いわゆる「食いつき力」について
So called "KUITSUKI power," enthusiastic power in learning music
解説:池田光穂
若い人たちに音楽教室で音楽を教えている、先 生のお話(部分)です。
彼の語りは、たぶん、別の執筆者が整理して文章にし たものですが、語り部のニュアンスを上手に伝え、「音楽のプロになりたい」人に対して、上手に自分の 教育経験を伝えていると思います。
さて、学部や研究科で、勉強したり研究したりしてい る私たちにも、彼の話はいったい、どのような為になるでしょうか? プラトンは、考えることとは「自 分と対話すること」だと主張しています。
この対話型の授業は、みなさん自身が考えたことを、どしどし他人(クラスメイト)と対話して、何かを引き出すこ とを目的としていますので、1人で考えること、すなわち「自分自身と対話すること」には、その教育目的として大きな主眼をおいているわけはありません。本 日、第1回目の授業は、時間の関係で(他人との)対話の時間がとれません。その代わりに、以下に紹介する「音楽教室で音楽を教えている先生」の語りを手が かりにして、「プロになること」とそうではない[構えの]人との分水嶺ないしは分かれ道について、各人で考えてみましょう。
【ココから本編】
私は、都内の音楽学校でアレンジとジャズ・ポピュ
ラーピアノを教えて10年あまりになります。この音楽学校は、基本的に20代の青年がいちばん多く、
「プロになりたい」という人たちも多いのが特徴です。私が直接関わった生徒さんの中で、実際プロになっていったのは、数でいうとだいたい2〜3年に1人ぐ
らい。では、プロになる人と、そうではない人の違いは何なのでしょうか。
(略)
1. 既に10代の頃から、楽器やバンドなど、ある程度の音楽経験がある。子供の頃から音楽がやれる環境かどうかは、もちろん家庭の事情等、外部の条件にもより ますが、これはやはり、頭が柔軟なうちに吸収した方が圧倒的に有利、というのは芸事の定めのようなものかもしれません。
2. 聴いてきた音楽の量が多い。
3. 面白そうに、興味深そうに授業に参加している。欠席は極めて少ない。
4. 自分の意見を言ったり、質問したりが積極的。あたりまえのようですが、これ基本。私はこれを「食いつき力」と呼んでいます。「食いつきがいい」っていうや つ。要するに、それだけ好きかどうかってことなんですね。好きだから。それだけ面白いことだから。それだけのめり込んで、音楽のことを考えているのが楽し いっていうことですね。
5. アレンジに関しては、課題をちゃんとやってくる。なおかつ、それを単に「義務だから」ではなく、自分なりの楽しいチャレンジとしてやってくる。
6. 楽器に関しては、毎週「ここまでは到達する」というレベルを自分で設定して、そこまでちゃんと練習してくる。
(略)
だから、やりたくもない練習をイヤイヤ「やらな きゃ!」って焦ったり、やれない言い訳を考えたりしてないで、「ああ、それほど好きじゃなかったんだ」っ て、認めてもいいんじゃないかな。その方が楽になります。そして、本当に好きなこと、のめりこめることは何だろう?って、あらためて考えた方がいい。「〇 〇さんみたいになりたい!」とかいう憧れじゃなくて。その〇〇さんがやっている、楽器なり、作曲なり、歌なり、その「行為」をしていること、そのものが、 自分は本当に好きなのか、のめりこめることなのか、ということを考えた方がいい。そして、そこまでのめりこんではいない自分がわかったら、「プロ」を考え るのはさっさとやめた方がいいでしょう。人生の時間は限られているのだから。他のことに時間を使いましょう。もっと、自分らしい、本当に自分を活かすこと のできる他の道が、きっとあるのだと思います。
出典:
http://lessonblog.sonoragarden.com/?p=426(2014年確認時)
授業ハンドアウト:kuituki2014.pdf(パスワード付き)半角小文字でc*s*c*d の四文字を入力してください。
リンク
文献
その他の情報
Copyright Mitzub'ixi Quq Chi'j, 2014