Ukraine, nation and ethnicity, 1910-1920
1921年にベルリンでロシア語の原著が出版されて います。1922年にスターリンは書記長になるので、この著者のような自由闊達な議論が、その後の露西亞では不可能だったでしょう。ただ、一人の独裁者だ けが奇矯なアファーマティブアクションの帝国をつくりあげたのですね。その意味では、露西亞的人格を体現するプーチン(Vladimir Vladimirovich Putin, 1952- )が、ウクライナの田舎者に対して当たり前の 露西亞エスノセントリズムで対応するのは、あまりにも、当たり前すぎて。この戦争完全にやる必要のなかった戦争で、戦争の引き金の理由を与えたのは、ゼレ ンスキー(Volodymyr Oleksandrovych Zelenskyy, 1947- )とNATOなんじゃないのではないかと、思えてしまうのです。
満鉄がロシア語原著(1921)から1930年に翻 訳しております——原著の著者スタンケーウィツチはボルシェビキ革命後の亡命人、大ロシア化同化政策はソビエト連邦の崩壊を導く危険性があり、なんらかの (多文化多民族共存の)連邦主義でしか、崩壊を食い止められないと主張しています。なんという先見の明でしょう?
ウクライナナショナリズムの強さがある一方で、政治
的オートノミーを作り出すためには政治組織の力が弱い。それゆえに、ロシアは軍事占領で対応せざるをえない。英仏からの介入で管理するためには、領土が大
きすぎる。ポーランドは地主など支配者の位置を占めているので、ウクライナナショナリズムの力にはなり得ない。結論とは、ロシアとの協調以外に選択肢なし
と、著者は論評しています。つまり100年前にきちんと報告されて、90年前に日本は翻訳して、その情報を日本は把握していたわけよ。結局、国際関係論や
民族論の研究者って(歴史が変化しているのに)この1世紀なんの役にもたっていないわけ。
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◎アファーマティヴ・アクションの帝国 : ソ連の民族とナショナリズム、1923年~1939年(Martin, Terry (Terry Dean))
The affirmative action
empire : nations and nationalism in the Soviet Union, 1923-1939.
ソ連—アファーマティヴ・アクションの帝国
"In the popular imagination, the Soviet Union was always synonymous with Russia, but
in the U.S.S.R.'s early days Soviet leaders had a very different idea
in mind: they wanted to establish a true multinational, multi-ethnic
empire. To that end, they attacked Russian nationalism as a vestige of
Tsarism, and instituted a set of policies that looked very much like
affirmative action, enforcing the use of local languages and fostering
the development of ethnic leaders, even at the cost of discriminating
against Russians. Yet, as Martin shows in this fascinating history, simply giving an order was not enough, even in the Stalin years, and the complex relationship between socialism and nationalism in places like Ukraine often frustrated Soviet intentions. More important, ethnicity, once fostered, was frequently a counterweight to, rather than a bulwark of, Communist ideology; although
Stalin remained rhetorically committed to the multi-state idea, he
ended up terrorizing those ethnic leaders he saw as threats." - Book revies of "The Affirmative Action Empire," 2002.
第1部 アファーマティヴ・アクション帝国の始動(境界と民族紛争;言語のウクライナ化(一九二三年〜三二年);ソ連東方のアファーマティヴ・アクション(一九二三年〜三二年);ラテン文字化キャンペーンと民族アイデンティティのシンボル政治)
第2部 アファーマティヴ・アクション帝国の政治危機(民族共産主義の政治力学(一九二三年〜三〇年);一九三三年の飢饉に民族を見る)
第3部 アファーマティヴ・アクション帝国の修正(民族浄化と敵性民族;修正されるソ連の民族政策(一九三三年〜三九年);再浮上するロシア;諸民族の友好)
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