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アステカの生と死の女神

 Canisology sobre Xoloitzcuintli

池田光穂

「スペイン人による征服が始まるまで,現在のメキシ コとかなり重なる地域で支配力をふるっていたのが,メシーカ人のアステカ帝国である。メシーカ人はそれまでそれぞれに発展を遂げていた周辺各地の都市文化 を統合しようとした。特に信仰の面では,各地で崇められていた多様な神々の名称や機能を整理して,一つの大きな宗教体系を築こうとした。その途中でスペイ ン人によって帝国が滅ぼされてしまい,おかげで所属,定義,能力などが未整理だった神々が大混乱のままに放置された。そのような特殊な条件はあるが,以下 でアステカにおける死後の世界の構成やメカニズム,死を司る神々の役割について,かんたんに整理してみよう」(加藤薫 2012:15)。

「アステカでは,皇帝や首長といった最高権力者の場 合を除けば,「死」には二つのタイプがあった。一つは「名誉ある死」で,戦士や球技の選手などが獲得することができる。名誉ある死を遂げた男性は太陽神に 召され,そのもとで太陽の運行を助けるために数年間働く。この役務を終えると魂はハチドリの身体を借りて地上に民り,その後は何の憂いもなく,美しい木々 や花の間を飛び回って余命を過ごす。一方,女性にとって一番名誉ある死とは,元気な子どもを出産した直後に没することである。女性を生と死のサイクルを物 理的に体現した存在とみなしていた現れなのだろう。出産直後に死亡した女性は月の女神コヨルシャウキに召され月の運行を助ける仕事につく。月の地表に時折 見えるウサギの姿はコヨルシャウキに召された女性の化身であるとされた」(加藤薫 2012:15-16)。

「一つ目のタイプは自然死である。事故死とどのよう に区別されるのかやや曖昧だが,とにかく自然死を経た魂は,メキシコ原産のテベスクイントリ犬(チワワ犬の原種)に付き添われ,地下にある死の世界の入口 にたどりつく。その手前には川があり,犬は死者の魂が死の世界に無事に受け容れられる代償として,白らの命を捧げる。図像では犬が死者の肖像の仮面をつけていたり,犬の体と死者の顔が融合し て「人面犬」になっているものなどがある。死の世界に入った後自然死の死者の魂は9層ないし13層に分かれた地下世界ミクトランの各層にし かけられた試練を受けながら,順次下層に移動してゆく。各層の試練とは,いくら本を飲んでも渇きが収まらないサウナ風呂のような灼熱の世界,凍てつくよう な冷たい風の吹き荒れる寒風の世界,触れるだけで肉まで裂ける剃刀のように鋭い岩肌の山を登り下りする山岳の世界,ソチトナルと呼ばれる鰐に似た怪獣のい る水の世界などなどである。やっとの思いの世界にたどりつくとそこにはミクトラン全体を支配する男性格の神ミクトランテクトリと女性格の神ミクテカシワト ルが待っている。死者はこの男女神に供物を捧げようやく旅を終える」(加藤薫 2012:16)。

”Se trata de una pieza de Colima típica, tanto en su motivo (los perros fueron uno de los temas más comunes entre los alfareros de Colima) como en su acabado rojo altamente bruñido. La máscara que lleva el perro, sin embargo, hace pensar que se trata de un ser sobrenatural. ” Foto © Jorge Pérez de Lara- http://www.mesoweb.com/es/recursos/MNA/104.html

「アステカの死生観では,一つの死が次の生を再生さ せると考えられていた。ミクトランを司る男女神のうち女性格のミクテカシワトルはまた,生の再生のために地上にも現れる。ミクテカシワトルは地上に現れる とシウアテテオ,あるいはコアトリケと呼ばれ,大地の恵みを可る地母神として崇められる。世俗の世界では,ミクテカシワトルが生と死のサイクルを維持する ためにシウアテテオあるいはコアトリケとなって地上に現れると信じられた。図像表現としては,いずれも長く鋭い爪を持ち,首飾りと頭飾りをつけ,頭蓋骨を 属徴とする。ほかに暗闇を象徴する吸血コウモリなどの属徴を持つこともある」(加藤薫 2012:16)。

「アステカ帝国を築いたメシーカ人たちは,メキシコ 各地でローカルな地母神信仰の対象となっていたさまざまな図像を統合し,至高の存在にまで高め,生と死のすべてを司る女性格の神ミクテカシワトルのイメー ジを築きあげたと考えられる」(加藤薫 2012:16, 18)。

