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人生転落の醜聞について

Sobre Cisme y Escándalo con lo Otro

池田光穂

2015年1月26 日、東京大学農学生命科学図書館での出来事である。

この図書館は、小ぶりながらも、学外者にも比較的容易な手続きで開放されている「農学・生命科学」関連の素晴らしい図書館で ある——東大ですばらしいのは、この他に「医学図書館」である。この図書館は、重複本や複数のコピーのある汚損本などを「リユース」として利用者に無償で 提供するというサービスもある。僕は、その図書館でその本の中から、興味深い【紙片】を見つけた。

気になる新聞記事: 1930年代はじめの【東京帝国大学蔵書印】の朱肉影の移りを防ぐための 正方形の新聞紙をみつけた。左上の記事【だった模範巡査】【隣家に放火す】【の保険金欲しさに】【評判で金持ちの娘を貰ったが】……人生転落の記事には、 誰もが興味津々のものだろう。この記事をアクセスするには、僕たちはいったいどのような方法を使えばよいだろうか?

  1. 新聞記事データベース:神戸大学図書館にある【新聞記事文庫】で「模範巡 査」について調べてみた。でも見つけたのは次の一件のみである:同盟罷工十種 (一〜六) / 伊藤正徳:倫敦特派員(時事新報) 1918.10.28 (大正7),  , 労働問題-3-016
  2. 朝日新聞社の「聞蔵II」で模範巡査を検索したら、戦前のもので 30件が引っかかった。だが、しかし、それに相当するものはなかった。しかし、その情報検索のなかで、すくなくとも当該新聞記事のなかで模範巡査という用 語が使われているものは、模範行為を顕彰するものよりも、模範巡査の転落のたぐいのものが、いくつか見つかる。模範巡査の用例には、模範だか「なにかとん でもないこと」「凶行」をという逆説的な状況を描写する為に使われることがあることがわかる。
  3. 結局、短時間の探索ではわからなかったが、少なくともこのことか ら、僕じしんについて次のようなことがわかった:(1)人はスキャンダルなことに野次馬的興味をもつ、(2)その野次馬は、事の顛末について詳しく知りた がるものだ。そして、(3)興味駸々の野次馬は、手近なツールで調べてみるものだが、そのような個別のスキャンダルへの情報収集に「ある程度以上」の情熱 は注がないものだ。というものであった。
  4. 2017年11月30日の後日談につづく……

これが当該の新聞記事の部分です。正方形に切られている。オリジナルの色は、セピア色で した。


挟まれていた本で、リユースとして譲り受けたもの、状態は比較的よろしい。天側の埃の蓄 積により非常に汚い

書誌は:Poultry breeding and management  / by James Dryden, Orange Judd , 1916(ただし写真のものは1928年版)

このような感じで、紙片の中の情報が【発見】されたのでした!

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■2年10ヶ月後の後日談(2017年11月30 日)

このことをFBで呟いたら、(元)同僚の宮本友 介先生が、 これは周りの記事から1925年10月30日付の紙面と推察するとの返事を頂いた。その根拠は次のようなことだという(以下、引用)「大町桂月(1925 年6月没)の遺稿の版権争いとあるので、おそらくその年か、せいぜい数年後くらいと思われます。呉服店の広告に「冬衣大売出し」「七五三」の言葉が見られ ますので、10月でしょう。他にも29日午前の事件があるので、30日付(29日の夕刊?)かと」。そして、朝日新聞で紙面検索して記事の存在を指摘され たので、私も検索してみた。

事件の容疑者は「平岩霊眞(ひらいわ・れいしん)三 二歳」と読める。日本の国立情報学研究所(NII)のサイニーブックス(CiNii Books)では検索がかからないが、国立国会図書館の検索では、この「平岩霊真」名で2冊の著書があることがわかる。同姓同名かもしれないが、いちお う、下記に書誌を示しておく。後者の『体力健康増進法 : 心身修養』(全401ページ)は、非常時体制版と銘うっており、総力戦体制にこの著書が貢献する目論みもあったものかと思われる。

心霊と気合術心身修 養法講授録』平岩霊真 著 心身修養会 1924年

体力健康増進法 : 心身修養』平岩霊真 著 内外出版社 1940年

For all undergraduate students!!!, you do not paste but [re]think my message. Remind Wittgenstein's phrase,

"I should not like my writing to spare other people the trouble of thinking. But, if possible, to stimulate someone to thoughts of his own," - Ludwig Wittgenstein

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