黒髪北地区交通対策の現状と課題(1996)
――とくに黒髪北地区構内における交通規制について――
黒髪地区交通対策委員、池田光穂
■資 料:注意:黒髪北地区への交通遮断機の導入に関する資料であり、現行の運用システムとは関係ありません。
■文書名:黒髪北地区交通対策の現状と課題、――とくに黒髪北地区構内における交通規制について――、平成8 (1996)年2月26日、黒髪地区交通対策委員、池田光穂
【梗概】
1)この報告書の目的は、黒髪北地区がかかえる交通対策上の問題を指摘し、またその原因を究明するとともに、もっとも適切な対策を提示す ることにある。
2)黒髪北地区における交通対策の最大の問題は、不許可車両による違反駐車である。これによりキャンパス内の歩行者の安全が阻害され、正 式な手続きによる入構者の権利が侵害され、かつまた防災上の危機的な状況が生じている。
3)不許可車両による違反駐車をもっとも効果的に減する方法は、遮断機によってその入構を阻止することである。
4)遮断機の導入は、正式な手続きによる入構をなんら阻止するものではなく、むしろそのような手続きを経たものの権利を保全するものであ る。また遮断機の導入をもってこの問題に決着がつけられるのではなく、それに付随する総合的な対策、つまりソフト面での支援を行う必要があることは言うま でもない。
5)遮断機の導入が「開かれた大学のイメージ」を損なうという主張を論理的に導きだすような根拠は存在しない。「開かれた大学」を創造す るとは、教育の制度や実践などの活動でおこなうべき問題であり、交通対策上の問題にはならない。
6)遮断機の導入に際しては、学内の広範囲の合意を得るために一定期間のヒアリングをおこなう。その際には遮断機以外による交通対策の代 案についても検討する。
7)遮断機の導入の可否は交通対策委員会北地区部会委員全員よる採決によって決める。予算の折衝はその決定にしたがっておこなう。万一予 算が付かずに導入の延期を余儀なくされる場合も、次年度以降の委員会はその議決を維持するものとする。
【目次】 1 黒髪北地区における交通対策の現状
1.1 入構証
1.2 駐車場
1.3 門衛
1.4 交通対策委員会
1.5 交通対策の問題(まとめ)
2 交通対策の抜本的改善
2.1 遮断機
2.2 遮断機導入が招く問題への対処
2.3 遮断機の仕様と導入までのスケジュール
3 遮断機以外の制御手段とその実効性
4 資料編
1 黒髪北地区における交通対策の現状
ここでは、黒髪北地区の交通対策の現状を、(1)入構証制度、(2)駐車場、(3)門衛、(4)交通対策委員会の4つの項目に分けて検討 する。
1.1 入構証
現在の入構証にもとづく黒髪北地区への入構および駐車は、昭和56年(1981)から施行がはじまった「熊本大学黒髪北地区構内交通に関 する要項」にもとづいておこなわれている。入構証は職員に対するもの(A)、研究生および聴講生を含む学生に対するもの(B)、非常勤および常時外来者に 対するもの(C)、その他の学外ならびに本学職員および学生で構内への車両で臨時入構を必要とする臨時入構証(D)の4種類のものが使われている。(A) (B)(C)の入構証は、各年度初めに申請を受け、各部局で審査され、委員会北地区部会はそれを一括して承認している。平成7年度の北地区の発行数は 601件である(6月1日現在:内訳は巻末の統計を参照)。
構内への入構台数を軽減する動きは、昭和60年度(1985)の「熊本大学黒髪地区構内交通に関する要項」の改正にともない、一定基準に よる入構車両の総量規制が基本方針とされるようになった。学生に対する啓発に関しては、入学案内の「通学方法について」などにおいて、車両による通学を極 力ひかえ、公共交通機関の利用、自転車あるいは徒歩による通学をすすめている。また、この頃(資料は昭和62年以降)より毎年、春と秋のそれぞれ週日の5 日間、交通指導と駐車駐輪台数調査が行われてきた(駐輪台数調査は平成5年秋以降中止)。
入構車両の総量規制の原則は、入構証発行枚数にも不文律のかたちで反映されており入構証発行枚数は現状を超えない程度に抑制されている。 しかしながら、学生の車両による通学を抑制する理念を尊重すべきであるなら、入構証(B)の発行枚数は次第に減少していくはずであるが、現在のところその 傾向は見られない。 発行枚数が減少させられない理由はいくつか考えられる。まず、現行の入構証の申請および審査は、それぞれの年度の各部局の入構証委員が部局において引き 継いでいる「基準」に従って認可さていることにはその一因である。そのために各部局では前年度実績を下回る枚数しか委員が出さない場合、次年度の予想され る有資格者の増加という事態に対応できないので、一般的にその実績を維持しようとする傾向が生じる。
このような傾向を補強しているのが、駐車場所の部局ごとのテリトリー(なわばり)制である。というのは、黒髪北地区では、テニスコート西 側の教育・文・法・教養の共同駐車場をのぞいては、駐車場は各部局(文学部法学部の場合は共用)がそれぞれ駐車場を管理しており、実質的にそのテリトリー となっているからである。この事実を把握していない新任職員などは、所属部局の入構証を掲示しておいても部局外での駐車の際に警告書を貼られる体験をして いる。つまり、そのテリトリー制を了解していないためにそのような事態に遭遇するのである。これはさまざまな点で問題がある。つまり単に組織運営上の旧弊 という側面のみならず、駐車場管理はそれぞれの部局で対処するという通念を育む一方み、抜本案を導入する心理的障壁になっている。
平成7年(1995)11月28日より従来の臨時入構証(D)が従来の貸与のものから使い捨てのものへと変更した。これは、入構証車両の 増加ならびに入構証(D)を長期に保持し構内の入構に不正に利用するものが出てきたために、従来の貸与のものが一時的に底をつき公正な手続きを経て入構を 希望する者への貸与のサービスに支障をきたすという点からの窮余の対策であった。新しい入構証の利用法は広報(「熊大だより」77号)などで呼びかけた が、これをもって駐車状況が改善されたという報告は未だない。
