学者)を媒介にして、非専門家の人たち(他の分野の研究 者、学生や院生さらには社会の人々一般まで)と専門知識の翻訳や理解に貢献する科学技術コミュニケーション・モデルの開発は重要で、私はこの研究の成果は そのモデル開発の最初の一歩になることを信じている。
このように述べれば、ラポールのとれた研究者との文化人類学的共同研究の欠点について容易に想像することができるかも知れない。それは私と共同研 究者の佐藤教授との(コミュニケーションデザインの基礎研究を通して科学研究の成果をより効率的に社会に広報するという)利害が合致するために、我田引水 的な研究になり、文化人類学的研究らしいとしばしば言われる対象との「客観的距離」を取ることに失敗するのではないかということである。しかしながら対象 への深いラポールや被調査者への共感を持つことと、科学的客観性が保てなくなるという主張は、文化人類学の領域ではそれほど問題視されてはいない。また、 客観性の確保と研究対象への共感がトレードオフになるという主張もそれほど根拠をもたない――文化人類学で伝統的に主張されてきたのは、むしろ客観性の確 保と研究対象への「偏見や予断」がトレードオフの関係になるという経験的事実である。
以上のことを踏まえてもし仮に、研究対象となる被調査者との共同研究をおこなうことのメリットとデメリットを秤にかければ、私(池田)はメリット のほうが大いに貢献するはずだと思う。本研究のようなモデルが文化人類学にとっても、また神経生理学の研究にとっても益するものがあれば(下記の枠内の概 念図を参照)、今後このような研究がより促進されることを期待するものである。
(+)← 親密性 → (−)
純粋な研究者集団 > 研究者と文化人類学者 > 審査や監査をされる集団
純粋な研究者集団 < 研究者と文化人類学者 < 審査や監査をされる集団
(−) ← 研究の公開性 → (+)
日本の自然科学の現場を対象にした参与観察にもとづくような研究はいくつかあるが[Traweek 1988; Coleman 1999]、それらの研究上の問題は何からの形――たとえばリフレクシブに自分たちの姿を客体化すること――を通して研究の結果が、調査された当事者の自 己意識の変革に繋がることできたかということである。これらの研究は、いまだ比較文化論的資料のレベルに終わっている。ただし、その問題は研究成果に内在 するものではなく、その成果をどのように被調査者の社会的プレゼンスを高めるだけではなく、どのような形で研究者の生き方の改善に繋がっていくのか、また 調査者が被調査者と社会の一般の人々とのどのようなコミュニケーションデザインを提案していくのかという次世代の科学論の社会貢献の新しいモード――マイ ケル・ギボンズ[1997]に倣って科学研究を観想の対象にする科学論もまた「モード2」にシフトアップすること――へと議論を踏み出していないことが挙 げられる。
以上のことを通して科学研究の現場がたんなる文化人類学研究の対象のひとつとして付け加えることになるという正当化おこなったことではないこと は、この報告書の読者も理解できたと思われる。私は、文化人類学者にとって科学研究の現場は、フィールドワークを通して文化人類学者が本来もっていたはず の理念を再想像するための現場[池田 2008]となる可能性があることをつよく指摘したい。
さてそれでは、本研究のフィールドになった佐藤研ではいったいどのような研究がおこなわれているのか。そのウェブページによると4つのプロジェクトが簡潔に紹介されている。
1.一次視覚野の刺激特徴抽出性とその形成メカニズム
大脳皮質一次視覚野の特徴選択性がどのように形成されているのかについて調べる。これには、ヒューベルとウィーゼル、ならびにリビングストンのモデルに方位コラムを修正したオリジナルの作図――同じものは[福田と佐藤 2002:198]にある――が掲載されている。
2.一次視覚野ニューロン活動の刺激文脈依存的調節
視野全体の情報が局所視覚情報処理にどのような影響を及ぼすのか、どのような神経ネットワークが関与しているのかについて調べる[cf. 福田と佐藤 2002:218-227]。
3.ボトムアップとトップダウン情報処理
視覚情報処理において、網膜から大脳皮質に向かう順行性の情報処理と、大脳皮質から視床に向かう逆行性の情報処理の役割について調べる。
4.体性感覚野の情報表現とそのメカニズム
体性感覚野の情報表現について、視覚野との比較も行いながら検討する。
ラトゥールとウールガーの研究[Latour and Woolger 1986:52-53]に登場する内分泌学の研究室同様、神経生理学の研究もまた文献の読解(研究者はさらに投稿のための論文の執筆)に多くの時間と労力 が割かれる。教室の指導にあたる教員は、自分の論文の執筆の他に、研究員や大学院生さらには同僚の論文へのコメントや加筆修正も求められることになる。
