はじめによんでね!

貨幣の神格化

Apotheosis of Money

池田光穂

★★★★だから貨幣を,個別化された明確 有形な物として偶然に探しだし,見いだ し盗み, 発見することができ, そして一般的宮を明確な形で個々の個人 の占有のもとにおくことができる. 貨幣は, それがたんなる流通手段とし て現れる下僕の状態から,突然に商品世界の支配者,神になる.貨幣は商品 の天国的存在を表わし,他方商品は貨幣の現世的存在を表わしている.自然 的富のすべての形態は,富が交換価値によっておきかえられるまえに,対象 にたいする個人の本質的な関連を前提している結果,個人自身が彼の一つの 側面では物のうちに対象化しており,個人が物を占有するのは,同時に個人 の個性の一定の発展として現れる.つまり羊での富は,牧人としての個人の 発展を表わし,穀物での富は,耕人としての個人の発展を表わしている等々. 反対に貨幣は,一般的富の個体として,それ自身流通に由来してただ一般者 だけを代表するものとして,ただ社会的結果にすぎないものとして,まった くその占有者とのなんらの個人的関係をも前提していない.つまり貨幣を占 有することは,貨幣の個性のなにかある一つの本質的側面が発展したもので はなく,むしろ没個性を占有することである.それは,こうした社会的[関 係]が,同時に感性的・外的な物として存在しており,この物は機械的にわ がものとすることもできるし,同じくまた失われることもあるからである. したがって貨幣の個人にたいする関係は,純粋に偶然的なものとして現れる. ところが,貨幣の,個人の個性とはまったく関連しない物にたいするこの 関連は,この物の性格によって,社会にたいする,享楽,労働等々の全領域 にたいする一般的支配を同時に個人にあたえる.ちょうどそれは,たとえば 一つの石の発見が,私の個性とは全然独立に,あらゆる科学の知識を私がも つ機縁ともなりうるようなものであろう.貨幣の占有は,富〈社会的〉との関 係で,賢者の石が私を科学との関係でおくのとまったく同じ関係に私をおく 第二分冊 140

リンク

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  • 経済学批判要綱(Grundrisse)』▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎
  • 文献

  • 『マルクス資本論草稿集 1 1857-58年の経済学草稿 第1分冊』、資本論草稿翻訳委員会訳、大月書店、1981年 ISBN 4-272-10011-4
  • 『マルクス資本論草稿集 2 1857-58年の経済学草稿 第2分冊』、資本論草稿翻訳委員会訳、大月書店、1993年 ISBN 4-272-10012-2
  • マルクス『経済学批判要綱(草案)』全 5巻、高木幸二郎監訳、大月書店、1958-65年
  • その他の情報


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