授業計画案 「文化人類学」(2022-♾)
Introduction to Cultural Anthropology
解説:池田光穂
授業担当者:池田光穂(Mitsuho
Ikeda) |
池田光穂 |
履修対象/Eligibility |
1年次以上 |
開講時期/Schedule |
(半期) |
講義室/Room |
(未定) |
講義題目/Course Name |
異文化への実践的理解にむけて:
Cultural Understanding for Others |
授業の目的と概要/Course
Objective |
■授業の目的と概要/Course
Objective: この授業では文化人類学全般にわたることを学びます。つまり(1)異文化や異民族への興味から出発し,(2)長期間にわたる現地調査(フィールドワー ク)という方法論の確立や文化を研究する様々な理論の誕生,そして最後に(3)グローバル・イシューと呼ばれる国際間での共通課題や難問(民族紛争,宗教 紛争,人種問題,人間の安全保障等)への取組みというテーマ群で構成される授業からなります。国際社会の中で文化を学ぶことの重要性は,文化は我々の意識 や行動を形づくる制限要因になると同時に,その文化の営みそのものに影響を与え変えることができることです。総合政策学部においてグローバル・イシューに 関心をもち〈グローバルに考えローカルに行動できる学生〉が自主的に〈問題にもとづく学習〉方法やスキルを〈持続可能状態〉を維持できることが,この授業 の目的です。 |
学習目標/Learning Goals |
■学習目標/Learning
Goals: 1.文化人類学にまつわる重要なキーワードや術語が授業ごとに2〜3語示されます(全期間で約30語彙程度)。授業が終わった時点で,その8割の用語につ いて理解し,君たちの友人——つまり同じくらいの理解力をもった学生——にわかりやすく説明することができるようになる。 2.初めて知った外交,紛争,国際関係に関する国内外のニュースフリップを見て,学んだ術語を発見した際には,必要な情報を入手できれば,文化人類学の理 論の内容について,門外漢の友人や家族に対して解説することができるようになる。 |
履修条件・受講条件
/Requirement; Prerequisite |
■履修条件・受講条件
/Requirement; Prerequisite: どなたでも受講可能です。ただし,教科書を利用しますので,細い引用等は板書を省略し,当該箇所を口頭により説明することがあります。日本語で授業しま すが,英語の教材(DVDや新聞資料)を一部利用します。 |
特記事項/Special Note |
ありません。 |
授業計画/Special
Plan (回)題目/Title:内容/Content |
■授業計画/Special
Plan (回)題目/Title:内容/Content 1.文化人類学への招待(導入部):授業運営のポリシー,講師自己紹介,そしてこの授業のスケジュール,授業における教師と学生の間の約束事などについて 解説します。教科書該当個所は(序章・9章)。 2.異文化の他者への興味を育んだ博物学が文化人類学をうまなかった理由:ダーウィンのビーグル号航海記の中には,コロンブスのアメリカ大陸の発見期のよ うな出会いがフエゴ島民との出会いとして再演される。ダーウィンの試みと文化人類学の営為とを比較する。教科書該当個所は(1章)。 3.米国文化人類学の父ボアズと文化相対主義誕生の関係:若きユダヤ人人類学者ボアズがフィールドワークで滞在したバフィン島からのヨーロッパの恋人への 便りの中にみられるイヌイットの人たちへの共感から,文化相対主義が生まれたことはよく知られていない。相対主義が他者への理解を通した自己への理解であ ることについて解説する。教科書該当個所は(2章)。参考文献(1)の7章。 4.マリノフスキーの機能主義の隠された側面:西太平洋のクラ交易を明らかにして近代経済学とは全く異質の互酬性原理を明らかにした彼のフィールドワーク と理論について考えます。教科書該当個所は(3章)。 5.盲目の老人オゴテメリから学ぶこと:フランスのダカール=ジプチ探検隊の調査隊長グリオールは盲目の老人から呼び出しを受け西アフリカ・ドゴンの宇宙 論的哲学に眼を開かれます。奇妙な民族学的出会いの挿話の中に当該社会を「どのように理解するか?」という課題を検討します。教科書該当個所は(4章)。 6.マーガレット・ミードとサモア島民:人類学のフィールドワークは限られた人からインタビューや観察を通して社会の全体像を組み立てます。このような方 法論は限られた資料から一般化するという誤りを引き起こす可能性があります。客観化の手続きや当事者の視点を反映する方法について考える(5章・11 章)。 7.『菊と刀』とフィールドワーク:対日戦争中に「敵国の国民性」についての調査を依頼され戦後の対日占領政策に大きな影響力をもったルース・ベネディク トのこの著作はフィールドワークなしに書かれましたが同時に日本文化研究の古典として重要な位置を占めています。教科書該当個所は(6章)。 8.構造主義人類学の奇妙なパラドクス:101歳で亡くなったレヴィ=ストロースは没後6年でもヒーローであり続けているが,その魅力は現地調査しない調 査者,抽象による実証,虚構のようなリアリズム等の撞着語法で表現されるものです。