池田光穂
部族社会において、語り部は、聴く人を癒し、活力を 与え、そして部族で生きることを再確認する役割をもつ。
そこでは、人類学者が必死になって、テキストに留め ておこうとする努力を、語り部は共感をもって理解することはない。なぜなら、テキストは「死んだ存在」だからである。
確認しよう、エクリチュールとしてのテキストは死ん だ存在だからだ。バルトが言うような「エクリチュールの自律性」と「作者の死」というものは、部族社会には絶対に訪れない。
なぜなら、語り部は聴くものと甦らせ、枯れた草木に 緑をもたらし、荒野を肥沃な獲物に満ちあふれた豊饒の大地にしてしまう。
そこにあるのは、テキストの死と、作者の再生であ
る。
リンク
- ベンヤミン「ニコライ・レスコフの作品についての考察」について／／／／／／／／／／／／
文献
- ベンヤミン、ヴァルター「物語作者」高木久雄,佐藤康彦訳、『文学の危機』晶文社、1969年
その他
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