フォー ビギナーズ人類学
Introducing Anthropology: A Graphic Guide
■ 教科書(Cultural Anthropology Remix 協賛)
今回の教科書は Merryl Wyn Davies が著者、Piero がイラストレーターによる、その名も『人類学を紹介する(Introducing Anthropology)』出版社は Icon Books, 2002 です。8年後に改定されて、Merryl Wyn Davies and PIERO, Introducing Anthropology: A Graphic Guide, Icon Books Ltd., 2010.となりました。いわゆる啓蒙のためのイラスト・ブックです。カルスタもとい、カルチュラル・スタディーズのものは日本語に翻訳されているのでな いだろ うか。とってもおもしろい本です。文化人類学の現代の問題系にまでしっかり踏み込んでい ますが、そのことを 明確するために、人類学の歴史的ルーツに遡り考察するという姿 勢が貫かれています。つまり、骨太の人類学史の教科書ともいえるべきものです。
それが、な、なんと邦訳されました!!!
メリル・ウィン・デイビス『人類学』池田光穂+額田有美訳、現代書館、2021年10月 ISBN-13 : 978-4768401095
1 |
【I】人類学理論 人類学とはなにか? |
1. 人類学とは何か? | ||
2 |
「未開」とはなにか?(括弧でくくってい
るところが味噌!) |
2. 〈未開〉とは何か? | ||
3 |
人間を研究する |
3.
人びとを研究する |
||
4 |
人類学のビッグな問題! |
4.
人類学の大きな課題 |
||
5 |
他者(別名「大文字の他者」) |
5.
他者 |
||
6 |
変化する問題 |
6.
変化する課題 |
||
7 |
【II】人類学史 Part 1 人類学の起源 |
7.
人類学の起源 |
||
8 |
創設者たち(父なる創設者たち:The
Founding Fathers) |
8.
建学の父たち |
||
9 |
隠された項目(要するに啓蒙主義的系譜の
ことです) |
9.
隠された項目 |
||
10 |
ルネサンス期(前項を引き継いで) |
10.
リコナサンス(大航海)時代 |
||
11 |
「古きものへの忠誠」
("Fidelity to the Old") |
11.
〈古き時代への忠誠〉 |
||
12 |
人権の問題 |
12.
人権という問い |
||
13 |
イエズス会関連文書 |
13.
『イエズス会リレーションズ』 |
||
14 |
西洋思想の主潮 |
14.
西洋思考の主潮 |
||
15 |
伝統の連続性 |
15.
伝統の連続性 |
||
16 |
派生したマイナーな風潮 |
16.
派生したマイナーな風潮 |
||
17 |
帝国主義 |
17.
帝国主義 |
||
18 |
人類学の複雑性 |
18.
人類学の加担 |
||
19 |
倫理の違反 |
19.
倫理の冒涜 |
||
20 |
【III】人類学史 Part 2 ルーツに戻ると・・ |
20.
ルーツへの回帰 |
||
21 |
必要不可欠な未開 |
21.
必要不可欠な未開性 |
||
22 |
発明創発/でっち上げを思い描いて |
22.
創造についての推論 |
||
23 |
何が最初に人類に到来したか? |
23.
何が最初にあったのか? |
||
24 |
生きている残存物=遺風(Living
Relics) |
24.
現存する遺風 |
||
25 |
肘掛け椅子からの眺め |
25.
肘掛け椅子からの眺め |
||
26 |
進化主義の諸理論 |
26.
進化主義の諸理論 |
||
27 |
生物なるものと社会なるものを統合する |
27.
生物学的理論と社会的理論の統合 |
||
28 |
伝播主義の理論 |
28.
伝播主義理論 |
||
29 |
人種の詐欺(The Race
Spindle, 人種という名の詐欺、てな意味で しょうか?) |
29.
人種というペテン |
||
30 |
フィールド研究 |
30.
フィールド研究 |
||
31 |
人類学の樹 |
31.
人類学の樹 |
||
32 |
【IV】人類学の四大領域 自然人類学(Physicalであって Naturalぢゃないよ〜) |
32.
形質人類学 |
||
33 |
多元発生説《対》単元発生説 |
33.