調査期間から2008年6月までにジャーナルクラブで読まれた文献は下記(時間を遡及する順)のとおりである。
2008/06/13 担当者 D1尾崎君 Tonotopic Control of Auditory Thalamus Frequency Tuning by Reticular Thalamic Neurons Cotillon-Williams N, Huetz C, Hennevin E, Edeline JM. J Neurophysiol 2008 99(3):1137-1151.
2008/06/06 担当者 PD石川さん A role for synaptic inputs at distal dendrits:Instructive signals for hippocampal long term plasticity Dudman JT, Tsay D, Siegelbaum SA. Neuron 2007 56, 866-879.
2008/05/30 担当者 七五三木准教授 Brainstem modulation of visual response properties of single cells in the dorsal lateral geniculate nucleus of cat. Excitatory and differential disinhibitory actions of acetylcholine in the lateral geniculate nucleus of the cat. Eysel UT, Pape HC, Van Schayck R. J Physiol. 1986 370:233-54.
2008/05/16 担当者 D1 原君 Brainstem modulation of visual response properties of single cells in the dorsal lateral geniculate nucleus of cat. Fjeld IT, Ruksenas O, Heggelund P. J Physiol. 2002 543:541-54.
2008/05/09 担当者 D2 岡本君 Completing the corticofugal loop: a visual role for the corticogeniculate type 1 metabotropic glutamate receptor. Rivadulla C, Marti´nez LM, Varela C, Cudeiro J. J Neurosci. 2002 22(7):2956-62.
2008/04/18 担当者 内藤助教 Are primate lateral geniculate nucleus (LGN) really sensitive to orientation or direction? X Xu, J Ichida, Y Shostak, A.B. Bonds and VA Casagrande. Vis Neurosci 2002 19, 97−108.
2008/04/04 担当者 佐藤教授 一次視覚野の方位選択性形成メカニズムをめ ぐる40年の歴史
2008/03/21 担当者 B6 尾崎君 Metabotropic Glutamate Receptors Differentially Regulate GABAergic Inhibition in thalamus G.Govindaiah and Charles L.Cox J Neurosci. 2006, 26(52):13443-13453
2008/03/14 担当者 D3 石川さん Active Dendritic Conductances Dynamically Regulate GABA Release form Thalamica Interneurons Claudio Acuna-Goycolea, Stephan D. Brenowitz, and Wade G. Regehr Neuron 2008 57: 420-431.
2008/02/29 担当者 D1 岡本君 Properties of stimulus-dependent synchrony in retinal ganglion cells. Chatterjee S, Merwine DK, Amthor FR, Grzywacz NM. Vis Neurosci. 2007 24(6):827-843.
