はじめによんでください

マートンのCUDOSからザイマンのPLACEまで

Robert K. Merton's the CUDOS principles


池田光穂

以上 をおさらいしてみましょう。社会学者マートンは、科学研究を通して、科学者集団に は次のようなエートス(ēthos)が共有されていると指摘しました。

    1. 科学的真理を共有しているという共同占有性=コミュナリズム
    2. 科学は世俗的な権力から自由なのだという=普遍性
    3. 科学の利益は自分の営利のためではないという=無私性
    4. 真理が証明されるためには、何事も疑ってかかる=懐疑性、それも集団的な懐疑性

ジョン・ザイマン(1925-2005)のノルム(規範)について

マートンの結論は、歴史的な研究をもとに推論したために、科学者の現実を反映していない。とりわけ社会学者が集団に対してみる冷静な客観的態度が欠けてい るのではないかという指摘は、古くから指摘されていました。物理学者であり、科学技術論に大きな貢献をしたジョン・ザイマン(John Michael Ziman, 1925-2005)は、CUDOSをもじって、PLACEだとそのアクロニムで次のように言いました。それぞれマートンのCUDOSと対照的です。

    1. Proprietary:[知識資源を中心とした]資産階級でかつ研究を独占する(=所有化)傾向(←→Communalism)
    2. Local:真理の通用範囲は、普遍的で局所的だ(←→Universalism)
    3. Authoritarian:知に対して謙虚ではなく権威主義的(←→Disinterestedness)
    4. Commissioned:専門家として[政府や権力あるいは資本家から]委託されている(←→Disinterestedness
    5. Expert work:専門家としての振る舞いが期待されているし、また専門家として振る舞う(←→Organised Scepticism)

マートンの理想主義あるいは、理想的理念型の指摘を、「現実はそうじゃない!」と修正したザイマンのオツム(=頭脳)がそれほど優秀とは思えないのは、両者は科学の現状にまったくちがった認識論的アプローチをしていることにザイマンがまったく気づいていないからです。

科学社会学あるいは科学論という観点からみれば、ザイマンはここでは全く失格です。

リンク

文献

その他の情報

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 2010-2019