薬物使用等の罪を犯した人に対する刑の一部執行猶予制度
Partial suspension of execution of the
sentence for those who have committed crimes such as drug use
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1 はじめに 刑務所を出所した人等の中には,再び犯罪をすることなく,社会で立ち直るために,出所後も比較的長い間支援を続けていくことが必要な人がいます。特に,違 法薬物の使用などを繰り返す人については,薬物依存症という病気が原因の場合が少なくないため、地域社会での支援につながることが大切であると言われてい ます。 平成28年6月から始まった刑の一部の執行猶予制度は,こうした人たちに対応するもので,裁判所での判決時点で,刑務所に収容される期間に続けて,社会内での見守りの期間を定めておくものです。 平成30年6月現在,刑の一部の執行猶予の言渡しを受けることになった理由が違法薬物の使用や所持である人がほとんどである状況を踏まえ,ここでは特に, 刑事施設における処遇に引き続き,違法薬物の使用や所持などにより保護観察を受けることになった人に対して保護観察所が行う指導や支援について簡単にご紹 介します。 https://www.ncasa-japan.jp/policy/suspended |
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2 刑の一部の執行猶予者を含む薬物事犯者に対する保護観察所の取組 保護観察所においては,違法薬物の使用などにより保護観察を受けることになった人は,犯罪をした人であると同時に,薬物依存症である場合が少なくないた め,薬物を使用しないよう指導するだけでなく,薬物依存症からの回復に向けた治療・支援を継続的に受けられるよう,主に以下のような指導や支援をしていま す。 (1) 薬物再乱用防止プログラム 再び薬物を乱用しないよう具体的な方法を習得すること等を目的として,認知行動療法を基盤に作成した全5回の「コアプログラム」と,その後に行う「ステッ プアッププログラム」から構成されています。「コアプログラム」は,依存性薬物の悪影響と依存性を認識させ,自己の問題性について理解するとともに,再び 乱用しないようにするための具体的な方法を習得するという内容になっています。ここでは,一人ひとりが自分自身を振り返り,薬物使用を誘発するきっかけ や,薬物を止め続けるための状況や場所などを考えたりするほか,自分に合った再発防止計画を作成したりします。 「ステップアッププログラム」は,コアプログラムで学んだ内容の定着を図りつつ,薬物依存からの回復のための発展的な知識及びスキルを習得する内容になっ ています。ここでは,アルコールの問題を取り上げたり,自助グループの紹介をしたりするほか,外部の専門機関や民間支援団体の見学なども行います。 また,プログラムと併せて簡易薬物検出検査を行っています。これは,取締りを目的としたものではなく,断薬に向けた受検者自身の自主的な努力を支持することを目的としたものです。 (2) 薬物依存のある刑務所出所者等の支援に関する地域連携ガイドライン 刑事処分の対象となったことに伴う偏見や先入観をなくして支援対象者の薬物依存からの回復と社会復帰を支援するという共通認識を基本方針として,刑事施設 や保護観察所等の国の機関だけでなく,地方公共団体や精神保健福祉センター等の公的機関,依存症治療拠点機関等の医療機関,ダルク等の民間支援団体等と いった関係機関・団体等の連携の方針を示したものです。このガイドラインに沿いつつ,地域の個別事情に鑑みながら,受刑中から保護観察終了後までを見据 え,切れ目なく支援するよう取り組んでいます。 (3) 家族会の開催 違法薬物の使用などをした人に限らず,犯罪等をした人の立ち直りには,ご家族等の支え手の存在が重要です。保護観察所においては,ご家族等が本人の立ち直 りを支援していくために必要と言われている薬物依存症について正しい知識を得ること,ご家族等が落ち着きと元気を取り戻すこと,本人への適切な関わりを学 ぶことを目的として,家族会を開催しています。 |
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3 おわりに 違法薬物の使用などにより保護観察を受けている人が,保護観察が終わった後も,薬物と縁のない生活を地域社会で続けていくため,保護観察所においては,そういった人たちが地域社会の支援者とつながっていけるよう,保護観察期間中から様々な取組を行っているところです。 これからも,保護観察所は再犯防止に向け,関係する機関や団体等と一緒に,薬物依存症の回復に向けた支援に取り組んでいきますので,ご理解・ご協力をお願いします。 |
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【定義】 ◆ 刑の一部の執行猶予制度 平成28年6月1日に施行された「刑法等の一部を改正する法律」及び「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」に基づくものであり,裁判所が3年以下の懲役又は禁錮の言渡しをする場合において,その刑の一部の執行を猶予できる制度です。 刑法において,刑の一部の執行猶予の対象となるのは,前に刑務所に服役したことがないなどのいわゆる「初入者」です。この場合,裁判所の裁量で,その猶予期間中,保護観察を付することができます。 また,薬物使用等の罪を犯した人については,初入者以外のいわゆる「累犯者」であっても,一部猶予の言渡しをすることができます。この場合,猶予の期間中,必ず保護観察に付されます。 「初入者」,「累犯者」のいずれであっても,裁判所において情状を考慮し,再犯を防ぐために必要かつ相当であると認められるときに,1年以上5年以下の期間,その刑の一部の執行を猶予することができます。 ◆ 更生保護 罪をした人や非行のある少年を社会の中で適切に処遇することにより,その再犯を防ぎ,非行をなくし,これらの人たちが自立し改善更生することを助けることで,個人と公共の福祉を増進しようとするものです。 ◆ 保護観察所 地方裁判所の所在地に置かれ,更生保護の第一線の実施機関として,保護観察等の事務を行っているところです。 ◆ 保護観察 犯罪をした人又は非行のある少年が,実社会の中でその健全な一員として更生するように,国の責任において指導監督及び補導援護を行うものです。 【定義】 「更生保護」とは http://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo01.html 「薬物依存のある刑務所出所者等の支援に関する地域連携ガイドライン」について http://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo02_00062.html |
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https://www.ncasa-japan.jp/policy/suspended |
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平成26年度受賞作品「刑の一部の執行猶予制度の運用の在り方」(日本刑事政策研究会) 優秀賞 「薬物使用者の社会内処遇におけるスポーツ分野による介入の提唱」 町田 亜希(作新学院大学経営学部 3年) 佳作 「性犯罪者に対する刑の一部執行猶予の運用について」 副田 将之(大阪市立大学大学院法学研究科法曹養成専攻 修了) 佳作 「『刑の一部の執行猶予制度の運用の在り方』に関する一考察 ~刑の一部の執行猶予制度の適用対象者論~」 松尾 剛行(北京大学法学院中国法修士課程 2年) 佳作 「日本での社会貢献活動の実施について」 中村 早希(三重大学人文学部 3年) |
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リ ンク
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