1.2 駐車場
黒髪北地区の駐車場対策は、各年度ごとに漸進的な改善が試みられてきた。しかし、抜本的に駐車場を整備するということはなかった。過去2 年間では、北キャンパスの整備事業のために赤門からの車両の入構が不可能になり、プール南の西側門(通称、新門)からの入構という変更があり、道路環境の 整備にともない一部の駐車場が整理されたにとどまる。
管見の及ぶ限りでは、黒髪北地区に、はたしてどれだけの台数の車両が入構できるかという実地調査、推計、あるいは意見が提出されたことは ない。キャンパスの状況は各種の整備事業や新規建物の建設などで常時変動しており、この種の調査が極めて困難を究めることがわかる。従って次にのべる数量 はあくまでも推論であることを断っておく。
まず平成7年度の北地区の入構証発行枚数は601である。同じ時期の春の交通量調査から北地区での一日の平均入構証台数は388台であ る。ここから違反駐車の一日の平均台数15台を引くと373台になる。違反駐車は必ずしも駐車スペースから溢れた車を意味しないし、調査では駐車違反車は 許可書保持のものだけを集計しているため、違反駐車をしている不許可車両を計算に入れていない。この数をおよそ3割と見積ると26台が違反駐車をしている 計算になる。この3割には特に数量的な根拠はないが、経験的には著しく食い違ったものとは思えない。これを駐車スペースから溢れた台数として先の373台 より減じると347台となる。したがって駐車できる車の目安として350台程度と考えることにする。
一般的にいって黒髪北地区の駐車条件は劣悪であり、その3分の1程度のスペースが未舗装のままである。未舗装の駐車スペースには、教育・ 文・法・教養の共同駐車場のように巨大な樹木があり、舗装することには何らかの技術的配慮も必要になってくるものもある。また樹木の成長にともない従来2 台分のスペースがあるところが1台分しか確保できない、あるいは運転者が勝手に判断して、2台分のスペースを占有して駐車する事態も生じている。この原因 は車両入構者の意識の低さもさることながら、四輪駆動のRV車や大型のワゴン車と軽乗用車を同じ場所に駐車するというスペースの活用のまずさがあり、交通 対策における不備や指導の不徹底に起因するものである。
黒髪北地区では、不許可車両が全体の駐車台数に占めることも深刻な問題である。平成7年(1995)の秋の交通調査によると、黒髪南地区 では不許可車両の割合が、1割にどとまっているのに対して、黒髪北地区では台数にしてその3倍、北地区全体の駐車台数の3割が不許可車両で占めている(以 下の折れ線グラフと円グラフを参照:末尾に南北両地区の駐車総量のグラフを掲示)。
北地区のおよそ3台に1台は不許可車両が占めている。車が許可無しに入構できることは一般学生にはよく知られている事実である。そのた め、この駐車総数に対する不許可車両の入構は雨天の場合にはさらにエスカレートし、平成7年の秋の調査時の雨天の日(11月14日)には、入構総数の 39%が不許可車両であり、学生が多く利用するテニスコート西側の共同駐車場での不許可車両の比率は49%にも達した。この日の北地区に入構していた駐車 総数は518台である。これを先に試算した全体の収容台数を350台とすると、その収容力を遥かに超える148%の車が構内に溢れていた計算になる。
自動車で通勤する職員は臨時入構証の交付を受ける比率が圧倒的に高いと思われる。この事実は報告者の関係者への聞き取りによって確認し た。しかしながら、その日の臨時入構証による駐車の総数は、その日の前後と比べても、特別な変化はない(前日22台、当日29台、翌日34台)。つまり、 雨天時に臨時入構証で入構する車は増加しないし、職員がその日に限って車両で大量に登校した形跡はない。
この種の不許可車両の持ち主の多くは状況証拠から言って学生であることが推測される。これは不当なものとは言えない。報告者が直接に見聞 した体験にも合致する。入構証無しでも、ときに警告書を貼付されるリスクを承知で通学を繰り返す学生がおり、なかには臨時入構の手続きを知らない学生もい た。不許可入構をくり返す学生の間には、入構証制度は自分たちとは無縁のものと考えている者もいた。また臨時入構の申請が「わからない」と弁明する学生も いたが、このような返答は当該の学生が不許可入構であるという報告者の指摘に対する返答なので、それが真意によるものなのか言い訳なのかは分からない。
それ以上に深刻なのが違反駐車の問題である。違反駐車への警告を貼付する委員からは、度重なる貼付によっても一向に違反駐車を止めない車 両があることが報告されている。また、違反者のなかには、北地区の場所に一定の期間駐車し、取り締まりが厳しくなると別の場所を駐車場所を移動するという 悪質な常習者もいる。また、これは明らかに一部入構者のモラルの低下によるものであるが、教育学部東詰南側に位置する「くすのき会館」裏から教職員組合建 物横のようにもともと芝生であったスペースに恒常的に違反駐車され、原型をどどめないまでに破壊された例もある。
違反駐車は歩行者の安全を損ない環境を破壊するだけにはどとまらない。キャンパスへの誘導路の不整備とあいまって違反駐車によって災害時 に大型の緊急自動車が入構できないという事態も生じた(「熊大だより」77号、pp.30-31)。違反駐車はウィークデーの夜間に多く、またその時間帯 の違反駐車は車両数の絶対数は少ないものの、ほとんど緊急自動車が通行せざるを得ない場所に止められているのである。違反駐車は自分たちの都合のよい利便 な場所に無配慮に置かれており、入構証を携帯するものはほとんど皆無である。
