かならずよんで ね!

ヴァイスマンのバリアー

Weismann barrier

アウグスト・ヴァイスマンの生殖細胞質説の図。遺伝物質である生殖質は生殖腺に限定される。体細胞は生殖質から各世代で新たに発生する。その細胞に何が起ころうとも、次の世代に影響を与えることはない。

池田光穂

「ヴァイスマンは1883年、生殖質説を提唱した [2]。それによれば、多細胞生物では遺伝は生殖細胞、つまり精子や卵子のようなものによってのみ引き起こされる。彼がソーマ細胞と呼んだそれ以外の体細 胞は遺伝には関係しない。影響は一方通行である。すなわち生殖細胞は多くの生殖細胞と体細胞を作るが、生殖細胞は体細胞がその生涯で得たいかなる変化から も影響を受けない。遺伝情報は体から生殖細胞に伝わることはなく、従って次世代に受け継がれることはない。これをヴァイスマンバリアと呼ぶ。これがもし正 しければ、ジャン=バティスト・ラマルクによって提案され、ダーウィン自身もあり得ると考えていた獲得形質遺伝説は棄却される。しかしそれは単なるアイ ディアであり、実証的な実験が必要だと考えた。彼はもちろん、複雑で高度な現代遺伝学のことは全く知らなかったが、体から生殖細胞系列に情報の伝達が行わ れないことを実験で示そうと試みた。結果的に彼が示したのは獲得形質遺伝説に信頼できる証拠がないということであり、個体の主体性を重視するラマルキズム を否定できたわけではない。しかし生殖細胞と体細胞、個体発生と進化を区別するヴァイスマンのアイディアは総合説に基づく現在の進化生物学で一般的に受け 入れられている。」「アウグスト・ヴァイスマン」より)

アウグスト・ヴァイスマンが提唱した「ヴァイスマンのバリアー」は、チャールズ・ダーウィンが提唱したパンゲネシス(Pangenesis) の遺伝機構に対し、配偶子を生み出す「不死」の生殖細胞系列と「使い捨て」の体細胞を厳密に区別するものである。より正確には、遺伝情報は生殖細胞から体 細胞にのみ移動する(つまり、体細胞の突然変異は遺伝しない)。これは、タンパク質からDNAやRNAに順次情報が移動することはないとする分子生物学の セントラルドグマには言及しないが、いずれの仮説も遺伝子中心の生命観に関連する。ワイスマンはこの概念を1892年の著書Das Keimplasma: eine Theorie der Vererbung(胚芽質:継承の理論)で打ち出している。 ヴァイスマンの障壁は当時としては非常に重要なもので、他の影響もあって、ラマルク派のある種の概念を効果的に追放した。特に、身体(ソーマ)の変化から ラマルク派の遺伝を困難または不可能とするものであった。この理論は現在でも重要な位置を占めているが、遺伝子の水平伝播に関する現代の理解や、その他の 遺伝学、組織学の発展に照らして、修正が必要である。この理論は、20世紀初頭に遺伝学の概念がより洗練される以前の、19世紀末の生殖質説の文脈でよく 使われ、ヴァイスマン主義と呼ばれることもある。ヴァイスマン主義的発生(前形成的または後成的)を、体細胞胚発生とは異なる明確な生殖系列が存在するも のと呼ぶ著者もいる。このタイプの発生は、体細胞の死滅の進化と相関している(Weismann barrierより)。

Pangenesis


ダーウィンのパンゲネシス理論では、体のあらゆる部 位からジェムルという微粒子が放出され、それが生殖腺に移動して子孫に受け継がれると仮定されている。ジェミュールは、子孫が成熟するにつれて、関連する 身体部位に発達すると考えられていた。この説は、ラマルク説のように、生物の一生における身体の変化が遺伝することを意味している(Pangenesisより)

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