2008/02/22 担当者 七五三木准教授 Origin and dynamics of extraclassical suppression in the lateral geniculate nucleus of the macaque monkey Alitto HJ, Usrey WM Neuron 2008 57(1):135-46
2008/02/15 担当者 工学部B2 今井君 A Fast, Reciprocal Pathway between the Lateral Geniculate Nucleus and Visual Cortex in the Macaque Monkey Briggs F, Usrey WM J Neurosci. 2007 27(20):5431-5436
2008/02/08 担当者 M2 原君 Functional polarity of dendrites and axons of primate A1 amacrine cells. Davenport CM, Detwiler PB, Dacey DM Vis Neurosci 2007 24(4):449-457
2008/02/01 担当者 D3石川さん 博士論文口頭諮問練習
2008/01/25 担当者 D1 岡本君 Visual cortex neurons of monkeys and cats: temporal dynamics of the contrast response function. Albrecht DG, Geisler WS, Frazor RA, Crane AM. J Neurophysiol. 2002 88(2):888-913.
2008/01/18 担当者 内藤助教 Dependence of response properties on sparse connectivity in a spiking neuron model of the lateral geniculate nucleus. その2 Wielaard J, Sajda P. J Neurophysiol. 2007 98(6):3292-308.
2007/12/21 担当者 内藤助教 Dependence of response properties on sparse connectivity in a spiking neuron model of the lateral geniculate nucleus. その1 Wielaard J, Sajda P. J Neurophysiol. 2007 98(6):3292-308.
2007/12/14 担当者 D3石川さん Supralinear increase of recurrent inhibition during sparse activity in the somatosensory cortex Christoph Kapfer, Lindsey L Glickfeld, Bassam V Atallah and Massimo Scanziani Nature neuroscience 2007 10(6):743-53. Epub 2007 May 21
2007/12/07 担当者 七五三木准教授 Evidence for a contribution of lateral inhibition to orientation tuning and direction selectivity in cat visual cortex: reversible inactivation of functionally characterized sites combined with neuroanatomical tracing techniques. その2 Crook JM, Kisvarday ZF, Eysel UT Eur J Neurosci 1998 10(6):2056-75.
2007/11/30 担当者 七五三木准教授 Evidence for a contribution of lateral inhibition to orientation tuning and direction selectivity in cat visual cortex: reversible inactivation of functionally characterized sites combined with neuroanatomical tracing techniques. その1 Crook JM, Kisvarday ZF, Eysel UT Eur J Neurosci 1998 10(6):2056-75.
2007/10/29 担当者 D1岡本君 A dynamic nonlinearity and spatial phase specificity in macaque V1 neurons. Williams PE, Shapley RM J Neurosci. 2007 27(21):5706-18. .
2007/07/20 担当者 D1岡本君、M2原君 視覚フォーラムの発表練習
2007/07/06 担当者 佐藤教授 Two types of surround suppression with different spatiotemporal properties in cat V1 Sato H, Shimegi S, Ishikawa A, Kida H, Sakamoto H. 7th IBRO Symposium 48
2007/06/29 担当者 内藤助教 Spectral receptive field properties explain shape selectivity in area V4. David SV, Hayden BY, Gallant JL. J Neurophysiol. 2006 96(6):3492-505.
2007/06/22 担当者 佐藤研究室 D3石川さん A Quantitative description of short term plasticity at excitatory synapses in layer 2/3 of rat primary visual cortex Juan A. Varela,Kamal Sen, Jay Gibson, Joshua Fost, L. F. Abbott, and Sacha B. Nelson J Neurosci. 1997 17(20):7926-7940
2007/06/08 担当者 七五三木准教授 Spatial summation and center-surround antagonism in the receptive field of single units in the dorsal lateral geniculate nucleus of cat: comparison with retinal input. Ruksenas O, Fjeld IT, Heggelund P Vis Neurosci 17(6):855-70
2007/06/01 担当者 佐藤研究室M1 原君 Two expressions of "surround suppression" in V1 that arise independent of cortical mechanisms of suppression. Tailby C, Solomon SG, Peirce JW, Metha AB. Vis Neurosci. 2007 24(1):99-109.
2007/05/18 担当者 佐藤教授 1) Changes in Visual Responses in the Feline dLGN: Selective Thalamic Suppression Induced by Transcranial Magnetic Stimulation of V1 de Labra C, Rivadulla C, Grieve K, Marino J, Espinosa N, Cudeiro J. Cereb Cortex. 2007 17(6):1376-85.