多元発生説vs単一起源説 |
||
34 |
人間生態学と遺伝学 |
34.
人間生態学と遺伝学 |
||
35 |
社会生物学の隆盛 |
35.
社会生物学の隆盛 |
||
36 |
遺伝子理論における人種の再焦点化 |
36.
遺伝子理論のなかで再焦点化される人種 |
||
37 |
初期の人類学との別の関連性(リンク) |
37.
初期人類学との他のつながり |
||
38 |
考古学と物質文化 |
38.
考古学と物質文化 |
||
39 |
人類学的言語学 |
39.
人類学的言語学 |
||
40 |
社会/文化人類学 |
40.
社会/文化人類学 |
||
41 |
文化とは何か? |
41.
文化とは何か? |
||
42 |
専門領域への細分化
(Increasing Specialization) |
42.
専門領域の増加 |
||
43 |
民族誌の岩盤=基盤 |
43.
民族誌(エスノグラフィ)の根幹 |
||
44 |
異国人を書く(Writing the
Exotic) |
44.
エキゾチックを書く |
||
45 |
【V】ビッグマンたちとその方法 フランツ・ボアズ |
45.
フランツ・ボアズ |
||
46 |
ブロニスラウ・マリノフスキー |
46.
ブロニスロー・マリノフスキー |
||
47 |
フィールドワーク |
47.
フィールドワーク |
||
48 |
【VI】エコロジーとエコノミー フィールドワークにおける人間生態学 |
48.
フィールドワークの人間生態学 |
||
49 |
生態人類学 |
49.
生態人類学 |
||
50 |
経済の問題 |
50.
経済という問い |
||
51 |
ポトラッチ儀礼 |
51.
ポトラッチ儀式 |
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52 |
ニューギニアの「ビッグ・メン」 |
52.
ニューギニアの〈ビッグマン〉たち |
||
53 |
クラ交換 |
53.
クラ交換 |
||
54 |
経済人類学 |
54.
経済人類学 |
||
55 |
交換と交易のネットワーク |
55.
交換と交易のネットワーク |
||
56 |
形式主義《対》実体主義論争 |
56.
形式主義者と実存主義者の論争 |
||
57 |
マルクス主義人類学 |
57.
マルクス主義人類学 |
||
58 |
マルクスの進化論的見解 |
58.
マルクス主義的進化論の見方 |
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59 |
【VII】婚姻と親族と縁組理論 世帯単位(The Househould Unit) |
59.
世帯単位 |
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60 |
家族の形態 |
60.
家族の形態 |
||
61 |
婚姻紐帯(The Marriage
Links) |
61.
結婚紐帯 |
||
62 |
婚資、あるいは婚礼[契約]資金 |
62.
結婚契約にかかる支払い |
||
63 |
親族の研究 |
63.
親族研究 |
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64 |
親族記号 |
64.
親族コード |
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65 |
類別的親族
(Classificatory kinship) |
65.
類別的親族 |
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66 |
擬制的親族(fictive
kinship) |
66.
疑似的親族 |
||
67 |
出自理論(descent
theory) |
67.
出自理論 |
||
68 |
結婚と居住の規則 |
68.
結婚と居住の規則 |
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69 |
親族用語 |
69.
親族の表現方法(イディオム) |
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70 |
親族の「効用(use)」とは何か? |
70.
親族の〈効用〉とは何か? |
||
71 |
連帯理論と近親相姦の禁止 |
71.
縁組理論とインセストタブー |
||
72 |
心のなかの構造 |
72.
心(マインド)のなかの構造 |
||
73 |
基本的構造の形態 |
73.
基本構造の形態 |
||
74 |
縁組理論は本当にうまくいっているのか? |
74.
縁組理論は役に立つのか? |
||
75 |
【VIII】法と紛争処理 政治と法律 |
75.
政治と法 |
||
76 |
オマケの例 |
76.
その他の事例 |
||
77 |
用語法的研究 |
77.
用語法(ターミノロジー)的アプローチ |
||
78 |
政治人類学 |
78.
政治人類学 |
||
79 |
年齢階梯社会 |
79.
年齢階梯社会 |
||
80 |
共時的《対》通時的見解 |
80.
共時的視点vs通時的視点 |
||
81 |
他の社会階層化 |
81.
