フォー ビギナーズ人類学
Introducing Anthropology: A Graphic Guide
■ 教科書(Cultural Anthropology Remix 協賛)
今回の教科書は Merryl Wyn Davies が著者、Piero がイラストレーターによる、その名も『人類学を紹介する(Introducing Anthropology)』出版社は Icon Books, 2002 です。8年後に改定されて、Merryl Wyn Davies and PIERO, Introducing Anthropology: A Graphic Guide, Icon Books Ltd., 2010.となりました。いわゆる啓蒙のためのイラスト・ブックです。カルスタもとい、カルチュラル・スタディーズのものは日本語に翻訳されているのでな いだろ うか。とってもおもしろい本です。文化人類学の現代の問題系にまでしっかり踏み込んでい ますが、そのことを 明確するために、人類学の歴史的ルーツに遡り考察するという姿 勢が貫かれています。つまり、骨太の人類学史の教科書ともいえるべきものです。
それが、な、なんと邦訳されました!!!
メリル・ウィン・デイビス『人類学』池田光穂+額田有美訳、現代書館、2021年10月 ISBN-13 : 978-4768401095
1 |
【I】人類学理論 人類学とはなにか? |
1. 人類学とは何か? | 1. 人類学とは何か? 〈アンソロポロジー〉という言葉は、ギリシャ語起源で、その字義どおりの意味は〈人(man)の研究〉ないし〈人の科学〉である。しかし、人類学(アンソ ロポロジー)の〈人〉は、特別な種類の〈人〉を指していた。 【台詞】学者(人類学者)「人類学は、歴史的にみれば〈未開人の研究〉だったんじゃ」 【台詞】アナザシ「俺はアナザシ。連中は俺のことを未開人と呼んだのさ」 |
|
2 |
「未開」とはなにか?(括弧でくくってい
るところが味噌!) |
2. 〈未開〉とは何か? | 2. 〈未開〉とは何か? アメリカ文化人類学の創始者フランツ・ボアズ(1858-1942)は、『未開人の心性』(1938)において、まさに誰が未開人であるのかを私たちに伝 えた。 【台詞】フランツ・ボアズ「未開人とは、その生活の諸形態において単純で共通のものが多くみられ、彼らの内容や形態が示す文化というものは貧弱で知的には それほど一貫性がないものじゃ」 【台詞】学者(人類学者)(ブロニスロー・マリノフスキー著『未開人の性生活』を開きながら)「その研究対象について、よりまともな定義をすると〈女を抱 く男=マンの研究〉という人類学のお定まりのジョークで表現されるもんじゃよ」 |
|
3 |
人間を研究する |
3.
人びとを研究する |
3. 人びとを研究する 人類学者は人びとを研究する。人類学者は、人びとがどのように生活しているのかということ、つまり人間社会の現在と過去を研究する。人類学は、現在そして 過去において、人びとについて考える人びとを私たちがどのように考えるかについての研究でもある。ときに人類学は、人びと、民族、複数形の文化と社会の間 での力関係や、植民地主義、そしてグローバル化についての研究である。 【台詞】アナザシ「人類学とは、・生物学的、文化的そして社会的観点からの人の研究・人間の文化的差異についての研究・人間文化と人間の本性についての一 般理論の探求・複数形の文化間の、類似性と差異についての比較分析なのだそうだよ」 ★【訳注】 アナザシの主張する人類学は、いわば「四分類人類学(総合人類学)」を指している。 |
|
4 |
人類学のビッグな問題! |
4.
人類学の大きな課題 |
4. 人類学の大きな課題 人類学にとって最大の課題は、研究対象をどのように語るかということである。未開、野蛮あるいは単純は、価値判断を伴う言葉であり、差別的で至上主義的で ある。しかし、人類学者が特に研究したいと思う人びとや、なぜそれらの人びとを研究したいのかということの根拠は、これらの言葉によって定義されてきた。 【台詞】フランツ・ボアズ「人類学的探究の根本精神は、人間文化のすべての形態を研究することの必要性を称賛するところにあるのだ。人間文化の多様な形態 は、それだけで、人間の発展の歴史、過去そして未来に光を当てることができるからなのだ」 【台詞】アナザシ「人類学者が学び、人類学によって教えようと試みているのは、現実の人びとを未開で野蛮で単純だと考えるときに誤っているのは何なのかと いうことらしいよ」 |
|
5 |
他者(別名「大文字の他者」) |
5.