つまり、入構証のある違反駐車と入構証を携帯しない違反駐車は根本的に質が異なる。したがって、入構証保持者や臨時入構者への啓発によっ てこの問題は解決しない。入構証を取得しようとしない入構車両を効率的にかつ物理的に排除することがその唯一の方法である。学内にはレッカー移動などに よってその状態を改善する方法はなく、また効率性の面から言っても、不正入構車両を水際で防止するほかはない。遮断機の導入の根拠はここにある。
1.3 門衛
現在、黒髪北地区には2人の門衛(正式には警備員)が、教養部正門と西側門(新門)の2つの門衛所に詰めており、構内に入構する交通の整 理にあたっている。門衛の業務は、現在、大学が契約している福岡ビルサービス株式会社熊本支店から派遣された2名の男性が担当している。北地区においてこ の人材派遣に年間に支出される費用は平成6年度(1994)契約分で2,505,000円である。平成6年度に我が大学と上記の業者の間で交換された「請 負契約書」によるとその業務時間および業務内容は次のようになっている。
[1]業務時間:土日ならびに祝祭日、開学記念日や休業日を除く、平日の午前8時から午後6時まで。
[2]業務内容:次の3項目である(全文)
(1)警備員は本仕様書及び熊本大学黒髪地区構内交通に関する要項に基づき、入出構車両を厳重にチェックするものとする。
(2)警備員は交通整理日誌を備え、毎日の交通整理の状況を記載し、翌日熊本大学担当係員の検印を受けること。
(3)警備員は臨時入構証の発行及び臨時入構証整理簿の記載を行うものとする。
業務にはその他として熊本大学担当係員の指示に従うものとするという項目もみられる。
門衛の業務については、交通対策委員会内部の意見だけでなく、一般職員からも「きちんと業務を遂行していないのではないか」という疑義が 出されることが過去にたびたびあった。しかし、請負契約書をみるかぎりでは業務内容のうちの(1)「厳重にチェックする」というあいまいな表現になってお り、旗を振るとか、必ず一旦停止させるなどの具体的な業務内容は指示されていない。(2)および(3)の内容は具体的にチェックすることができるが、門衛 所を一旦停止せずに通過する不許可車両の入構がある限りは、門衛業務の管理を強化しても、直接的な効果を期待することはできない。したがって「入出構車両 を厳重にチェックする」という条項により具体的な業務内容を説明し、その監督を行う責任が所轄の交通対策委員会つまり黒髪北地区部会にありる。そのため、 この点では交通対策委員会の職務怠慢であると指摘されてもそれを否めない。
従来、門衛の業務については、北地区部会の各委員の自発的な意思によって指導されてきたが、具体的に業務の細かい内容についての指導に関 する統一した見解が持たれることはなかった。平成6年(1994)11月に黒髪北地区での遮断機の導入が提案されたことを受けて北地区の交通環境小委員会 が検討し、それに対して否定的な見解が出されたが、その際に「ガードマン」により強力な権限の付与や業務内容のマニュアル作成などについて議論されたこと がある。しかしながら、平成7年(1995)に受け継がれた委員会では、それらの具体的な案についての話題は協議の過程でしばしば登場したが、現在にいた るまで具体的な案が提案されたことはない。
では門衛の業務は、委員会がマニュアルを作成して、それを遵守させることで交通対策上の効果をあげることができるだろうか。結論から先に 言うと、それはあまりにも甘い見解だといえよう。なぜならば、マニュアルを作成し、それを遵守してもらうにしても、その状況を交通対策委員は具体的に管理 監督しなければならない。マニュアルの作成は、門衛の業務を眼にみえるかたちで具体化させるかも知れないが、逆に、それをまた具体的に管理する必要性が生 じる。はたして、そのようなことを交通対策委員が自ら率先してできるだろうか?。他にも業務が多数あるのにもかかわらず。
ファストフード・ショップにおいてマニュアルによる業務の徹底が可能になったのは、従業員の職務が規格化されたことではなくて、従業員の 職務の内容が容易に把握することができ監督者によって容易に管理することができるようになったからである。マニュアルの作成は門衛の業務の管理の最初のス テップであり、また別の監督者による管理を設ける必要が生じる。そのような業務を交通対策委員が恒常的に業務することは、現状に鑑みれば期待することはで きない。マニュアル化は作るのは易しであるが、遵守させるためには別の労力を要求するのである。
マニュアルの作成以前に検討すべき課題がある。たとえば、実質的な管理規則である「熊本大学黒髪地区構内交通に関する要項」には、車両通 行門の開閉時間が午前7時から午後10時30分になっているのに、実際には守られていない。この事実はほとんどの委員が知らないかあるいは忘れられてい る。さらに、現実の運用に照らし合わせれば、「要項」そのものを改正する必要が生じることもあるかも知れない。門衛のマニュアル化の前に、現行の要項をよ り的確に運用し、改正すべき点は改正するというというのが本来のあり方ではないだろうか。
1.4 交通対策委員会
黒髪北地区の交通対策の責任者は「熊本大学黒髪地区交通対策委員会」である。この委員会に関する要項は熊本大学の学則に定められており、 現行のものは昭和59年(1984)に制定されたものがもとになっている。委員会は黒髪地区全体の交通対策のために設置されたものであり、北地区の交通対 策の実質的な責任者は、その要項によって規定された「北地区部会」である。実際に、黒髪地区の交通対策は北地区と南地区では、それぞれの部会でかなり自立 性のつよい組織権限をもっており、北地区と南地区の合同で行われる委員会の会合では、それぞれの部会で決定されたことは基本的に尊重され承認される傾向が ある。
