臨床コミュニケーション教育の現場から:
大阪大学大学院全研究科の大学院生を対象にしたコミュニケーションデザイン・センター臨床部門の過去5年間の経験
西川勝・西村ユミ・池田光穂(大阪大学)
長野県立看護大学FD研修会(2011年2月8日)
[研修会の要旨]
2006(平成18)年度から今日にいたるまで、大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(CSCD)では、全研究科の大学院生を 対象とする全学共通科目である「コミュニケー ションデザイン科目」をこれまで40種類以上提供しています。
私たちは臨床コミュニケーション関連科目群とよばれる5種類の授業(臨床コミュニケーションI とII、ディスコミュニケーションの理論と実践、現場力と実践知、医療対人関係論)を担当しています。
このFD研修では、(1)この経験にもとづく「臨床コミュニケーション授業」の概要の紹介、(2)医学教育における対話型教育といえる「問 題にもとづく学習」(Problem-Based Learning, PBL)についての簡潔な紹介とPBL教育に関する技術的な問題点などについて御紹介します。
さらに、各講師の経験を披露しつつ、貴学での「対話型教育」への導入を想定した際に、どのような事前準備が必要か、講師・ファシリテーター の人材育成、運用後に生じる問題とその対処についての考え方、ならびにプログラム進行中におけるOJT(=現場での職務遂行能力改善訓練)などの工夫方法 について考えたいと思います。
※なおこのプログラムの実施主体は長野県立看護大学FD研修会にありますが、大阪大学CSCD拡大現場力研究会の社会アウトリーチ活動の 一環としても開催されます。
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【講師紹介】
1957年生まれ。看護師。臨床哲学専攻。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター特任教授(→現在は無所属)。精神科病棟での見習 い看護師を皮切り に、人工血液透析、老人介護施設へと職場を移しつつ、二十数年にわたって臨床の現場での経験を積む。一方、関西大学の二部にて哲学を学び、その後大阪大学 大学院文学研究科に社会人入試を経て入学、臨床哲学を専攻する。九鬼周造の哲学と自らのケア論を織りまぜた論文『ケアの弾性』によって修士号を取得する。 看護の実際に即したエッセイ、ケアのあり方をめぐる哲学的考察など、旺盛な執筆活動を続けている。著書:『京都市高齢者介護等調査研究事業報告書』(京都 市社会福祉協議会、2004年)、『ためらいの看護:臨床日誌から』(岩波書店、2007年)、『認知症ケアの創造:その人らしさの看護へ』(雲母書房、 2010年)
2000年 日本赤十字看護大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。大阪大学コミュニケーションデザイン・センター・准教授(→現所属: 首都大学東京)。専門は看護 学。看護師としての経験は、神経内科病棟で2年間。その後、修士課程において、高齢介護者の介護負荷に関する臨床生理学的研究を手がけ、博士後期課程で は、遷延性植物状態患者と看護師との〈身体〉を介した交流に関する研究に従事する。修了後は、日本赤十字看護大学、及び静岡県立大学において看護師の基礎 教育に携ってきた。現在は、1. 経験を積んだ看護師の「身体知」の記述的研究、2. 看護場面における「実践知」の記述的研究(共同)、3. 遺伝問題にかかわる学習支援に関する研究(共同)、4.遺伝カウンセリングに関する国際共同研究、5. がん患者の生活支援に関する研究(共同)を行っている。また、1.「現場力研究会」の開催(CSCD)、2.「身体論研究会」の開催(静岡県立大学)、 3.「ケア研究会」の開催などに携っている。著書:『語りかける身体:看護ケアの現象学』(ゆみる出版、2001年)、『交流する身体:「ケア」を捉えな おす』(日本放送出版協会、2007年)、『認知症ケアの創造:その人らしさの看護へ』(雲母書房、2010年)
1956年生まれ。大阪大学大学院・医学研究科・博士課程単位取得済退学。中央アメリカ地域をフィールドにする文化人類学(とくに医療人類 学)が専門です。国際保健医療協力のボランティアとしての活動経験から、多元的医療体系についての文化人類学的理解について長年研究をしてきました。保健 医療協力の現場は、異文化を含めたさまざまな社会的背景をもった人たちとの交渉が欠かせません。そのため臨床コミュニケーションプロジェクトの活動メン バーであると同時にそのマネージメントの仕事をしています。研究関心はどんどん広がってゆくほうがよいというのが私のモットーです。最近は「現場力」に関 する理論的考察や、中央アメリカの先住民族の人たちの文化的アイデンティティと国民国家の関係、さらには生物医学の研究室の民族誌方法論の開発も手がけて います。著書:『医療と神々:医療人類学のすすめ』(平凡社、1989年)、『健康論の誘惑』(文化書房博文社、2000年)、『実践の医療人類学:中央 アメリカ・ヘルスケアシステムにおける医療の地政学的展開』(世界思想社、2001年)、『医療人類学のレッスン』(学陽書房、2007年)、『看護人類 学入門』(文化書房博文社、2010年)、『認知症ケアの創造:その人らしさの看護へ』(雲母書房、2010年)
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