その他の社会階層 |
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82 |
交渉するアイデンティティ |
82.
交渉するアイデンティティ |
||
83 |
エスニシティ(民族性)の諸問題 |
83.
エスニシティの諸問題 |
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84 |
植民地主義 |
84.
植民地主義 |
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85 |
反ー資本主義的人類学 |
85.
反-資本主義人類学 |
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86 |
法の人類学 |
86.
法人類学 |
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87 |
口論解決のメカニズム |
87.
係争処理のメカニズム |
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88 |
【IX】宗教とシンボリズム 宗教 |
88.
宗教 |
88. 宗教 宗教的信念の研究は、人類学者にとって主要な関心分野であり、人類学者は多数の宗教的な組織や実践の形態を範疇化してきた。 【台詞】大木「アニミズムは、山や川、木に霊魂が宿っているとする信念だよ」 【台詞】動物「初期の多くの人類学者と同様に、E.B.タイラーは、アニミズムが最古の宗教形態だと指摘したんだ」 【台詞】E.B.タイラー「フェティシズムは、初期の人類学者のもう1つの関心事であった。人類学者は、「未開の」人びとが事物に呪術力を持たせたと考え ていたのだ」 物神性(fetishes)は存在するものの、それらは信念体系の基盤を形成するわけではない。 トーテミズムは、北アメリカの五大湖地方に住むオジブウェに由来する言葉である。トーテムは、動物種によって表象される霊的存在である。特定のトーテムが クランを象徴する。同じトーテムを共有する人びと同士は結婚できない。個人は自分自身の守護霊つまりトーテムを持っているが、それは特定の食物を摂ること が禁止されている:「あなたのトーテムを表象する動物をあなたは食べてはいけない」というぐあいに。トーテムのまた別の形態は、聖なる場所の霊魂に所属す るともいう。 レヴィ=ストロースは『トーテミズム』(1962)において、トーテミズム(トーテム信仰)というようなものは存在しないと主張した。 【台詞】レヴィ=ストロース「この用語は、1つの現象だけに使われるのではなく、さまざまな現象に使われている」——そして——「クランあるいは他の社会 集団の紋章である「トーテム」と、禁忌の食べ物や聖なる組織の射程を示す「トーテム」の違いは、大きく隔たっているのである」 |
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89 |
シャーマニズムとカーゴ・カルト(積荷崇
拝) |
89.
シャーマニズムとカーゴカルト |
89. シャーマニズムとカーゴカルト シャーマンは、人間世界と霊魂の世界、人間と動物、あるいは生者と死者の間を媒介する宗教的に熟練した人物である。 【台詞】シャーマン「「メディシン・マン」や「魔法使い」あるいは「呪医」というよりもシャーマンと呼ぶほうが政治的に正しい言い方なのじゃ」 【台詞】信者「カーゴカルト運動と千年王国運動は、世界の終末あるいは新たな世代の幕開けを現(うつつ)として見せてくれるのじゃー」 カーゴカルト(積荷崇拝)運動とは、第二次世界大戦後にメラネシアで流行した(千年王国運動の)名称である。(積荷)は西洋からやっていくる財を指す。い くつかのケースでは、預言者が登場し「カーゴ」をともなって祖先たちが再来しする日々がその目前に迫っており、到来する新たな時代では、白人ではなくネイ ティブの彼ら自身によって社会が統制されることを宣言したのだ。北アメリカにも同様の運動がおこり、それは土着運動あるいは宗教復興(リバイタリゼーショ ン)運動と名付けられた。 これら以外に、宗教の2つの基本的な形態があり、ひとつは多神教(1つ以上の神格の存在への信念)であり、他のひとつは一神教(ただ1つの神の存在への信 念)である。フランスの社会学者エミール・デュルケーム(1858-1917)はその著書『宗教生活の原初形態』でそれとは違った宗教の2つの見方につい て示した。まず最初は、機能主義的見方であり、宗教は、信念であり活動であるので、その機能によって定義されるというものだ。 【台詞】エミール・デュルケーム「宗教は、社会的結束を強める社会的な創造物である」——そして——「もうひとつは〈聖〉と〈俗〉という基本的な区別だ。 それは次のページで示したい」 |
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90 |
聖と俗 |
90.