その交通対策委員会の業務は次のように規定されている(第2条)。「(1)構内交通に関する実態調査、(2)構内交通対策の策定及びその 実施、(3)その他の構内交通に関する事項」である。実際に、春と秋の入構車両数の調査を、また誘導標識や路面表示の整備などの予算要求などの業務もおこ なっている。そして「熊本大学黒髪地区構内交通に関する要項」に記載されているように、違反駐車などの車両に対しては警告や退去などの勧告をおこなってい る。 このような活動に対する平成7年度(1995)における予算要求額は、黒髪地区全体で4,065,000円であり、そのうち黒髪北地区では 2,505,000円であり、この年度ではその全てが構内交通整理のために人件費にあてられていた。
むろん交通対策委員だけがこのような業務についているのではない。違反車両に対する警告や退去などの業務の多くに従事しているのは、各部 局の厚生係や庶務係の職員なのであり、この事実を忘れてはならない。この実務担当者の努力によって交通対策の業務が支えられている。とくに違反駐車につい ては、それぞれの担当部局のところに苦情が集中するために、その折りに違反駐車への警告文の貼付など業務を遂行していただいている。現場から聞かれる声 は、絶えざる警告文の貼付によっても違反駐車を根絶できないことへの失望と抜本的な対策を講ずる必要性である。言うまでもないことであるが、交通対策の費 用には職員に要求される付加的な労働やそれに関わる経費などは含まれていない。度重なる違反駐車への調査や警告文の貼付は、想像をはるかに超える労力がか かっていることを交通対策員はより自覚すべきである。なぜならば、そのような本来あってはならない「余計」な労働によって、それ以外の業務が支障を受けて いるならば、違反駐車への対策を現状のまま放棄することは、それ以上のより大きな問題を容認することになるからである。
1.5 交通対策の問題(まとめ)
まず基本的に確認すべきことは、交通対策というものには際限がないということである。一定の努力によって交通安全が確保されても、その安 全を脅かすものは常に存在する。キャンパス内での駐車問題や歩行者の安全の確保が達成されても、それを不断に維持する努力が必要になる。そしてキャンパス 内外に交通問題は遍在する。キャンパスが安全でもキャンパスの外に一歩出れば、危険が一杯ということでは何のための交通対策か分からない。
熊本大学では昨年においても単車による学生の死亡事故が発生している。むろんキャンパス内ではなく一般公道での事故であったのだが、それ らの学生が当該の単車を利用して通学していた可能性を考えるときに、黒髪地区における交通安全指導と全く交点をむすばないとは言い切れまい。そのような全 体的な交通安全を視野に入れて、交通対策を協議すべき必要がある。一貫した理念をもつと同時に、それを実現させる具体的な方策を講じる必要があるのだ。
先に述べた内容のなかで、黒髪北地区の交通対策には理念を成就させるための実際の運用がうまくいっていない、あるいは矛盾している幾つか の点があった。それをまとめると次のようになる。
[1]黒髪北地区において駐車場の収容台数についての客観的な資料がない。これは、そのような調査実績がないという事実だけでなく、不断 のキャンパス内の整備のために実質的にそれが算定しにくいという事情もあった。
[2]入構の総量規制が理念として掲げられているが、実際には入構証の発行枚数は例年ほぼ横ばい状態にある。この原因は、駐車スペースの 各部局によるテリトリー制であり、総量規制の理念を実行させるよりも、前年度実績を維持しようとする傾向によるものだと考えられる。
[3]黒髪北地区の総量規制の理念を保持するものと考えられる入構証制度は、平均で3割、天候と場所によれば最悪の事態で5割という高率 で大量で構内の駐車容量(350台)を超えると推定される(148%)、不許可車両によって脅威を受けている。不許可車両が高率であることは、適正な方法 で入構するすべての学生と職員ならびに外部入構者の権利を侵害しているといえる。
[4]交通対策上の不備は、たんに歩行者の安全にとどまらず大学の防災上の問題にまで実質的に影響している。平成7年に教育学部で生じた 不審火の際に不許可車両による違反駐車が緊急自動車の入構を妨げた。違反駐車を根絶することが防災の観点からみても最上の選択である。一般的に違反駐車の 多くは不許可入構車であり、夜間にその件数は増大する。違反駐車を防ぐ方法は、啓発などでは解決できず、不許可車両の入構を水際で阻止することである。
2 交通対策の抜本的改善
黒髪北地区における交通問題を抜本的に改善するためには、従来の交通対策の総合的な見直しが必要になる。それには遮断機の導入も含まれ る。この部分では、その根拠、導入後から必要になるソフト面での対応、導入に至るまでのタイムスケジュール、および遮断機以外の制御手段とその実効性など について述べる。
2.1 遮断機
平成6年(1994)11月にいたるまで交通対策委員会北地区部会では、黒髪北地区の交通対策の抜本的対策についてしばしば協議されてき た。実際、この間、黒髪南地区と類似した遮断機あるいは遮断機などの一旦停止装置の導入について議論されてきた。その経緯について、過去2年間の議事要録 から関連する議事について、本報告者が採集したものを以下に記してみよう。
【議事要録からの抜粋の要約】
・H5.6.10 文・法の2委員より武夫原~新体育館、赤門付近の違法駐車に対する抜本的対策の要請。
・H9.9.9 上記問題の対策が検討され「屋外環境整備計画」へ組み込みが了承。緊急車両入構門の駐車違反の取り締まりのために事務局に 申し入れを決定。
・H5.9.29 文学部2委員よりの申し入れの中に遮断機の設置への要請。遮断機導入には、導入にともなう影響を考えるべき等の意見がで て、それ以降の審議対象となる。
・H5.11.25 教育の委員により夜間・休日の不法駐車問題のなかで遮断機導入に関する意見交換がおこなわれる。