他者 |
5. 他者 今日の人類学は、他者についての体系的な学問であり、その他の社会科学はすべて、ある意味においては、自己についての学問であると定義されている。しか し、誰が他者で誰が自己なのだろうか? 【台詞】アナザシ「他者は、自身のアイデンティティとは異なる、〈相互定義〉のために利用される誰かだよ」 【台詞】アナザシ「他者は、非西洋文化の民族ということだね」 デル・ハイムズは『人類学の再創造』(1969)のなかで「他者についての研究を専門とする、自立した学問(ディシプリン)のまさにその存在が、いつも何 かしら問題を含むものであった」と書き残した。 ★ 「文化人類学の研究対象とは〈他者〉である?! はたして、それは本当か?」 |
|
6 |
変化する問題 |
6.
変化する課題 |
6. 変化する課題 人類学がその〈課題〉にどのように取り組むのかということが、今や人類学内部での加熱した論争の主題である。これ以外にも2つのことが変化した。1つは、 他者の変化である。非西洋社会は、急速な社会変化を経験した。 【台詞】アナザシ「俺は、消滅してゆく高貴な未開人になることを拒否するぞ。俺は、自分が持っている諸権利と、あんたたちと同等に扱われる権利を要求する ぞ」 【台詞】プラカード「俺たちはマンハッタンを取り戻す!!」 もう1つの変化は、人類学がホームに戻って来たことである。人類学はもはや非西洋社会の文化だけの研究ではなくなっている。人類学者は、今や西洋社会の周 縁的(マージナルな)文化や、法人企業や科学者集団あるいは警察といった制度的で組織的な文化も研究する。 人類学は、これらの変化にどのように対処するのか?人類学は、人類学そのものの歴史や、過去から現在までの人類学者たちの前提や、過去から現在までの人類 学者たちの反応を研究する。そして、他者よりも自己について、人類学がより多くを私たちに教えてくれるものなのかどうかを試案するのである。 【台詞】アナザシ「つまり、複雑になったということだね」 「まず、人類学が何についての研究であるのかを示すのは困難である。次に、人類学を学ぶために何をしなければならないかが少しも明らかではない。そして、 人類学を学ぶことと人類学を実際に行うこととの違いを説明する方法は、おそらく誰も持ち合わせてはいない。」 ティム・インゴルド(アバディーン大学人類学教授) |
|
7 |
【II】人類学史 Part 1 人類学の起源 |
7.
人類学の起源 |
||
8 |
創設者たち(父なる創設者たち:The
Founding Fathers) |
8.
建学の父たち |
||
9 |
隠された項目(要するに啓蒙主義的系譜の
ことです) |
9.
隠された項目 |
||
10 |
ルネサンス期(前項を引き継いで) |
10.
リコナサンス(大航海)時代 |
||
11 |
「古きものへの忠誠」
("Fidelity to the Old") |
11.
〈古き時代への忠誠〉 |
||
12 |
人権の問題 |
12.
人権という問い |
||
13 |
イエズス会関連文書 |
13.
『イエズス会リレーションズ』 |
||
14 |
西洋思想の主潮 |
14.
西洋思考の主潮 |
||
15 |
伝統の連続性 |
15.
伝統の連続性 |
||
16 |
派生したマイナーな風潮 |
16.
派生したマイナーな風潮 |
||
17 |
帝国主義 |
17.
帝国主義 |
||
18 |
人類学の複雑性 |
18.
人類学の加担 |
||
19 |
倫理の違反 |
19.
倫理の冒涜 |
||
20 |
【III】人類学史 Part 2 ルーツに戻ると・・ |
20.
ルーツへの回帰 |
||
21 |
必要不可欠な未開 |
21.
必要不可欠な未開性 |
||
22 |
発明創発/でっち上げを思い描いて |
22.
創造についての推論 |
||
23 |
何が最初に人類に到来したか? |
23.
何が最初にあったのか? |
||
24 |
生きている残存物=遺風(Living
Relics) |
24.
現存する遺風 |
||
25 |
肘掛け椅子からの眺め |
25.
肘掛け椅子からの眺め |
||
26 |
進化主義の諸理論 |
26.
進化主義の諸理論 |
||
27 |
生物なるものと社会なるものを統合する |
27.
生物学的理論と社会的理論の統合 |
||
28 |
伝播主義の理論 |
28.
伝播主義理論 |
||
29 |
人種の詐欺(The Race
Spindle, 人種という名の詐欺、てな意味で しょうか?) |
29.
人種というペテン |
||
30 |
フィールド研究 |
30.
フィールド研究 |
||
31 |
人類学の樹 |
31.
人類学の樹 |
||
32 |
【IV】人類学の四大領域 自然人類学(Physicalであって Naturalぢゃないよ〜) |
32.