聖と俗 |
90. 聖と俗 聖(sacred)は、通常の世界とは区別される。聖は儀礼と関連したタブーのように、隠され禁止された、あるいは特別な知識や実践を含んでいる。 【台詞】エミール・デュルケーム「聖は、呪術的な力や霊魂あるいは神格と関係しており、宗教的そして呪術的実践の両方に関係する可能性があるのだ」 俗(profane)は、日常の世界に属していて、日々の知識と実用的な実践を伴う。 【台詞】エミール・デュルケーム「俗は、日常生活、特に世俗的活動に関する物理的なモノと関連するのだよ」 |
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91 |
魔術/呪術の人類学 |
91.
呪術の人類学 |
91. 呪術の人類学 信念体系は、妖術(witchcraft)や邪術(sorcery)をも含むことが多く、ときにすべてまとめて呪術と称される。 【台詞】呪術師に扮した人類学者「妖術は、悪意のある呪術力を伴い、個人の性質に生まれつき備わっているのじゃ」 【台詞】妖術師「邪術は、悪意のある呪術力を伴い、生得的なものではなく、習得されるものよ」 E.E.エヴァンズ=プリチャード(1903-73)は、『アザンデの世界:妖術・託宣・呪術』(1937)という影響力の大きい業績を残した。ザンデ人 ※は、妖術に取り憑かれている人たちである。エヴァンズ=プリチャードによると、この信念はそれ自体の論理と合理性を持っている。妖術は、個人の幸運と不 運を説明するための、合理主義者がもつ原因と結果を超越した、もう1つの層(レイヤー)として作動する。 訳注:ザンデ語では、ザンデは単数表現で、集合的人格や社会をあらわすアザンデなので、人間をあらわす時は、ザンデ人、社会や民族としてはアザンデと呼ん でおく。 |
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92 |
信念をめぐる論争 |
92.
信念についての論争 |
92. 信念についての論争 エヴァンズ=プリチャードの研究は「あることを合理的なものとして信じるとは何か?」という論争において重要なものとなった※。この論争は、理性と合理性 の意味を問うものだった。この論争は、思考、信念、実践をそれ自身の文化的文脈のなかで、信じる者や実践する者の視点から理解するという文化相対性という 概念をうみだすことになった。 【台詞】エヴァンズ=プリチャード「西洋的見方を優越させる自民族中心主義、とりわけ〈現実〉の唯一の決定要素としての科学的、つまり道具的合理性をそれ (=文化相対主義)は浮き彫りにしたのだ」 ※訳注:これは、ウィトゲンシュタイン派のピーター・ウィンチによる議論が刺激になりなり、現在では合理性論争あるいは社会科学における合理性論争と呼ば れている。 |
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93 |
儀礼の検討 |
93.
儀礼の検証 |
93. 儀礼の検証 宗教は、儀礼を伴い、神話と象徴(シンボリズム)をとおして表現されやすい。これらはいずれも技芸(アート)の特徴か、その部分である。儀礼は、個人のラ イフサイクルにとって重要な社会的出来事ないし局面(ステージ)を印付けるものである。儀礼においては、信念体系が実行され、象徴的に規定され強化され る。そうすることで、信念体系が個人的かつ集団的な意味を行使あるいは構築するために差動する。 【台詞】エヴァンズ=プリチャード「儀礼は、個人ないしは集団的にアイデンティティを表現する」——そして——「儀礼は、社会的緊張状態や紛争を解決し、 解き放ち、あるいは社会的結束と連帯を促進するために役立つのだ」 |
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94 |
通過儀礼 |
94.