・H6.4.7 遮断機導入のメリット・デメリットに関する意見交換がおこなわれる。継続審議を交通環境小委員会に付託される。
・H6.9.1 部会長から遮断機導入に関する審議において結論を出すように要請があり、当該年度中に結論を出すことで了承された。
・H6.11.24 部会長から北地区での無許可車両の増加に際してキャンペーン等の必要性があるとの意見が提出される。交通環境小委員会 は遮断機導入は時期尚早の結論をだす。小委員会の答申に対して部会長は、それに代わる車両入構対策の必要性を提案。協議されたなかでの合意事項に、駐車整 理員の業務の徹底、および武夫原付近に駐車する学生に対する広報と指導を学生部を通しておこなうことなどがあった。
・H7.2.2 遮断機導入は時期尚早という結論を受けて、多数の意見交換がなされる。部会長によるまとめによると、交通整理員の有効活用 と指導強化、交通指導のマニュアル化、車両の一旦停止装置の設置を含めた検討の3点である。
ここでの議論の流れを要約すると次のようになる。まず遮断機の導入を含めて北地区の交通対策の抜本的対策は常に議論されてきたこと。遮断 機導入に関する議論は、北地区部会全体で審議されたのではなく、最終的に環境小委員会に付託されるようになった。環境小委員会はそれを受けたが、遮断機導 入には否定的な結論を出すに至った。付託された環境小委員会の結論は、必ずしも北地区部会の委員に当然視されたわけではないことは、その後の委員会におい ても、遮断機にかわる代替的手段についての議論が活発におこなわれていることでも明らかである。
環境小委員会の答申の内容は巻末の資料編に示したとおりであるが、そこでの議論の骨子は、[1]遮断機の導入は投下したコストに見合わな い、[2]遮断機に代替可能な方法があるので、それを試みた上で遮断機の導入を考えてもよい、というものである。ここで明らかにしたいことは次の点であ る。つまり[1]ここで言われた遮断機がコストに見合わないという結論の根拠は正当ではないということであり、もうひとつは[2]それ以降に遮断機に代替 可能な方法を黒髪北地区では試みられたことはないし、今後もその実践を期待することはできないということである。
結論から言えば、遮断機の導入は、これまでの黒髪地区交通対策委員会北地区部会の業務能力の範囲で最大の交通対策上の効果を上げることが できる唯一の手段であると言える。そもそもそのような費用と便益に関する議論をおこなうならば、現状の運営と効率性について議論すべきであるし、また交通 対策は費用と便益のバランスの議論には本来そぐわないものである。
また先回の遮断機導入という重要な議論が環境小委員会という下位の組織に付託されたということは、現時点で再考すれば適切な議事進行であ るとは言えず、北地区部会でさらに慎重に検討すべき問題であった。それは遮断機の導入案が環境小委員会で時期尚早であるという答申が出たあとでも、北地区 部会では善後策について提案されているからであり、また先にあげたように、環境小委員会の答申(文書1)そのものの結論の導出には一貫した論理がみられな いからである。
あるいは先行の議決を尊重して次のように言ってもよい。環境小委員会の答申を受けて北地区部会が承認した合意に基づいて言えば、現行の交 通対策では充分な効果があげられないという結論に達したので(本報告書の前半でその点については指摘したとおりである)、ここで報告者は遮断機の導入につ いて再提案をおこないたい。
ここで提案する。黒髪北地区における遮断機の利用法は黒髪南地区と同様のシステムでおこなう。つまり、(A)(B)(C)入構証の取得者 に対してはパスカードを実費で年度始めに申請の上で交付し、入構の際に機械に入れることをもって入構する。臨時入構の場合は臨時入構証(D)の交付申請を 窓口でおこない、トークンを受けそれを機械に投入して入構するシステムである。南地区と同様にする事由は、黒髪地区全体での交通管理システムを一元化し、 統合させるという理念にもとづくだけでなく、南地区での導入の経験やノウハウを活かして、迅速にかつ円滑に運用するためである。遮断機を導入する場所につ いては後述する。
もちろん遮断機導入だけをもって交通対策が決定的に改善するものではない。言いかえれば、この報告書に盛り込まれた対策の最終目的は遮断 機の導入の提案ではなく、遮断機の導入を前提とした総合的な対策の指針を提示することにある。これも次節で触れるが、大学会館および武夫原の利用者のため に別個の入構利用証を導入する。また駐車スペースの部局ごとのテリトリー制を廃し北地区の入構証であれば、その構内の駐車場のすべてを利用できるように改 善する。また入構証の審査基準ガイドラインを新たに設定し直し、審査を公正かつ厳格に運用する。入構証の資格区分、すなわち職員、非常勤および学外者、学 生による審査カテゴリーは、それを保持するが、入構証の規格は統一規格のものを導入し、経費の節減をはかる。遮断機の導入のために学内の意見を聴取するだ けでなく、広範な議論を求め、一定期間の審議が不可欠であると考える。少なくとも遮断機導入案は、学内の交通対策に関する様々な議論を呼ぶことであろう し、そのような議論を招来することも北地区部会の責務であると考える。北地区部会は、その下位の小委員会にその審議をゆだねるのではなく、あくまでも部会 全体のみならず、それぞれの部局の意見を聴取することを通して、黒髪北地区の全体の交通状況の改善に努めるべきである。
2.2 遮断機導入が招く問題への対処
交通制御の手段として遮断機の導入は理想的なものと言えるが、さまざまな問題が予想される。これらの問題の中には遮断機の導入を妄信に近 いかたちで拒絶する非論理的なものから、黒髪北地区における特殊事情に鑑みた現実的で確実性の高いものまで、さまざまなレベルのものがある。個別の問題や 疑問について以下に検討してみる。
[1]トークンの門衛での配布は外来者には煩瑣であるか?