2) Specialized inhibitory synaptic actions between nearby neocortical pyramidal neurons. Ren M, Yoshimura Y, Takada N, Horibe S, Komatsu Y. Science. 2007 316(5825):758-61.
2007/05/11 担当者 佐藤研究室D1岡本君 Cellular basis for contrast gain control over the receptive field center of mammalian retinal ganglion cells. Beaudoin DL, Borghuis BG, Demb JB. J Neurosci. 2007 27(10):2636-45.
2007/04/20担当者 工学部B2今井君 Visual spatial summation in macaque geniculocortical afferents. Sceniak MP, Chatterjee S, Callaway EM. J Neurophysiol. 2006 96(6):3474-84.
2007/04/13 担当者 内藤助教 The emergence of contrast-invariant orientation tuning in simple cells of cat visual cortex. Finn IM, Priebe NJ, Ferster D. Neuron. 2007 54(1):137-52.
2007/03/30 担当者 佐藤研究室D2 石川さん Critical periods for experience dependent synaptic scaling in visual cortex Niraj S. Desai, Robert H, Cudmore, Sacha B. Nelson & Gina G. Turrigiano Nature Neuroscience 2002 5:783 - 789
2007/03/16 担当者 佐藤研究室 七五三木助教授、M2岡本君 生理学会発表練習
2007/03/09 担当者 佐藤研究室D2石川さん、M2岡本君 岡本:生理学大会の発表練習 Contrast-dependency of spatial summation property in cat V1 and LGN (Oral, English) 石川さん:「知と行動セミナー(箕面山荘)」の発表練習 スライス実験について(タイトル未定、口頭、日本語)
2007/03/02 担当者 佐藤研究室M2 岡本君 Contrast affects the transmission of visual information through the mammalian lateral geniculate nucleus. Kaplan E, Purpura K, Shapley RM.J Physiol. 1987 Oct;391:267-88.
2007/02/23 担当者 七五三木助教授 Corticothalamic feedback enhances stimulus response precision in the visual system. Andolina IM, Jones HE, Wang W, Sillito AM Proc Natl Acad Sci U S A. 104(5): 1685-1690.
2007/02/16担当者 佐藤研究室M1 原君 Modulation of GABAergic inhibition in the rat superior colliculus by a presynaptic group II metabotropic glutamate receptor. Neale SA, Salt TE J Physiol. 2006 577:659-69.
2007/2/9 担当者 M2岡本君 修士論文公聴会練習
2007/01/19 担当者 池田光穂教授(阪大CSCD) 「忙しいから後にして!」あるいはわれわれは如何にして暇人(scholar)から時間と金銭に呪縛されたる知識奴隷(intellectual slave)/研究鬼畜(”intelli-agent”)へと堕落したのか?そしてその開放のための奥義を尋ね生活実践を通して如何なるように自己改造をなすべきか?
2007/01/12 担当者 佐藤研究室 内藤助手 Dynamic spatial processing originates in early visual pathways. Allen EA, Freeman RD. J Neurosci. 2006 26(45):11763-74.
2006/12/15 担当者 佐藤研究室 内藤助手 Adaptive filtering enhances information transmission in visual cortex Sharpee TO, Sugihara H, Kurgansky AV, Rebrik SP, Stryker MP, Miller KD. Nature. 2006 439(7079):936-42.
2006/12/08 担当者 佐藤研究室 M2阪本君 Neuronal correlates of visibility and invisibility in the primate visual system. Macknik SL, Livingstone MS. Nat Neurosci. 1998 Jun;1(2):144-9.
2006/12/01 担当者 佐藤研究室 D2石川さん Adaptation at synaptic connection to layer 2/3 Pyramidal Cell inRat visual cortex Beck O, Chistiakova M, Obermayer K, Volgushev M. J Neurophysiol. 2005 Jul;94(1):363-76.
