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イコン・インデックス・シンボル

Icon, Index, and Symbol


池田光穂

チャールズ・サンダー・パースは、自分自身の提唱し た記号論を Semiotics と呼んだ。これは、フェルディナン・ド・ソシュールの記号学(あるいは記号論)の Semiology を影響を受けながらも異なるものだ、まず理解すべきである。

記号とは「あるもの」を「別のもの」に結びつけるも のである。簡単な例では、ある人が雲をみて、雨がふることを予測し、傘を用意しなくてはと思ったり、また実際に傘を用意することを想定してみよう。この場 合、「雲」(=あるもの)という記号は、「雨が降ること」(=別のもの)と結びつく記号(sign)である。パースは、雲という〈記号〉が、雨が降るとい う自体に結びつけられるので、雨が降ることを〈対象(object)〉と呼ぶ。そのような結びつきが雨が降れば必要なことを想起させ、結果的に傘を用意す ることを引き起こしたので、傘を用意することを〈解釈項(interpretant)〉とした。

「記号もしくは表象項とは、誰かに対して、ある面な いしはある資格で何ものかの代わりをする何ものかである。記号は誰かに呼びかける、つまりその人の精神のうちにひとつの等価な記号か、おそらくはより展開 した記号を創り出す。記号が創り出すその記号を、私は最初の記号の解釈項と呼ぶ。記号はあらゆる面でその対象の代わりするのではなく、ある種の観念との関 係においてその代わりをする。この観念を時に私は表象の根底と呼んできた」(パース1897, 2,228)[翻訳は篠原資明訳、エーコ『物語における読者』1993年、47ページ]

解釈項は、記号がその受け手に理解するという感情 (情緒的解釈項)、記号を生み出す心や身体の努力(努力的解釈項)、記号の論理的な帰結(論理的解釈項)の3つをもつ。この三番目のものが、我々に傘を持 たせるという習慣の変化(habit change)を引き起こす。

さて、では記号には、どのようなものがあるのか?  記号の種類には3種類があるが、それは記号と対象との関係から分類される。すなわち、記号がなにかを表示するような類似性をもつ。次に、記号が対象に結び つくことに因果性をもつということ。そして、最後は、このような記号はこのような対象を意味するのだという約束に規定されるもの(約定性)である。パース は、それぞれ;この類似性にあたる記号を(1)イコン;因果性を示唆する記号を(2)インデックス、そして;約定性にあたるものを(3)シンボルと呼ん だ。

(1)イコンは、映像や写真がそうである。写真は現 実のものでなくても、それ自身がもつ性格によりそれを示す対象に関わる。例えばパソコンで示される傘の絵は開いていようが閉じていようが、またプロポー ションやディテールが現実のものと異なろうが傘を示す。(2)インデックスは、 記号が引きだす対象を時系列や因果律のなかで理解されているものは、それに 相当する。例えば、時計という記号は、時間を計測するという対象を引きだすときにインデックスとなる。右肩上がりのインフルエンザ患者数上昇の折れ線は、 罹患率の上昇や流行という対象を引きだすインデックスである。(3)約定性にもとづくシ ンボルとは、そのような因果性とは無関係に、ある記号が別の対象を 引き起こす約束を示唆するものである。車道に引かれた直行する太い白線(=記号)は「一旦停止」(=「習慣やルールにもとづく」=約定性の対象)を引きだ すシンボルである。

整理しよう。まず記号作用には次の3つの組み合わせ がセットがある。つまり、

〈記 号〉、〈対象〉、〈解釈項〉

である。そして、記号には、類似性(=似ている)、因果性(=原因と結果などの論理的/時間的結びつき)、「習慣やルー ル」性にもとづいて、それぞれ

イコン、インデックス、シンボルがある。

"Icon, index, symbol: This typology, the best known one, classifies every sign according to the category of the sign's way of denoting its object—the icon (also called semblance or likeness) by a quality of its own, the index by factual connection to its object, and the symbol by a habit or rule for its interpretant."

イコン=類似性

インデックス=因果性

シンボル=約定性

以上である。

では、練習問題である。ラテンアメリカのスペイン語圏の男女の平等性に 訴えるあるNGOが次のようなロザリオ(聖 母マリアへの祈りに使う数珠)を使った図像をウェブページに掲載した。パースの記号論における、イコン、インデックス、シンボルは、下記の図像においてど のような説明され、どのように解釈されうるか?

《図像》

考えられる答え:

1.【イコン】数珠の図の上部の2つの小さなサーク ルは、卵巣を指し示しており、真ん中の逆三角形のものは子宮を指し示している。なぜなら、それらは類似性にもとづくから、これはイコン的記号である。

2.【インデックス】ロザリオは、聖母マリアの祈り に使うために、ロザリオは女性性のインデックスをあらわしている。もちろん、正統的カソリック信仰において、このようなイコン化というのは、冒涜とは言わ ないまでも、あまり好ましいものではなく、ある種の強いメッセージをもつ。もし、男性聖職者の原理が息づいているローマ・カソリックの信仰上のこと(=こ れはシンボルの操作でもあるので3にも関係する)で、このインデックスが使われているとすると、カソリック教会や聖職者もまた、現代社会において以前より もなお強く男女の平等を謳うべきだという未来の方向性を示唆したインデックスであるとも解釈できる。

3.【シンボル】一般的に実際のロザリオはこのよう なかたちにすることができるが、実際はこのような形にするような意味もないし、またそのような約束があるわけでもない。したがって、習慣やルール=約定性 にもとづくシンボルという観点からみて、その意味はもっとも希薄である。もしもし、男性聖職者の原理が息づいているローマ・カソリックの信仰上のことで、 このインデックスが使 われているとすると、カソリック教会や聖職者もまた、現代社会において以前よりもなお強く男女の平等を謳うべきだという未来の方向性を示唆したシンボルで ある、と判断することが妥当かもしれない。

■オグデン&リチャーズの「意味の三角形」

「彼(チャールズ・ケイ・オグデン) の研究論文の内で最も永続性があるのは、(アイヴァー・リチャーズとの共同である)『意味の意味』(1923年)と題されたもので、何度も版が重ねられて いる。この本は、言語学、文学分析、哲学の境界線にまたがっているのだが、Victoria Lady Welby(オグデンは彼女の弟子である)の作った概念「シグニフィックス」やチャールズ・サンダース・パースの記号学に注意を引いている。20世紀英米 哲学における「言語論的展開」の段階で『意味の意味』は言語の機能を理解する原理を示し、意味の三角形と呼ばれるものを提示した。それには独特のフレーズ 「ゴスタクがドッシュをディスティムする」が含まれている。/教育を受けた哲学者も大学人もそうではなかったのに、オグデンはイギリスの大学の哲学に具体 的な影響を及ぼした。『意味の意味』では感情主義の理論が提唱された。オグデンはさらに、ジェレミー・ベンサムの遺稿を編集して『ベンサムのフィクション の理論』(1932年)とし、ハンス・ファイヒンガーの作品を翻訳して『「As If」の哲学』(1911年)として出版した。どちらの本もフィクショナリズムの近代的理論の先駆者と見なされている」出典:ウィキ日本語「チャールズ・ケイ・オグデン

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