大学を含めた社会に開かれた公共施設へのアクセスは、一般的な社会通念によると公共交通を利用することを前提に考えられている。熊本市内 では公共交通が発達しているにもかかわらず、歩道の未整備や交通渋滞等などで車両を利用することも止む終えないこともある。しかしながら、公共交通を利用 して大学にアクセスしてもらう努力を怠ってはならない。そのために止む終えなく車両で大学にアクセスする車両には臨時入構証などを交付して対応にあたって いる。とくに、その事由を事前に把握できない場合は、このような方法は避けられないことは当然である。したがって、これをもってトークン利用による入構は 煩瑣であると利用者の間で不満が生じても、それはいたしかたのないことである。公共交通を利用する人にくらべて、車両入構者はより便益を受けているからで ある。
なお、パスカードの交付費用は個人負担であるが、それはあくまでの受益者の負担であることは当然である。郵便の集配やゴミ回収、あるいは 身障者等、車両の利用が不可欠で、公益や公共福祉に鑑みて妥当なものには、無料等の対応を講じる必要がある。
[2]トークンの利用は門衛の業務を軽減するには至らないか?
南地区での教訓にもとづいてトークンは門衛で管理することがふさわしい。すなわち臨時入構証の交付と同時にトークンを渡し、それによって 機械に入れることで入構を可能にする方法である。遮断機の導入は門衛の業務を軽減させることをねらって行うのではない。むしろ、門衛が外来者のトークンの 要求に際して業務を行わざるを得ない状況を生じさせることによって、門衛に具体的な業務させることができる。すくなくともこのような措置によって門衛の要 員は1名減が可能になり、年間約125万円(平成7年度実績からの試算)が節約できることになる。すくなくとも、門衛2名が教養部正門と西側門(新門)に 張り付きながら実質的に不許可車両の入構を阻止できていない現状に比べれば、これは大幅な改善になる。また、一部の意見にあるように、機械化イコール無人 化ということをこの提案は意味しない。機械化によって人件費が削減できると同時に適切な労務管理ができるという点にある。
ただし、この新システム導入後には改善の余地が生じるかもしれない。例えば、(a)門衛の一時的な不在への対応をどうするかであり、ある いは逆に(b)常時いる場合においてもトークンをいちいち手渡すのかということへの疑問である。これに対する対応としては次のようなことが考えられる。つ まり(a)門衛の不在時には、セルフサービスで記帳とトークンを取得できるようにする、という方法を併存する。また(b)遮断機の手前での入構待ちの車を 軽減することも含めて、ゲートの直前にインターホンを設置し、門衛はボタン操作等で当該の車を入構させてから後に、入構簿への記帳と臨時入構証を交付す る、という方法を採用することである。これらの措置によって柔軟に対応することができる。
[3]午前8時以前の早朝、午後6時以降の夜間、土日等の休日への対応
遮断機の導入案が協議されると必ず、問題になるのが表記時間帯の入構問題である。本報告書に盛り込まれた導入案においてはそれを部分的に 開放することによって、この問題をクリアできると考える。つまり、教養部正門は、早朝、深夜および休日においても平日の通常時間帯と同様に機械を稼働さ せ、事前取得のパスカードおよびトークンでの入構を受け入れさせる。他方、西側門(新門)は、平常時間帯以外の時間は遮断機のバーを上げて、車両の入出構 をパスカードやトークンなしで可能にするということである。
もちろん、このような措置にともなってさまざまな付加的な作業が必要になる。まずそのような事態は、今日における休日や夜間の北地区の新 門から武夫原にかけての違反駐車の改善には直接にはつながらないために、次のような新しい措置をとる。大学サークル棟、クラブハウスおよび武夫原利用の学 生に対しては、各年度ごとに申請者に対して早朝および夜間の北地区の入構利用証を新規に作成し、これを交付する。この利用証もまた別途にその申請、審査、 交付をおこなう。この交付に関する諸手続は学生部がおこない、交通対策委員会は発行枚数や運用状況の管理監督を担当する。また臨時の利用証の交付は学生の 場合は、それぞれの部局の厚生係が臨時入構証と同様な使い捨てのものを交付する業務を担当する。外来者の場合は本部を通して学生部が担当する。つまり、こ の制度を導入し、一定の手続きをとれば夜間および休日の駐車場の公正な利用が可能となることを学生に啓発するのである。利用証のない車の取り締まりと、違 反駐車をおこなったものへの利用証の取り消しによって、啓発指導活動を明確にすることができる。
これに伴い、これまでの各部局による駐車場のテリトリー制もまた見直される必要がある。入構証発行枚数を再検討し、駐車場の容量ならびに 各部局での割当量を公正に算定しなおす必要性がある。各部局での発行可能枚数を、それぞれの部局の権利として確保し、かつ審査や認定をそれぞれの部局の判 断にゆだねる他は、北地区の入構証をもって構内のどの駐車場にも駐車を可能にする。このことによって、部局間の駐車問題の不均衡を軽減することができ、か つ利用者への便宜をはかることができる。
[4]遮断機によって「開かれた大学」のイメージは損なわれるか?