2006/11/24 担当者 佐藤研究室 七五三木助教授 Contribution of feedforward thalamic afferents and corticogeniculate feedback to the spatial summation area of macaque V1 and LGN. Angelucci A, Sainsbury K. J Comp Neurol. 2006 498(3):330-51.
2006/11/17 担当者 佐藤研究室M1 原君 Release from GABAA receptor-mediated inhibition unmasks interlaminar connection within superior colliculus in anesthetized adult rats. Katsuta H, Isa T Neuroscience Research 2003 46:73-83
2006/10/27 担当者 佐藤研究室 佐藤教授 1)Selective and quickly reversible inactivation of mammalian neurons in vivo using the Drosophila allatostatin receptor Tan EM, Yamaguchi Y, Horwitz GD, Gosgnach S, Lein ES, Goulding M, Albright TD, Callaway EM. Neuron 2006 51: 157-170.
2)Neural basis for a poweeful static motion illusion. Conway BR, Kitaoka A, Yazdanbakhsh A, Pack CC, Livingstone MS. J. Neurosci. 2005 25: 5651-5656.
2006/10/20 担当者 佐藤研究室M2 岡本君 Suppressive surrounds and contrast gain in magnocellular-pathway retinal ganglion cells of Macaque Solomon SG, Lee GG and Sun H J. Neurosci. 2006 26(34):8715-8726
2006/10/13 担当者 佐藤研究室 内藤助手 Functional alignment of feedback effects from visual cortex to thalamus. Wang W, Jones HE, Andolina IM, Salt TE, Sillito AM. Nat Neurosci. 2006 9(10):1330-6.
2006/06/30 担当者 佐藤研究室M2 阪本君 Task-related modulation of visual cortex. Huk AC, Heeger DJ. J Neurophysiol. 2000 Jun;83(6):3525-36.
2006/06/23 担当者 佐藤研究室 七五三木助教授 Role of synaptic and intrinsic membrane properties in short-term receptive field dynamics in cat area 17 Nowak LG, Sanchez-Vives MV, McCormick DA. J Neurosci. 2005 Feb 16;25(7):1866-80
2006/06/16 担当者 佐藤研究室PD 定金君 Extraclassical Receptive Field Phenomena and Short-Range Connectivityin V1 Wielaard J, Sajda P. Cereb Cortex. 2005 Dec 27
2006/06/09 担当者 佐藤研究室M1 原君 'Simplification' of responses of complex cells in cat striate cortex: suppressive surrounds and 'feedback' inactivation. Bardy C, Huang JY, Wang C, Fitzgibbon T, Dreher B. J Physiol. 2006 May 18; [Epub ahead of print]
2006/06/02 担当者 佐藤教授 The parvocellular LGN provides a robust disynaptic input to the visual motion area MT. Nassi JJ, Lyon DC, Callaway EM Neuron. 2006 Apr 20;50(2):319-27.
2006/05/26 担当者 佐藤研究室M2 岡本君 Abstract Gain modulation from background synaptic input. Chance FS, Abbott LF, Reyes AD. Neuron. 2002 Aug 15;35(4):773-82.
2006/05/19 担当者 内藤助手 Dynamics of suppression in macaque primary visual cortex. Smith MA, Bair W, Movshon JA. J Neurosci. 2006 May 3;26(18):4826-34.
2006/05/12 担当者 内藤助手 Mechanisms underlying cross-orientation suppression in cat visual cortex. Priebe NJ, Ferster D. Nat Neurosci. 2006 Apr;9(4):552-61
2006/04/28 担当者 佐藤研究室M2 阪本君 Brightness perception and filling-in. Paradiso MA, Nakayama K. Vision Res. 1991;31(7-8):1221-36.