形質人類学 |
||
33 |
多元発生説《対》単元発生説 |
33.
多元発生説vs単一起源説 |
||
34 |
人間生態学と遺伝学 |
34.
人間生態学と遺伝学 |
||
35 |
社会生物学の隆盛 |
35.
社会生物学の隆盛 |
||
36 |
遺伝子理論における人種の再焦点化 |
36.
遺伝子理論のなかで再焦点化される人種 |
||
37 |
初期の人類学との別の関連性(リンク) |
37.
初期人類学との他のつながり |
||
38 |
考古学と物質文化 |
38.
考古学と物質文化 |
||
39 |
人類学的言語学 |
39.
人類学的言語学 |
||
40 |
社会/文化人類学 |
40.
社会/文化人類学 |
||
41 |
文化とは何か? |
41.
文化とは何か? |
||
42 |
専門領域への細分化
(Increasing Specialization) |
42.
専門領域の増加 |
||
43 |
民族誌の岩盤=基盤 |
43.
民族誌(エスノグラフィ)の根幹 |
||
44 |
異国人を書く(Writing the
Exotic) |
44.
エキゾチックを書く |
||
45 |
【V】ビッグマンたちとその方法 フランツ・ボアズ |
45.
フランツ・ボアズ |
||
46 |
ブロニスラウ・マリノフスキー |
46.
ブロニスロー・マリノフスキー |
||
47 |
フィールドワーク |
47.
フィールドワーク |
||
48 |
【VI】エコロジーとエコノミー フィールドワークにおける人間生態学 |
48.
フィールドワークの人間生態学 |
||
49 |
生態人類学 |
49.
生態人類学 |
||
50 |
経済の問題 |
50.
経済という問い |
||
51 |
ポトラッチ儀礼 |
51.
ポトラッチ儀式 |
||
52 |
ニューギニアの「ビッグ・メン」 |
52.
ニューギニアの〈ビッグマン〉たち |
||
53 |
クラ交換 |
53.
クラ交換 |
||
54 |
経済人類学 |
54.
経済人類学 |
||
55 |
交換と交易のネットワーク |
55.
交換と交易のネットワーク |
||
56 |
形式主義《対》実体主義論争 |
56.
形式主義者と実存主義者の論争 |
||
57 |
マルクス主義人類学 |
57.
マルクス主義人類学 |
||
58 |
マルクスの進化論的見解 |
58.
マルクス主義的進化論の見方 |
||
59 |
【VII】婚姻と親族と縁組理論 世帯単位(The Househould Unit) |
59.
世帯単位 |
||
60 |
家族の形態 |
60.
家族の形態 |
||
61 |
婚姻紐帯(The Marriage
Links) |
61.
結婚紐帯 |
||
62 |
婚資、あるいは婚礼[契約]資金 |
62.
結婚契約にかかる支払い |
||
63 |
親族の研究 |
63.
親族研究 |
||
64 |
親族記号 |
64.
親族コード |
||
65 |
類別的親族
(Classificatory kinship) |
65.
類別的親族 |
||
66 |
擬制的親族(fictive
kinship) |
66.
疑似的親族 |
||
67 |
出自理論(descent
theory) |
67.
出自理論 |
||
68 |
結婚と居住の規則 |
68.
結婚と居住の規則 |
||
69 |
親族用語 |
69.
親族の表現方法(イディオム) |
||
70 |
親族の「効用(use)」とは何か? |
70.
親族の〈効用〉とは何か? |
||
71 |
連帯理論と近親相姦の禁止 |
71.
縁組理論とインセストタブー |
||
72 |
心のなかの構造 |
72.
心(マインド)のなかの構造 |
||
73 |
基本的構造の形態 |
73.
基本構造の形態 |
||
74 |
縁組理論は本当にうまくいっているのか? |
74.
縁組理論は役に立つのか? |
||
75 |
【VIII】法と紛争処理 政治と法律 |
75.
政治と法 |
||
76 |
オマケの例 |
76.
その他の事例 |
||
77 |
用語法的研究 |
77.
用語法(ターミノロジー)的アプローチ |
||
78 |
政治人類学 |
78.
政治人類学 |
||
79 |
年齢階梯社会 |
79.
年齢階梯社会 |
||
80 |
共時的《対》通時的見解 |
80.
共時的視点vs通時的視点 |
||
81 |
他の社会階層化 |
81.
その他の社会階層 |
||
82 |
交渉するアイデンティティ |
82.
交渉するアイデンティティ |
||
83 |
エスニシティ(民族性)の諸問題 |
83.
