闘病記を書くことの意義
Meaningfulness of Storytelling one's Illness experience
柳田邦男(1992)をもとに、闘病記を書くことの意義にはつぎの6つの利点ないしは社会的機能が考えられよう(引用は星野 2012:6を参照にして池田が拡張した)
1.苦悩を癒す
2.肉親や友人へのメッセージ
3.死の受容や道程としての自分史への旅
4.自分が生きたことの証しの確認
5.同じ病者(=闘病者)への助言や情報提供
6.治療をうける闘病の経験からうまれる医療界への要望
7.同じ病者(=闘病者)とケア提供者へのエンパワメント
★闘病とは?
「普通、「癌です」と宣告されると「なんでこの私
が?」と思うものかもしれませんが、「癌」という病名は、今や「風邪」と並んでいたってポピュラーな病名なので、そう思ってしまうと「あ、そうですか」で
終わりです。「癌になるってのは、俺も普通の人間だな」と思い、その後で自分とは無関係で遠いところにいる癌に対して、「めんどくせェな、バカヤロォ!」
と罵りました。手術は何時間かかろうと医者の担当で、こっちは全身麻酔で意識を失っているだけだから、どうということはありません。「闘病」とは、医者が病に対してするもので、患者はおとなしく言うことを聞いていればいいのです。
「気を失う」は究極の言いなりで、だから私はその通りになっていましたが、面倒なのはその後です。十六時間かけて切り刻まれたものを前のように復旧させる
のが私の仕事で、そのための入院ですから「ああ、めんどくせェ!」です。タイの洞窟に閉じ込められた少年達と同じように、「地平線は遠い」のです。次回は
もっと苦難です」出典:橋本治(1948-2019)「遠い地平、低い視点:【第51回】闘病記、またしても」『ちくま』2018年10月号
■星野史雄(ほしの・ふみお)1952-2016
1952年秋田県生まれ。早稲田大学第一文学部中国文学科卒業。大学院修士課程修了。慶応義塾大学斯道(しどう)文庫嘱
託職員、大手予備校(河合塾?)私立医学部受験コース室長。東京家政大学非常勤講師。1997年、妻が乳がんで亡くなったことをきっかけに闘病記を集め始
め、1998年、闘病記専門古書店「パラメディカ」を開店。2010年7月、直腸がん(ステージ4)+肝転移が見つかり、8月に手術。大腸がんの闘病記を
過去に100冊以上読んでいた知識が、自身の闘病にも役に立っている。共同編著に『がん闘病記読書案内』。自らの闘病体験を記した『闘病記専門書店の店主
が、がんになって考えたこと』を2012年9月に産経新聞出版より出版。2016年4月19日逝去。
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