通過儀礼 |
94. 通過儀礼 アルノルト・ファン=ヘネップ(1873-1957)は、通過儀礼ついての有名な研究業績を残した。通過儀礼とは(成人式、結婚式、葬式など)個人の人生 における重要な出来事をしるしづける儀礼のことである。 名付け儀礼は、共同体のメンバーではない〈人ではない存在〉から共同体のメンバーという〈人としての存在〉移行をしるしづける儀礼である。 加入礼(イニシエーション)は、1つの地位から別の地位へ、例えば子どもから大人への移行をしるしづける儀礼である。 婚姻儀礼は、独身から既婚への移行をしるしづける儀礼である。 葬儀は、〈人としての存在〉から先祖へ、つまり現在の世界からそれを超越した世界への移行をしるしづける儀礼である。 すべての通過儀礼は、分離→移行→統合の3つの段階がある。分離は、儀礼に先立つ集団から離れ、その前の地位と儀礼の結果獲得される地位とのあいだの、空 間的で象徴的な距離というものをつくりだす。移行は、ラテン語でいう〈閾値〉の意味であるリミナルな(境界的)状態であり、儀礼行動の大部分活動に相当す る。移行期間と移行の実現は、危険であるか発展的であるかのいずれかである。 【台詞】聖職入門者「それ(分離)は、日常の逆転を含むことが多いんだ。許容されている活動ないし範疇(カテゴリー)が転覆するのさ。」 【台詞】聖職修行者「それ(移行)は、儀礼に参加するグループと個々人のあいだに特別なつながりを生み出すようなんだよ」 【台詞】聖職就任者「それは(統合)、新たな知識が伝えられ会得するようなんだよ」 儀礼の完了時におこなわれる、統合は、新たな状態を獲得した個人が社会へ再統合されることである。 |
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95 |
神話の研究 |
95.
神話研究 |
95. 神話研究 本来、神聖なものであるにせよ宗教的なものであるにせよ、神話というものは、個人的や逸話的というよりも、社会的な語りである。そして、自然、超自然、社 会文化なものであれ、神話は、事象の起源や創造について言及がある。神話は、特定の儀礼を表出するのだ。神話と儀礼は、共通の象徴的要素を共有し、創造的 かつ宗教的表現をするために両者は相補的な関係にある。 【台詞】マリノフスキー「ボアズ先生は、神話を、集団間の地域関係のガイドのごとくとらえ、文化と文化の特性に関する情報の貯蔵庫だとみていたのですね」 【台詞】ボアズ「マリノフスキー君は、神話を〈社会的行動のための憲章〉としてとらえ、人びとの慣習や行動することを説明し正当化するための合理的手段と 見たんだな」 |
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96 |
クロード・レヴィ=ストロース |
96.
クロード・レヴィ=ストロース |
96. クロード・レヴィ=ストロース 神話研究と最も関わりの深いフランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロース(1908-2009)は、法と哲学の学びから始めた。1934年に社会学を 教えるためにブラジルに渡り、最終的にはボロロ先住民の間でフィールドワークを行った。 【台詞】レヴィ=ストロース「神話は、思考の種類(タイプ)の1つであり、すべての人間文化と社会体系の基盤となる、普遍的な〈構造原理〉の実例なのであ る」 神話は、普遍的で文化的に特有な矛盾ないし対立が象徴的に調停され、解決されたり、それら自体を反映してきた。。対立は、レヴィ=ストロースの構造主義の 体系にとって極めて重要である。 Myth is used to reflect on and symbolically mediate or resolve universal and culturally specific contradictions or oppositions. |
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97 |
二項対立と構造 |
97.
二項対立と構造 |
97. 二項対立と構造 対立は、死と創造、母系と父系、生と熱など、二項(バイナリー)から成る。神話は、異なる象徴的要素を限りなく編成し、また再編成する。神話の異なる ヴァージョンは、神話的な知識と思考が常に創造され修正されていることを示している。レヴィ=ストロースにとって、文化の本質は構造であり、各々の文化は それ独自の配列ないし構造を持っている。これらの構造は、世界規模の体系の一部として存在し、その体系は、人類の物理的結合(psychic unity)を基盤として存在しうる、すべての構造から成るものである。 【台詞】レヴィ=ストロース「私の関心は社会の理想的な構造にあります。人類学者は、存在しうるすべての配列を抽象的に解きほぐすのです」 【台詞】アナザシ「だから構造には2つのかたちがあるんですよ。人類学者の心(マインド)のかたちと、研究対象の人びとの心(マインド)のかたちなのさ。 誰の思考が最も重要なのかしらね?」 |
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98 |
象徴とコミュニケーション |
98.