遮断機の導入の提案に際して、かならず出てくる伝統的反対意見のなかに、「開かれた大学のイメージ」が損なわれるという主張がある。しか し、この批判は人びとの漠然としたイメージ訴えるアジテーション以外のなにものでもない。なぜならば、そもそも「開かれた大学」がいったいどのようなもの であるか、という前提がこの種の議論は触れていないからである。遮断機の導入を行う根拠は、大学が定めた正当な手続きを無視して入構する車両、とくにその ような車が構内で引き起こす交通安全ならびに防災上きわめて問題のある違反駐車を未然に防ぐためである。交通対策の技術的な問題を、それとは関係のない別 のイデオロギーにすり替えてはならない。
現行の手続きによっても、また遮断機導入後の手続きによっても、手続きをおこなえば、比較的に容易に入構ができるシステムになっているこ とが知られていない。このような合法的かつ正当な手続きを知らないために、きわめて残念なことであるが、学生や職員のなかには交通対策委員がなんからの特 権的な権利をもっていると誤解したり、便宜を図ってもらおうとする者がいることも確かである。しかし、大学の駐車場は正当な手続きをすれば、すべての人に 開かれているのである。
さらに、このような社会的イメージはいまだ調査されたことがない。つまり、そのようなコンセンサスがあると主張する者は、その客観的な証 拠を提示する必要がある。また仮に百歩譲って、「遮断機の導入」が人びとが抱く「大学のイメージ」を損なうものであったとして、そのことをもって交通対策 の有効な方策を断念する根拠にはならないだろう。遮断機は見る人に対してイメージや印象あるいは観賞価値を与えるオブジェではなく、正当な手続きによる入 構者の権利を守る機械にすぎない。人びとのあいまいな感情に訴えるアジテーションの論理は、遮断機の形や配色を「開かれた大学のイメージ」にふさわしいも のにすればよいというアジテーションと同様、奇妙な論理であることがわかる。
したがって遮断機の導入が「開かれた大学のイメージ」を損なうという主張を論理的に導きだすような根拠は存在しない。「開かれた大学」を 創造するためには、教育の理念や実践などの活動に関わる問題である。また、仮に交通対策上の措置がそのような「心理的効果」を生むものであったとしても、 それは交通対策委員会の責務の範囲を超えるものである。
[5]遮断機への妨害工作があったときにどうするのか?
「開かれた大学のイメージ」と同様に遮断機導入の意見に水をさすのが、導入後のバーの破壊や門衛所への投石などの破壊工作への危惧であ る。破壊活動は導入期の南地区でも経験された。また「開かれた大学」の論者同様、このような破壊をおこなうものの中には、遮断機を大学の管理強化のシンボ ルとみたり、エゴイズムから入構の邪魔と考えるものがいるやかも知れない。しかし、そのような「判断」は間違ったものである。それゆえに遮断機の導入には そのような誤った考えが流布しないように、交通対策委員会は対話と理解による交通対策をより一層推進する意味がある。
言うまでもないことだが、そのような暴力や不正が起こるからといって、交通問題の着手に躊躇するのは、そのような不正に屈することであ る。問題の原因が本学学生によるものでないことを祈らざるを得ないし、そのようなことは、本来あってはならないことである。また、仮に本学学生であるなら ばそのようなことが許されるであろうか。権力や権威をもってテロリズムを防ぐことはできない。テロリズムを防げるのは正義の施行によってのみである。
2.3 遮断機の仕様と導入までのスケジュール
遮断機は黒髪南地区と類似の仕様のものを教養部正門と西側門(新門)におく。機械の仕様を同様にする理由はすでに述べたとおりである。
門衛の常駐する教養部正門は、パスカードおよびトークンによる遮断機を設置し、先に述べたようにインターホンによる申し出によってゲート を開場させ、入構直後に臨時入構証を交付するシステムを採用する。入構が多い朝の時間帯で出構車のない場合は二車線を入構に確保するようにできるようにす る。
門衛が削減される西側門(新門)はパスカードのみの入構が可能になるシステムを導入し、臨時入構車は構内に入る以前に、教養部正門に向か うような掲示をおこなう。また西側門は午後6時から午前8時までゲートを開放状態にしておく。この措置にともなう交通状況の悪化への対応はすでに述べたと おりである。
かつて提案された教養部の東側門への遮断機の導入は、附属学校関連の歩行者の安全確保のためにこれをおこなわない。さらに、東側門は歩行 者の安全および緊急自動車の入構の確保のために、付近一帯を全面駐車禁止区域として新たに設定しなおす。
北地区部会は、このような遮断機の導入案が、黒髪北地区全体で議論されるようにスケジュールを組む必要がある。交通対策委員会においても 遮断機の導入に関して慎重な意見をもつ委員がいるために、そのような慎重あるいは反対意見の全学的な広がりを調査する必要がある。そしてそれを公正な観点 から吟味する必要がある。平成8年度の黒髪北地区部会でのスケジュールは次のようになる。
1.遮断機導入を前提とした北地区の抜本的な改革案について当該地区である北地区での全学的な協議を、平成8年度中に各部局に提案すると いう案件を採択する。平成8年3月
2.北地区部会の各委員は、上の案件をそれぞれの所属部局にもちかえり、遮断機導入のメリット・デメリットなどを説明し、学生および教職 員からの意見聴取をおこなう。委員はそのヒアリングの経過を定例の委員会において報告し協議する。平成8年4月から同年8年10月