彼を通して構造主義について考える。教科書該当個所は(7章)。 9.社会劇とポイエーシス:ヴィクター・ターナはザンビアのンデンブ社会の秀逸な民族誌の書き手であると同時に社会劇における象徴の意味を追い続け,晩年 は演劇ワークショップに現地人の生活の視点を導入することについて考えました。教科書該当個所は(8章)。 10.首狩の意味?:フィリピンのイロンゴットは70年前まで首狩慣習を維持しつづけてきました。この服喪のために儀礼化した奇妙な慣習の「理解」が調査 者の「感情経験」を媒介にして解き明かされるエピソードに文化人類学の文化理解の教訓を読み取ります。当該箇所は(10章)。 11.文化のホット・イシュー1:文化と文明に関するトピックス。参考文献(1)の1,2,4,10章。 12.文化のホット・イシュー2:ネイションとナショナリズムに関するトピックス。参考文献(1)の3章。 13.文化のホット・イシュー3:人種と民族に関するトピックス。参考文献(1)の8章。 14.文化のホット・イシュー4:伝統の創造と,想像の共同体論。参考文献(1)の3,5章。 15.私たちの文化と未来について(結論):この授業で考えてきたことをまとめます。 |
授業形態/Type of Class: |
■授業形態/Type of
Class: 講義。ただし受講者人数によりミニ・ディスカッションとプレゼン・フィードバックの実施も考慮します。 |
授業外における学習
/Independent Study Outside of Class |
授業外における学習
/Independent Study Outside of Class: 教科書の関連する箇所を指示しており,事前の読解や予習が必要です。復習では,授業で触れた重要なキーワードを,新聞記事DBやネットによるニュース検 索を通して事例を収集しておくと,次回の授業への取り組みへの励み(=学習者のインセンティブ)になります。 |
教科書・教材/Textbooks |
教科書・教材/Textbooks: 著者名/Author:太田好信・浜本満(編) 教科書名/Title:『メイキング文化人類学』 出版社名/Publisher:世界思想社(2005年) ISBNコード/ISBN:4790711021 |
参考文献/Reference |
■参考文献/Reference: (1)鏡味治也『キーコンセプト文化』世界思想社,2010年 ISBN: 9784790714934 (2)Merryl Wyn Davies & Piero, Introducing anthropology. London: Icon., 2010 ISBN: 9781848311688 |
成績評価/Grading Policy |
■成績評価/Grading
Policy: 8割以上の出席を義務づけます。予習を伴った出席(10%),レポート(20%),最終試験(70%) |
コメント/Other Remarks |
■コメント/Other
Remarks: 文化人類学を学ぶための資料は多言語・多文化領域にわたっている。しかし,どの言語においても確実な資料分析能力すなわち読解力が欠かせない。授業スケ ジュールに従い教科書を精読し,かつ関連文献を入手し短期間に読解することが必要になります。毎回の予習を通して教科書に書かれていることを十全に理解す ることが,最初の学習目標です。次に授業で話されること,議論されたことを記録しまとめる(=書く)能力を養いましょう。授業終了後に,興味をもったテー マについて短いエッセーを書く習慣をつけること,これが二番目の学習目標です。授業ではこの2つを常に心がけるようにしてください。 |
キーワード/Keywords |
■キーワード/Keywords:文
化,民族,社会,他者,異民族,異文化,フィールドワーク |
受講生へのメッセージ/Messages
to Prospective Students |
■受講生へのメッセージ
/Messages to Prospective Students: 私の専門分野は,国際協力に関する医療人類学や開発人類学という学問で,主たるフィールドはラテンアメリカ,東南アジアおよび日本です。私の文化人類学 に関する知識は,開発協力(JICAなどのODA),またグアテマラ内戦やその後の先住民運動の研究を通して,8年近く(国際間ならびに地域の)紛争解決 についての知識を得てきました。したがって,私の文化人類学へのアプローチは理論によるトップダウン・アプローチよりも,地域におけるミクロな事例研究を 積み重ねるボトムアップ・アプローチによるものです。そこで明らかになるのは文化研究の可能性と限界を明らかにすることです。しかし,地球丸ごとを神の眼 でみるようなことは誰にもできません。言うまでもなく文化人類学は,現地調査(フィールドワーク)と通して,現地の人と共に生活し,同じものを考え,対話 を通して「現地の人が考える」ように調査者もまた追体験できるようにすることを理想にしています。各授業のタイトルや内容はいささか抽象的ですが,そこに いたる経験やエピソードは極めてドラマチックなものです。退屈しないようにエピソード交えて,興味深い授業を構成します。 |
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