エスニシティの諸問題 |
||
84 |
植民地主義 |
84.
植民地主義 |
||
85 |
反ー資本主義的人類学 |
85.
反-資本主義人類学 |
||
86 |
法の人類学 |
86.
法人類学 |
||
87 |
口論解決のメカニズム |
87.
係争処理のメカニズム |
||
88 |
【IX】宗教とシンボリズム 宗教 |
88.
宗教 |
||
89 |
シャーマニズムとカーゴ・カルト(積荷崇
拝) |
89.
シャーマニズムとカーゴカルト |
||
90 |
聖と俗 |
90.
聖と俗 |
||
91 |
魔術/呪術の人類学 |
91.
呪術の人類学 |
||
92 |
信念をめぐる論争 |
92.
信念についての論争 |
||
93 |
儀礼の検討 |
93.
儀礼の検証 |
||
94 |
通過儀礼 |
94.
通過儀礼 |
||
95 |
神話の研究 |
95.
神話研究 |
||
96 |
クロード・レヴィ=ストロース |
96.
クロード・レヴィ=ストロース |
||
97 |
二項対立と構造 |
97.
二項対立と構造 |
||
98 |
象徴とコミュニケーション |
98.
象徴(シンボル)とコミュニケーション |
||
99 |
象徴と社会過程 |
99.
象徴(シンボル)と社会プロセス |
||
100 |
アクター、メッセージ、コード(行為者/
伝達内容/暗号) |
100.
主体(アクター)、メッセージ、コード |
||
101 |
シンボリズムと新しい見解 |
101.
象徴主義と新たな視点 |
||
102 |
【X】芸術と表象 芸術の人類学 |
102.
芸術人類学 |
||
103 |
映像人類学 |
103.
映像人類学 |
||
104 |
消失してゆく世界 |
104.
消えゆく世界 |
||
105 |
新しい枝か?古い根っこか? |
105.
新たな枝派か?あるいは古根か? |
||
106 |
フィールド経験を書きたてる
(Writing up the field) |
106.
フィールドを書き上げる |
||
107 |
現在において書く |
107.
現在において書く |
||
108 |
【XI】論争・批判・内省 自己[回帰の]人類学(Auto- Anthropology) |
108.
自己回帰の人類学 |
||
109 |
二重のテポストラン、闘争的テポストラン |
109.
テポツォトラン論争/テポツォトランの2つの顔 |
||
110 |
テポストラン再訪 |
110.
テポツォトラン再訪 |
||
111 |
人類学とは科学なのか? |
111.
人類学は科学なのか? |
||
112 |
科学のふりをすること |
112.
見せかけの科学 |
||
113 |
インディアンは居留地を出る |
113. 保留地の外へ出たインディアンたち | ||
114 |
誰がインディアンのための語るのか? | 114. 誰がインディアンのために語るのか? | ||
115 |
神としての白人 |
115. 神としての白人 | ||
116 |
権威の神話 |
116. 権威神話 | ||
117 |
出来事の位相 |
117.
出来事の地平線 |
||
118 |
自己批判的人類学 |
118.
自己批判の人類学 |
||
119 |
人類学のヒーロー |
119.
人類学の英雄 |
||
120 |
ミード神話の没落 |
120.
ミード神話の崩壊 |
||
121 |
観察される観察者 |
121.
『観察される観察者』 |
||
122 |
粘土の足 |
122.
もろい基礎 |
||
123 |
自己投射の議論 |
123.
自己投射の問題 |
||
124 |
【XII】トラブルからの脱却 文化を書くこととポストモダニズム |
124.
文化を書くこととポストモダン |
||
125 |
ポストモダンの麻痺 |
125.
ポストモダンの無気力感 |
||
126 |
人類学における女性 |
126.
人類学の女性たち |
||
127 |
人類学者たちの親族紐帯 |
127.
人類学者の親族紐帯 |
||
128 |
フィールドの協力者 |
128.
フィールドの協力者 |
||
129 |
フェミニスト人類学 |
129.
フェミニスト人類学 |
||
130 |
フェミニスト人類学の位置づけ |
130.
フェミニスト人類学の位置付け |
||
131 |
未接触の人々 |
131.
穢れなき民 |
||
132 |
ヤノマモ・スキャンダル |
132.
ヤノマミ騒動(スキャンダル) |
||
133 |
内戦を創り出す |
133.
生み出される内乱 |
||
134 |
人類学はどこへゆく? |
134.
人類学はどこへ行く? |
||
** |
||||
リンク
文献
その他の情報
Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1996-2099