3.北地区委員全員が出席する北地区全体の公聴会を開催する。平成8年11月
4.遮断機導入を前提とする交通対策案について結論を出す。北地区部会長は平成8年4月から12月までの議論の経過を踏まえ北地区部会全 員の投票によって決する。北地区の議決は黒髪地区の全体会議で必要な承認をえる。この一連の手続きは「熊本大学黒髪地区交通対策委員会要項」に準ずる。平 成9年1月。
5.上の案が可決された場合、次年度の予算要求にそれを実現させるための要求額を計上する。また、可決された事項は、それを次年度以降も 引き継ぐものとし、その間予算要求をくりかえすものとする。可決案の修正等については「熊本大学黒髪地区交通対策委員会要項」に準ずるものとする。平成9 年2月以降
3 遮断機以外の制御手段とその実効性
遮断機以外の制御手段についてはさまざまな角度から議論されてきたが、いかなるものも実際にはそれが実行に移されたことはない。
その理由は明らかである。つまり交通対策委員会の職務の多さである。入構証の審査と交付業務、春と秋の交通量調査や安全指導、学内の交通 安全のための施設整備、さらには個々の苦情を受けボランティア的におこなう警告用紙の貼付など、業務は多岐にわたり実際に十二分に機能しているといえる が、抜本的な交通対策にかける余裕がないのは事実である。また先に述べてきたように交通対策委員会は、さまざまな業務をもち、その業務の個別的な性格や職 務権限があいまいなために職務を円滑に遂行することが難しい組織である。
違反駐車が南地区の3倍にもおよぶ北地区の交通対策委員会の仕事は決して楽なものではない。その忙しさにかまけて十分な対応ができていな いのも事実である。遮断機導入案が討論を付託された環境小委員会結論を承認した後に、年度が更新したが、前年度の決定についても、それを守るか否かという ことのコンセンサスも得られることすらなかった。これによって状況はさらに悪化した。
どのような委員会でも同じようなものとは言えないが、増大する学内の諸行事のことを考えると、交通対策委員会そのものが定例の職務の遂行 で手が一杯になることもゆえなきことではない。そのような中で発生したのが平成7年夏の不審火である。ここで重要なことは、このような定例の行事の遂行に 気をとられている間に、北地区構内の交通事情が徐々に悪化していることに我々が初めて気がついたということである。
本報告者は本学に赴任してまだ2年に満たないし、またそれ以外の全学委員会の内容を知るわけでもない。しかし、現行の交通対策委員会には 潤沢な予算もまた強力な職務権限もない以上、門衛のマニュアル化などという小手先の改革だけではすまない状態になっていることは明らかである。マニュアル 化が功をもたらさないことはすでに先に述べたが、現在は閑居して不善をなす時期ではないと考える。
遮断機以外の制御手段には、先の門衛のマニュアル化、学内の交通対策の啓蒙、交通委員を動員した入出構の監視などの措置が考えられるが、 どれも交通対策委員あるいは大学の職員を動員しなければ実現できないようなものである。より明確なことはそのような対策を講じても、不許可車両の違反駐車 の防止には決め手を欠くものである。遮断機をとり入れ、入構証制度の見直しと学生に対する啓発活動を総合的に取り組まないかぎり、将来にわたって禍根を遺 すことになるのである。
4 資料編
【数量資料】
(統計1)黒髪北地区入構証発行枚数の実績
教育学部 法学部 文学部 教養部 学生部 附属図書館 文法事務 計
職員(A) 76 15 12 50 78 12 18 261
学生(B) 77 51 26 8 17 0 0 179
非常勤(C)42 1 0 60 56 2 0 161
合計 601
(コスト)
このようなコスト試算が、はたしてどのような意味があるのか、わからない。明白は事実はどのようなことにも交通対策にはコストがかかり、 一定の額は必要であるということである。遮断機導入に費用がかかるのは当たり前である。問題は、資金の投下に対して満足のいく対応ができるか否かで、金額 の相対的な大小ではない。
1)現行のコスト
2名の門衛の人件費 250万円
駐停車禁止や標識の設置費用 30万円※1
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合 計 280万円
2)遮断機のコスト
A)導入直後から6年間のコスト
1名の門衛の人件費 125万円
遮断機の年間使用料 300万円※2
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合 計 435万円※3
B)6年後以降のコスト
1名の門衛の人件費 125万円
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合 計 125万円※4
※1.これは平成7年度南地区での予算要求からの推定であり、北地区でも追加予算や緊急の対策の予算などで、この程度の配当がある。これは 厳密に言うと運用コストではない。しかしながら、北地区はこの種の路面表示や標識が多く数年間の間に破壊されたり放棄されているので、実質的な運用コスト として算出した。
※2.システムコスト1545万円を年率1.6-1.7%のリース保守契約を結んだ際の月額負担約25万円より試算。リースには保守および 損保により破損等のコストは免責額以上は会社負担になる。また、基礎工事および消耗品費は含まれない。
※3.コスト試算は現行の155万円増になる。
※4.コスト試算は現行の155万円減になる。