象徴(シンボル)とコミュニケーション |
98. シンボルとコミュニケーション シンボル(象徴)は、儀礼と神話についての議論の中心であり、意味とコミュニケーションに関する問い提起する。シンボリズムの研究は、象徴人類学や認知人 類学などとは異なるアプローチを展開した。その概念と用語法は、言語学と記号学からの借用していた。 【台詞】学者(人類学者)「だが、大いなる注意が必要じゃ。なぜならそれらは、違った書き手だと違った方法として使われるからじゃ」 【台詞】アナザシ「ははん!自分にとって都合がいいようにでっち上げるということね?」 |
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99 |
象徴と社会過程 |
99.
象徴(シンボル)と社会プロセス |
99. 象徴(シンボル)と社会プロセス マンチェスター学派の頭目であったヴィクター・ターナー(1920-83)は、社会過程の部分としてのシンボル(象徴)に焦点を当ててきた。「私たちは諸 記号をとおして社会を支配する……そして、シンボルをとおして私たち自身を支配する」のだと彼は指摘している。 【台詞】ナチに扮した人類学者「ターナーにとって、自然で感情的な意味とつながりのあるシンボルを際立たせるのは、動機だったのである」 【台詞】アナザシ「それゆえシンボルは恣意的に決まるわけじゃない」 ターナーは、コミュニタス(cmmunitas)という概念を導く。つまりシンボリズムをとおして接近することができる文化の創造的衝動ないしは始原の土 台をコミュニタスと提唱した。 |
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100 |
アクター、メッセージ、コード(行為者/
伝達内容/暗号) |
100.
主体(アクター)、メッセージ、コード |
100. アクター、メッセージ、コード シンボリズムへの人類学的アプローチは、メッセージよりもアクターが強調される、そしてコードよりもメッセージが強調される。ここで言うアクターとは、シ ンボリズムを採用したり関わったりする人格存在のことをさす。 【台詞】男性「「コード」とは、礼儀作法のような規範的規則のひとつのセットですな」 【台詞】別の男性「あるいは、1つの領域ないしは段階から別のそれらへの移し替えるための規則の一式ですな」——そして——「情報がパックされ運ばれ展開 される方法と、情報を形作り中身を示す方法は、互いに影響し合っておりますな」 グレゴリー・ベイトソン(1904-80)は、文化を情報の生成と伝達のためのメカニズムであるとした。彼は遊びとメタコミュニケーションという概念を紹 介した。シンボリズムにおける遊び、創造力、そして儀礼は、人びとの意識を拡大し再組織化する活動である。 |
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101 |
シンボリズムと新しい見解 |
101.
象徴主義と新たな視点 |
101. シンボリズムと新たな視点 シンボリズムの研究は、人類学の近年の展開において重要である。 ■デビッド・シュナイダー(1918-95)の象徴人類学(symbolic anthropology)は、文化を意味とシンボル(象徴)の全体的体系だと考える。シンボル(象徴)体系は、細々とした二項対立の部分に分割されるべ きではなく、経済、政治、親族、宗教といった社会組織の具体的な側面とつながっている。したがって、それは全体として研究されなければならない。 ■認知人類学は、2つの音を峻別する、つまり音声学(phonetics)と音素論(phonemic)を区別する考え方を言語学から借用している。言語 学のこの考え方が、普遍的要素を強調するエティックと、ある固有の文化で意味を持つ要素であるエミックと区別することになった。エティックが、〈客観的 な〉観察者にとって明らかな普遍的基準である一方、エミックは、特定の言語ないし文化のなかで意味を持つ対照基準である。このように考えると、文化は、概 念化の体系、つまり知識と概念の体系とされる。 ■解釈人類学は、エヴァンズ=プリチャードによるアザンデの妖術とヌアーの宗教についての研究から始まり、アメリカ合衆国の人類学者クリフォード・ギアー ツ(1926-2006)の研究と最も関連する。ギアーツは、テキストないしは為された文書としての文化体系の研究を提唱した。この研究は、エスノグラ フィーを実践する方法論である厚い記述として文化生活を細部にまでつくり上げることによって研究しようとするものである。 ■ギアーツは、レヴィ=ストロースの(「野生の思考」を批判しつつ)「頭でっかちの野蛮人」だとみなして、シンボル(象徴)を、社会的素材からつくられた テキストとしてではなく、むしろ閉じた構造として分析するレヴィ=ストロースのやり方を「解読的」アプローチとして批判した。 【台詞】(学者)「意味は、目的から生じるのであり、公式の構造から生まれるのではないのじゃ。レヴィ=ストロースがシンボル的要素の内的な関係へ焦点を 当てたことで、実際の生活の非公式な論理が見過ごされているのじゃ」 1966年の論文「文化システムとしての宗教」において、ギアーツは、宗教を次のように定義した:「シンボルの体系であり、人間の中に強力な、広くゆきわ たった、永続する情緒と動機づけを打ち立てる。それは、一般的な存在の秩序の概念を形成し、そしてこれらの概念を事実性の層をもっておおい、そのために動 機づけが、独特な形で現実であるようにみえる」とした※。 【台詞】アナザシ「私にはギアーツが〈厚い記述〉をもって何を言わんとしているのかがわかるよ!」 ※“Religion as a Cultural System”, Geertz defined religion as: “a system of symbols which acts to establish powerful, pervasive and long-lasting moods and motivations in men by formulating conceptions of a general order of existence and clothing these conceptions with such an aura of factuality that the moods and motivations seem uniquely realistic.” 吉田禎吾ほか訳『文化の解釈学 I』Pp.150-151、岩波書店、1987年 |
