79■民主主義と人種主義の共存
・「マルクス主義の影響を受けた歴史学的見解によれば、人種主義を生んだのは、ヨーロッパによる植民地主義である。植民地支配の正当化のために、人種主義 は誕生したとされる。白人研究の論者の多くは、白人の形成が歴史的なものであり、植民地主義がこれと深く関わっていることを認めている。しかし、ヨーロッ パによる植民地支配が、唯一の決定的要因ではないと考えている点で異なっている。白人研究では、ヨーロッパや白人植民地諸国における啓蒙思想の展開と民主 主義的な政治システムの発展が、人種主義と不可分の関係にあることが想定されている」(藤川 2005:20)。
・「ウインスロップ・ジョーダンによると、一七世紀のイギリスのアメリカ植民地には奴隷制がすでに導入されていたが、奴隷制を正当化する人種主義的な理論 は存在しなかった。18世紀の奴隷制の拡大によって、ようやく人種主義的な議論が芽生え始めたのである。アメリカ革命が人種主義への決定的な変化をもたら した。アメリカ革命は、すべての人間の基本的な同一性を強調し、白人男性間にあった身分的差異(囚人や年季奉公人などの非自由労働者の存在)は現実におい ても急速に縮小した(文献※, p.148」(藤川 2005:21)。
※文献:Mike Hill ed., 1997. Whiteness : a critical reader. New York: New York University Press.