67■1980年代初頭のベネズエラの歴史家の先スペイン期の先住民の歴史評価
「コロンブスによる新大陸発見以前のあの長い時代における全大陸の社会政治状況を詳しく観察すると、アステカ族の間には祭政・軍事機構や種々の階級からな
る貴族制秩序がみられる。インカ族は中央集権的専制政治によって統治されていた。チブチャ、タイノ、アラウカーノ、ティモト・クイカ、トクピー、グアラ
ニー、カリブの諸族ならびに、第三段階のアメリカの数千のグループは、人間性の無視というアメリカ大陸全体に共通の特性を備えていた。完成された複雑な社
会においては、国家の尊厳と権力の前に、そして部族および原始社会においては、カシーケ(酋長)の独裁権力の前に、個人の価値は無であった。自由は存在せ
ず、個人は酋長ないしは王の/持ち物、あるいは征服者が取る戦利品の一部であった。
アメリカ大陸では奴隷制がみられ、あちこちで人食が行なわれていた。人命とは、元気滋刺な若者の心臓と花の盛りの乙女にだけ満足する野蛮な神々に対する
供え物としての価値しかなかった。コロンブス以前のアメリカ大陸においては、人格は下位の価値しかなかった。主たる価値があるものは他のものであった」
(サルセド・バスタルド 1986: 7-8)。