2006/04/21 担当者 佐藤研究室D1 石川さん Intracortical Excitation of Spiny Neurons in Layer 4 Cat Striate Cortex In Vitro Tarczy-Hornoch K, Martin KA, Stratford KJ, Jack JJ. Cereb Cortex. 1999 Dec;9(8):833-43
2006/04/14 担当者 七五三木助教授 Multiple object response normalization in monkey inferotemporal cortex. Zoccolan D, Cox DD, DiCarlo JJ. J Neurosci. 2005 Sep 7;25(36):8150-64.
【出典】:http://www.vision.hss.osaka-u.ac.jp/index.files/ のディレクトリー中の以下のファイル;journalclub2006.html, journalclub2007.html, journalclub2008.html の調査期間中におこなわれたジャーナルクラブの文献。
佐藤研における社会的活動――本研究課題の用語法では「社会実践」と呼ぶ――には以下のものがある。
1.教 育
2.研 究
3.管 理
これらの活動の区分は、これまでの大学における教員の仕事の分類と同じように思える。すなわちこの教員の三分類に4.社会連携(社学連携や産[官]学連携など)を加えれば、現代の大学教員が行うことが期待されている業務の4分類ができあがる。
しかしながら、研究室を動かし研究と教育をおこなってゆく、先の三分類の中身は必ずしも完全に切り離せるものではない。例えば、若手の研究員や大 学院生を国際学会で発表させるために、発表論文を投稿するための事前の校閲やコメントなどは、外面的には教育活動そのものである。しかしながら、論文を共 著で発表する神経生理学のような佐藤研では、このような事前校閲やコメントを行うことは、研究の公開への直接的な活動の一部であるし、また、大学の管理当 局からの研究教育指導という観点からは、研究の管理という学内の行政的な業務のひとつにもなっている。また、実験動物を購入し、維持し、それを実験に供す ることは純然たる管理のように見えるが、実験動物のケアに熟達することは、研究データを効率よく得ることに繋がる。あるいは、飼育→実験→データ整理→論 文執筆→研究成果報告という一連の流れの最初の重要な活動になり、若い研究者をそのような環境に慣らしてゆくのは、大変重要な教育となる。 このようにこの3つの活動が相互に関連していることを理解した上で、3つの活動の具体的な内容についてリストアップしてみよう。
1.教 育
ジャーナルクラブでのコメント
講義や演習という正規の授業
研究の個別指導
論文の校閲
学会発表の予行演習
論文投稿の方法
学会の現場でのプレゼンテーション指導
他の研究者への紹介
社会教育活動
2.研 究
動物実験の手技
機械の動作方法
機械の保守点検
解剖標本の作製
論文の校閲
論文投稿
レフェリーへのディフェンス
さまざまな研究発表を通した学問的議論
学会参加
グラント(研究費)の申請と調達
3.管 理
校費および研究費管理
実験動物舎の管理
動物実験の管理
グラントの申請と調達
研究室内における人間関係の調整
研究室におけるオフ会(お花見、打ち上げ、宴会など)
これらのことは、それぞれに重要な活動である。しかし、実験室における社会実践の活動の分析とは、これらのことを枚挙的かつ詳細に記述することに 主眼が置かれるのではない。そうではなく、それらの分節化された活動がいかに相互に有機的に繋がり、社会活動の本質をなしているかについて理解すること が、活動の分析になる。
第4章では、大学の研究室という調査対象が、目に見える境界づけられた空間のことではなく、知的経験を具有する研究者の集団がもつ歴史的継承性に 焦点を当てた連続性をもった社会的エージェンシーであることを論じてみたい。またその後につづく第5章では、佐藤教授と七五三木准教授が、佐藤教授の留学 時のメンターであったナイジェル・ドゥ教授と再会し、七五三木准教授がドゥ研究室でさまざまな困難と闘いながら、佐藤教授の支援を得ながら科学論文が生ま れてゆくさまを追いかけながら、社会実践の結果としての科学論文という、これまでの科学論では顧みられることがすくなかった観点から、その有り様について 考察を深めてゆきたい。
文献
- Coleman, Samuel. 1999. Japanese Science: From the inside. London: Routledge.