|
102 |
【X】芸術と表象 芸術の人類学 |
102.
芸術人類学 |
||
103 |
映像人類学 |
103.
映像人類学 |
||
104 |
消失してゆく世界 |
104.
消えゆく世界 |
||
105 |
新しい枝か?古い根っこか? |
105.
新たな枝派か?あるいは古根か? |
||
106 |
フィールド経験を書きたてる
(Writing up the field) |
106.
フィールドを書き上げる |
||
107 |
現在において書く |
107.
現在において書く |
||
108 |
【XI】論争・批判・内省 自己[回帰の]人類学(Auto- Anthropology) |
108.
自己回帰の人類学 |
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109 |
二重のテポストラン、闘争的テポストラン |
109.
テポツォトラン論争/テポツォトランの2つの顔 |
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110 |
テポストラン再訪 |
110.
テポツォトラン再訪 |
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111 |
人類学とは科学なのか? |
111.
人類学は科学なのか? |
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112 |
科学のふりをすること |
112.
見せかけの科学 |
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113 |
インディアンは居留地を出る |
113. 保留地の外へ出たインディアンたち | ||
114 |
誰がインディアンのための語るのか? | 114. 誰がインディアンのために語るのか? | ||
115 |
神としての白人 |
115. 神としての白人 | ||
116 |
権威の神話 |
116. 権威神話 | ||
117 |
出来事の位相 |
117.
出来事の地平線 |
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118 |
自己批判的人類学 |
118.
自己批判の人類学 |
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119 |
人類学のヒーロー |
119.
人類学の英雄 |
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120 |
ミード神話の没落 |
120.
ミード神話の崩壊 |
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121 |
観察される観察者 |
121.
『観察される観察者』 |
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122 |
粘土の足 |
122.
もろい基礎 |
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123 |
自己投射の議論 |
123.
自己投射の問題 |
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124 |
【XII】トラブルからの脱却 文化を書くこととポストモダニズム |
124.
文化を書くこととポストモダン |
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125 |
ポストモダンの麻痺 |
125.
ポストモダンの無気力感 |
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126 |
人類学における女性 |
126.
人類学の女性たち |
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127 |
人類学者たちの親族紐帯 |
127.
人類学者の親族紐帯 |
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128 |
フィールドの協力者 |
128.
フィールドの協力者 |
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129 |
フェミニスト人類学 |
129.
フェミニスト人類学 |
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130 |
フェミニスト人類学の位置づけ |
130.
フェミニスト人類学の位置付け |
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131 |
未接触の人々 |
131.
穢れなき民 |
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132 |
ヤノマモ・スキャンダル |
132.
ヤノマミ騒動(スキャンダル) |
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133 |
内戦を創り出す |
133.
生み出される内乱 |
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134 |
人類学はどこへゆく? |
134.
人類学はどこへ行く? |
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