母の言うことは本当だ!
Cierto lo que dice tu mama!!!
Daniel Kahneman, 1935 (image from Wikipedia)
解説:池田光穂
この話(エピソード)は、2002年のノーベル経済学賞(=アフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立経済銀行経済学賞)受賞のダニエル・カー ネマンが7,8歳頃に経験した第2次大戦中のパリでの話である。
「この頃のことでひとつ、今でも鮮明に覚えていることがあるのですが、このエピソードも豊かな陰影に彩ら れています。あれは確か1941年の終わりか、42年の始め頃、当時ユダヤ人は「ダビデの星」という星の形をした印を身につけなければならず、また夕方六 時以降は家から出てはならないことになっていました。その日私はキリスト教徒の友だちの家に遊びに行っていて、帰りが遅くなってしまいました。そこで、茶 色のセーターを裏返しにして着て、家までの数ブロックを歩きました。人っ子一人いない道を歩いていると、ドイツ人兵士がこちらに近づいて来るではありませ んか。一番気をつけなければならないと言い聞かされていた黒い制服の兵隊でした。黒い制服は、ナチス親衛隊の隊員だったのです。できるだけ早足で脇を通り 過、ぎようとするとその兵隊がじっと私を見ているのに気づきました。そして、なんと私を手招きしたのです。彼は私を抱え上げると、ぎゅっと抱きしめまし た。裏返しにしたセーターの中の星に気づかれはしないかと、生きた心地もしませんでした。兵士はドイツ語で私に熱っぽく語りかけました。そしてようやく降 ろしてくれると、彼は財布を聞いて小さな男の子の写真を見せ、いくらかお金をくれました。こうして無事家に帰った私は、母の言うことは本当だという確信を ますます深めたのでした。人間というものは止めどなく複雑で興味深いものなのです」[カーネマン 2011:67-68]。
1.この文章を読んで、一体何が書かれているのか、みんなで推測してみよう。
2.カーネマンが言う「母の言うことは本当だ」という「母の言ったこと」とはどのようなことだったのでしょうか?
Daniel
Kahneman, 1935 (image from Wikipedia)
カーネマンにとって彼の母はいったいどのようなことを言ったのでしょうか?
「母が友だちや父親とするうわさ話の中に出て来る人たちの、一筋縄では行かない複雑さにはすっかり心を奪われてしまいました。ある人たちは 他の人たちよりもいい人で、でも一番いい人でも完壁と言うにしかし徹頭徹尾の悪人もいません。母の話は皮肉が利いていて、しかも一面的では ほど遠くはな く、いろんな見方ができるものばかりでした」 [カーネマン 2011:67]。
■ 認知バイアス(cognitive bias)とは?
「認知バイアスは生活、忠節、局所的な危険、懸念など様々な要因で発生し、分離して成文化することは難しい。今日の科学的理解の多くは、エ
イモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンらの業績に基づいており、彼らの実験によって人間の判断と意思決定が合理的選択理論とは異なった方法で行われ
ていることが示された。そこからトベルスキーとカーネマンはプロスペクト理論を生み出した。トベルスキーとカーネマンは、認知バイアスの少なくとも一部は
心的なショートカットまたは「ヒューリスティクス」を用いて問題を解決しようとするために起きると主張した。例えば、頻繁に(あるいは最近)経験したこと
は、即座にあるいは鮮明に思い浮かべやすい」(日本語ウィキペディアより)
文献
クレジット
2011年10月27日 ディスコミュニケーションの理論と実践、オレンジショップ、16時20分〜 担当:池田光穂
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