- Latour B. and S. Woolger. 1986 Laboratory Life. Princeton: Princeton University Press.
- Traweek, Sharon. 1988. Beamtimes and lifetimes : the world of high energy physicists. Cambridge, Mass. : Harvard University Press.
- 福田淳・佐藤宏道 2002『脳と視覚:何をどう見るか』共立出版。
- 池田光穂 1998「フィールドライフ:熱帯生態学者たちの微少社会活動に関する調査の概要」『熊本大学文化人類学調査報告』第2号、Pp.97-135。(改訂版を本調査報告書に再録する)
- 池田光穂 2008「教育を通した人類学的デモクラシーの実践」日本文化人類学会第42回研究大会(京都大学・2008年6月1日)発表原稿。
- マイケル・ギボンズ 1997『現代社会と知の創造:モード論とは何か』小林信一監訳、丸善ライブラリー、丸善。
- レイブ、ジーンとエチエンヌ・ウェンガー 1993『状況に埋め込まれた学習――正統的周辺参加』佐伯胖訳、産業図書。
注釈
1)平成19(2007)年度よりこれまで研究教育の補佐の職級であった助手は、大学教育に正式に従事することができるようになった助教と、研究教育の補佐業務に従事する助手(新助手)に分類振り分けられることになった。この時期に同時に助教授の名称が准教授と変わった。
2)日本学術振興会(学振)は日本最大の科学研究費補助金(科研費)を交付する文部科学省所掌の政府系特殊法人である。学振による研究員制度には博 士課程を修了したポストドクター研究員(PD)と、博士課程あるいは博士課程(後期)に人件費と研究費が支給されるドクターコース研究員(DC)がある。
3)認知行動科学研究室は、生命機能研究科との協力講座の関係を提携しているために、大阪大学の連合大学院のひとつであるこの研究科の大学院生を受 け入れることができる。生命機能研究科は修士課程(修学期間2年)相当のものを博士課程前期とし、博士課程(修学期間3年)相当のものを博士課程後期と呼 んでいる。
4)医学系研究科の大学院生のうち医学士(修学期間6年)の卒業生は、修士取得と同等レベルのものと判断されて、博士課程(ただし修学期間4年)への入学を許可されている。
5)抄読会(しょうどくかい)とは、研究に関連する学術雑誌論文を読解しその要約を発表し、批評的コメントを交換しながら研究上のアイディアを学習 してゆく定期的なセミナー形式の集まり。ジャーナルクラブと呼ばれる。佐藤研では毎週金曜日の午後5時から開催される。大学院生の正式メンバーには授業単 位として認定され、また学会発表の予行演習の機会にも使われるので、研究室の学術活動にとっては重要なイベントである。
6)佐藤研では、学部生向けの輪読会(平成19年はRobert Snowdenらの”Basic Vision,” Oxford UP, 2006. が読まれていた)が水曜の6時から開催されていた。
7)学術セミナーは、内外の研究者がおこなう学術講演会で、招待した研究室が主催して関連する教室や研究者――視覚の神経生理学関連の研究室や近隣 の大学の研究者など――に広報される。著名研究者の場合は多数の参加があるが、同時に懇親会などが催されるので、関連研究者にとって「刺激ある」情報交換 の場になる。
8)例えば、数式が自然に頭に入ったり、ろくろを上手に回すことを覚えた時などである。佐藤研の事例では、実験動物の飼育をおこない、実験への参加 を通して、実験の内容や意義について理解し、最終的にこの分野での論文がきちんと書けるようになる一連のプロセスのことを指している。
9)The Organization for Tropical Studies, OTS. コスタリカにある北米の大学を中心とする熱帯生態学のためのコンソーシアムで、独自の自然保護区をもって、そこでの科学調査を受け入れている機関。池田 [1998]――本報告書の11章に再録している――参照にせよ。
10)池田光穂による解説(http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/060711SS.html)
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