「ところで,スペイン語ではすべての名詞が男性形と 女性形に分かれている。「サンタ・ムエルテSanta Muerte」は女性形である。これは,先住民文化起源説を唱える人々の間でアステカの死と生を司る女性格の神「ミクテカシワトル—シウアテテオ—コアト リケ」の属性をサンタ・ムエルテが継承しているという暗黙の了解があったからだともいう」(加藤薫 2012:18)。

「ところで,スペイン語ではすべての名詞が男性形と 女性形に分かれている。「サンタ・ムエルテSanta Muerte」は女性形である。これは,先住民文化起源説を唱える人々の間でアステカの死と生を司る女性格の神「ミクテカシワトル—シウアテテオ—コアト リケ」の属性をサンタ・ムエルテが継承しているという暗黙の了解があったからだともいう」(加藤薫 2012:18)。

”Santa Muerte, Santísima Muerte o Muerte es una figura popular mexicana que personifica la muerte y es objeto de culto. Diversas iglesias como la católica, bautista, presbiteriana, metodista, entre otras, rechazan y condenan su veneración, considerándola diabólica.....En México, desde el año 2005(Dirección General de Asociaciones Religiosas (29 de abril de 2005)), al culto que promovía a la Santa Muerte se le canceló el registro constitutivo por la Secretaría de Gobernación de México (SEGOB) debido a que su adoración «desvía gravemente los fines establecidos en los estatutos de la ley de Asociaciones Religiosas y Culto Público de México». En ocasiones su culto es vinculado a distintos tipos de delincuencia como el narcotráfico, prostitución, asaltantes y personas de distintos estratos sociales que se dedican al comercio informal, ambulantaje o piratería.” - Santa Muerte

サリーナス政権期の1992年7月15日に施行され た宗教法人法(LEY DE ASOCIACIONES RELIGIOSAS Y CULTO PÚBLICO, Última reforma publicada DOF 17-12-2015)により、宗教団体による政府登録制度がはじまる。サンタムエルテ

2003年にダヴィド・ロモ・ギュレン司教——カソ リックの正式な聖職者ではないという主張も多くある。井上大介氏が2010年2月18日にインタビューしている(井上 2012:35-42)——がサン タ・ ムエルテの信仰の承認を上記法令に従い政府に申請した(井上 2012:47)。しかし、そのことはこの教壇を異端視するバチカンより謹慎される(図像の後の記述を参照のこと)(加藤薫 2012:v)。また、2005年4月には教義ならびに諸儀礼が申請内容と齟齬するという理由で法人格が取り消される。2011年1月ロモ氏が誘拐犯に銀 行口座を提供したという嫌疑で教会関係者7名と共に逮捕される(井上 2012:48)。ロモ氏に66年の禁固刑が下ったという報道は、下記の『プロセ ソ』の記事のとおりである。

una imagen de Santa Muerte

"MÉXICO, D.F. (apro).- El juez 19 penal, Jorge González Tenorio, sentenció hoy a David Romo Guillén, líder de la Iglesia de la Santa Muerte, a 66 años de prisión y al pago de dos mil 666 días de salario mínimo de multa, equivalentes a 153 mil 188.36 pesos, luego de encontrarlo culpable de los delitos de robo simple, secuestro, y extorsión agravada cometida en pandilla." Dan 66 años de cárcel a líder de la Iglesia de la Santa Muerte - Proceso.com.Mex, 14 de junio, 2012. https://goo.gl/AqONXu

「アステカ帝国の首都テノチテイトランにはトラルシ コ(Tlalxico 「大地のへそ」の意)と呼ばれた神殿があった。このトラルシコという地名はメキシコ各地に散見される。人体における「へそ」は,外部と体内をつなぐ出入口 であり,地上と地下世界をつなぐ場所のメタファーでもある。メキシコ各地で報告されているサンタ・ムエルテに関する奇蹟譚や礼拝堂の設置場所などの地理的 条件を分析してみると,スペイン人到来以前にトラルシコと呼ばれていた土地,深い洞窟があった土地など,地下世界との通路とみなされたらしい聖域の近くで ある場合が多いようだ。またサンタ・ムエルテを幻視したと語る女性インフォーマントたちの多くが先住民の出自であることを強調する研究もある。それらの検 証は別の研究課題としておくが,先住民文化起源説では何よりも,そうした土着性が強調される(加藤薫 2012:18)。

(加藤薫 2012:15-16, 18)

リンク

文献


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ポンペイ遺跡のモザイクから

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