ローレンス・ジョセフ・ヘンダーソンについて
On Dr. Lawrence Joseph Henderson, 1878-1942
Dr. Lawrence Joseph Henderson, 1878-1942 に関する覚書
池田光穂
「タルコット・パーソンズ(Talcott Parsons, 1902-1979)が想定(措定)する医師—患者関係のモ デルは、パーソンズが独自に案出したというよりも、生物学を専攻する学部学生時代から彼が親しんだ生化学者でありかつハーバード大学ビジネススクールでも 教鞭をとったローレンス・ジョセフ・ヘンダーソン[Henderson 1935]の主張に由来すると、パーソンズ本人がその著作の中で指摘しているし、多くのパーソンズの理論解説書ではヘンダーソンの影響は無視出来ないほど であると書かれている[パーソンズ 1974:471; Gerhardt 1989:30]」。
「病人役割を紹介する多くの論者が、同書にあるパー ソンズの病気の定義を踏まえて、あるいは病気の定義と関連付けて考えない傾向があることも、マイナーだが見落としてならない点である。パーソンズによると 病気は生理学的な障がい(異常)と社会的逸脱の結節点にある。この見解はまさに逆説的だが生化学者であり医師であったヘンダーソンを経由したヴィルフレッ ド・パレート理論の影響のように思えるが、この病気の理解こそがパーソンズをして「社会学としての医療社会学」の創始者にした。「病気は、単に避けられる べき『外的な』危険になるのみならず、社会的均衡そのものの肝要な部分にもなる。病気は社会的圧力に対する反応の一様式、とりわけ社会的責務を避ける一様 式とみなされる」[パーソンズ 1974:427]。だからこそ病気になることによる「通常の社会的業務からの免責」が何ら道徳的非難の対象にならないことを保証すると同時に、そのこと に対する背信行為であるところの詐病には厳しい批判が向けられるのである。パーソンズのユニークな病気の理解——生理的異常と社会的逸脱の結節点——を抜 きにして病人役割は語ることはできない」。
病人役割理論は、ハーバードにおける若き日のパーソ
ンズの実質的なメンターであったローレンス・J・ヘンダーソンが医師—患者関係論研究に嚆矢をつけることになるが、ヘンダーソンはこれらの個人と個人の関
係の文脈が、個々の行動に与える影響、すなわち社会的文脈の影響について顧慮することができなかった。彼には未だ「役割概念」というアイデアがなかったか
らである[Henderson 1935,
1970:208-211]。その点、本文で説明するようにパーソンズは、与えられている文脈が個人の行動に集合的属性を与えるという効果ということを
「パターン変数」という構想をもって解明しようとした点で、師のヘンダーソンからは一歩前に進むことになったが、その後のパーソンズの読解の硬直化ゆえ
に、彼の病人役割理論が、今日においても開発途上の未完成な議論のままであることを、あわせてその改良のための処方せんを提案しようと、筆者は示そうとし
ていることを理解していただきたい。
小野伸一
チェスター・「バーナード(Chester Barnard, 1886-1961)の組織経営論は、自らの経営者としての 経験に、経済学、社会学、システム理論などについての幅広い知識が結びついて構築されており、中でもアメリカのローレンス・J・ヘンダーソン(1878〜1942)やイタリアのヴィルフレド・パレート(1848〜1923)、アメリカのタルコット・パー ソンズ(1902〜1979)などの社会学者の影響を強く受けている。ヘンダーソンはもともと生化学者であったが、晩年になって(10 年間)社会学に傾注し、イタリアのパレートの社会学を研究、これをアメリカに導入したことで知られている。パレート=ヘンダーソンの社会学では、システム 均衡やシステムの構成要素の相互関係などの概念に重要な位置付けが与えられており、バーナードはヘンダーソンからこれらを学んだのである。また、パーソン ズに関していえば、本書の「単位組織」、すなわち公式組織6のもとになる小さい単純組織の概念は、パーソンズの「単位行為」(行為システムを構成する最小 単位となる行為)を想起させるものがある。ちなみにバーナードはパーソンズと末年まで親交があった。おそらくバーナードは、人間や事象の同質性・論理性、 物質的・貨幣的価値を重視する経済学よりは、非同質性・非論理性、非物質的・非貨幣的価値に着目する社会学の方が組織の説明能力が高いと考えたのであろ う。いずれにせよ、歴史に名を刻む組織経営論というものは、一つの学問領域だけではなく、関連する複数の学問領域をベースに構築されているものなのかもし れない」(小野 2013:14)。
『エグゼクティブの機能(邦訳:経営者の役割)』は、チェスター・I・バーナード(1886
-1961)の著書で、「協力と組織の理論 」と 「公式組織におけるエグゼクティブの機能と運営方法の研究 」を提示したものである。
原著は1938年に出版され、1968年に出版された30周年記念版が現在も出版されている。本書は、それまでの
「規定主義(prescriptive principles)
」を重視した組織へのアプローチではなく、組織が実際にどのように運営されているかに焦点を当てたことが特徴である。
また、リーダーシップを社会的・心理的な視点から考察した最初の本の一つであることも評価されている。 Public Administration
Review誌の記事によると、非公式の諮問委員会が1940年から1990年の間に出版された行政学の本の中で最も影響力のある本の1つに選んだとい
う。また、経営アカデミー会員による投票では、20世紀で最も影響力のある経営書として、フレデリック・ウィンスロー・テイラーの「科学的管理の原理」に
次いで2位に選ばれている。- The Functions of the Executive, 1938.
リンク
文献
-----------
For all undergraduate
students!!!, you do not paste but [re]think my message.
Remind Wittgenstein's phrase,
"I should not like my writing to spare other people the trouble of thinking. But, if possible, to stimulate someone to thoughts of his own," - Ludwig Wittgenstein
(c) Mitzub'ixi Quq Chi'j. Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 2015-2018