はじめによんでください

お んなコトバの不思議

Critique against the essentialism of female-dependent useage of Japanese Language

解説:池田光穂

――オンナコトバ(女言葉)ってなに?
――女が話す言葉でしょう。
――「オカマ」*が話すオネエコトバもそう?
――女が話すように話すから、それもオンナコトバでしょう、たぶん?!
――どうしてオンナコトバがあるのかな?
――女がそのような話し方をしてきたからでしょう。
――男がそのように女に対して「話させてきた」のでは?
――そうとも言える。

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言語学者(日本語学者)の中村桃子先生は、女ことば を、日本の女性が使ってきた言葉というよりも、その言葉の使用には時代的変遷があり、普遍的に決して同じではないことを主張している。その意味で「女こと ば」とは、ことばの使用のジャンルであり、歴史を超えて厳然と存在するものではないと言う。また、昔の人の女ことばを使っていて、今はそうではないという 主張も怪しいとおっしゃる。昔と今で、女ことばに共通点がそれほど見つからないのに、なぜ独自の女ことばがあるとみんな信じてしまうのだろうか。などな ど。

【中村先生の戦術】
「女ことば」は「言語イデオロギー」である。言語イデオロギーとは、実際の言葉づかいがあるとみるのではなく、「日本語には女ことばがある」という信念 が、我々が自然なものとして、女ことばに関する知識や「このように話すべきだ」という規範が内面化されていることをこのように捉えることである。イデオロ ギーとは「ある特定の観念についての理論体系」のことであり、それが明文化されていようがいまいが「観念に権威を与え、理解し、それに基づいて何かの実践 を引き出すことができるもの」とここでは定義することができます。したがって、イデオロギーはその渦中にいる人にとっては良い/悪い、正しい/間違ってい るという価値の判断を(とりわけ深く考えなくても)もたらすことができます。

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*【おことわり註釈】

オカマということばは、ある特定の人への侮蔑語では なく、オネエコトバを話す男性の属性ひろく指してこう架空の劇中の人に語らせています。「オネエコトバを話す男性」に対して作者が侮蔑的な感情をもってい ないことをここでは確認しておきます。


【用語集】
・言語イデオロギー(language ideology)
"Language ideology (also referred to as linguistic ideology) is a concept used primarily within the fields of anthropology, sociolinguistics, and cross-cultural studies to characterize any set of beliefs or feelings about languages as used in their social worlds. When recognized and explored, language ideologies expose connections between the beliefs speakers have about language and the larger social and cultural systems they are a part of, illustrating how these beliefs are informed by and rooted in such systems. By doing so, language ideologies link the implicit as well as explicit assumptions people have about a language or language in general to their social experience and political as well as economic interests," (Wikipedia - http://bit.ly/IBhrD9 )

【文献】中村桃子『「女ことば」はつくられる』ひつじ書房、2007年


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