かならずよんで ね!

インプラント治療はなぜ危険か?

Why is dangerous dental implant "operation" in Japan?

【免責事項】:このページは、授業レクチャー「医療コミュニケーション と患者の満足」のための資料であり、ここに引用している組織や個人などを批判したり論評するものではありません。またこのページにより不快感や恐怖を感じ ても、読まれる方が自分でリスクをおうつもりで読んでいただき、同意できない方は、ブラウザーの戻るスイッチでもどってください。

池田光穂

インプラント治療の問題をここでは論じる。ここでの 最大の問題は、インプラント治療の医療技術的問題もさることながら、保険外治療であることと、現今の歯科医院経営が過当競争に入り、より利益率の高い治療 を歯科医たちが患者にすすめるという、医療経済的なイシューが、この問題を深刻にして、また、その問題解決のための道筋を複雑にしていると思われます。

1)医療技術がもつリスク:「インプラント手術の過 程でドリルで動脈を傷つけるリスクが高い」。インプラントは口腔内土木工事の発想でつくられています。自然から一番遠い人間の機械的サイボーグの発想と、 現実の脆弱な人間の身体=ソフトマシンの相克があります。

2)専門医免許制度の多様性、なんちゃって専門医の 横行:公的な医療保険でカバーしませんので、業界団体の自主規制でしか、その信頼性を担保できません。さらに、悲惨なことに、日本の歯科医師のほとんど は、個人経営や小規模の診療所が多く、専門医はそこに常駐ではなく、複数の医療機関を渡り鳥のように移動する医療者がおおく、専門医と、治療機関の主治医 との連携にもいまだいくつかの課題を残しています。(→「なぜ街の歯医者は「矯正」「インプラン ト」を勧めるのか」)

3)歯科医療のマーケットが飽和状態である:「昨年 (2016年)の日本の医療費は41.5兆円、うち歯科は2.8兆円だった。20年間で医療費全体が約15兆円増加したのに対して、歯科は微増に止まる。 その一方、歯科医師は毎年2000人ほど誕生しているので、限りあるパイを奪い合うゼロサム状態に陥っている」→(「なぜ街の歯医者は「矯正」「インプラン ト」を勧めるのか」)

4)インプラントは患者さまのためよりも、医院の財 布のためにあるようなもの:(2017年時点の報道です)「歯科医院が1カ月に得る保険の診療報酬は、平均約292万円(厚労省・第20回医療経済実態調 査より算出)。保険対象外のインプラント治療は、1本あたり20万~50万円。売り上げの多いクリニックでは、1日で保険診療の1カ月分以上を稼ぎ出す。 インプラント治療は極めて利益率が高い」(「なぜ街の歯医者は「矯正」「インプラン ト」を勧めるのか」)

5)インプラント事故事案のほとんどは高齢者が多 い。その危険性の可能性は、1)高齢者はインプラント治療に耐えるだけの体力をもつものがすくない(=インプラント治療は体にやさしくない)、2)高齢者 は歯科疾患に関わりやすく、歯科医とよく接触する機会がある(=歯科医にとって説得しやすい)、3)高齢者は時間とお金があるのでインプラントのバラ色の 治療を信じてしまいやすい(=高齢者は比較的コンプライアンスが高い)、4)高齢者になるほどインフォームドコンセントの権利意識が希薄である(=ICの 世代間格差)、ということに起因するようだ。

2019年3月14日に、独立行政法人「国民生活セ ンター」の報道発表に「あなたの 歯科インプラントは大丈夫ですか 」がある。Pdfで出されているために、一般の人はなかなかグーグルでアクセスしても見つけることは困難である。すくなくとも、私たちがグーグル (google)で「インプラント」あるいは「インプラントの危険性」で検索しても、まず【PR】インプラントの安心できる専門医、やあなたの近くのイン プラント専門医の検索が結果が先にでてくる。グーグル(google)はより高価な広告料を出したり、あるいは、魅力ある宣伝文でクリックする頻度が従量 制で、広告主から費用を徴収しているせいである。そのために、わたくしも独立行政法人「国民生活センター」の報道発表「あなたの歯科インプラントは大丈夫で すか 」がある。下線でリンクするが、いつ、このpdfがなくなるかもしれない。なぜなら、インプラントの業界団体の政治的圧力はつよく、国会議員へのロビー活 動をとおして、「データが古い」「更新できないのなら削除せよ」と、法人に圧力をかける危険性だっであるからだ。そのために、すべてのインプラントが、悪 いわけではないが、ダウンサイドリスクについて、普通の市民が知っておくことには、そのような危険性を回避することにつながるので、その項目などをここで 再引用しておこう。

PIO-NET((パイオネット:全国消費生活情 報ネットワークシステム)には、インプラント治療に関する危害情報(注5)が、2011年の公表直後も毎 年度60~80件程度寄せられています。内容を見ると、手術直後から痺 しび れがとれない、治療前に患 者の身体状態を確認せず施術されたなどインプラント治療指針に沿っていないと思われる事例の ほか、歯科医師が治療を断念して、どのように治療を継続したら良いかわからない事例、不具合 の治療のため他院で診察を受けたものの解決に至らないなどの事例もみられます」

このパンフレットは、

1.インプラント治療について :(1)治療の概要、(2)治療指針などについて、(3)歯科医師の専門性について

2. PIO-NETにおける相談の概要 :(1)危害を生じたという相談の件数 、(2)主な相談事例、

3.インプラント治療の経験者へのアン ケート調査 :(1)インプラントは入れ歯、ブリッジよりも満足度は高い 、(2)インプラント治療の満足な点は「よく噛める」。不満な点は治療費の負担が高額なことや破損、ぐらつきも 、(3)手術を受けた歯科医療機関を選んだ理由は「かかりつけの歯科医」が最も多い 、(4)手術中や手術後のリスクについて説明もしくは書面を渡された人は4人に1人 、(5)手術前にCT検査を受けた人は6割程度、特に検査も質問もなかった人は2割 程度(6)4割程度の人がメインテナンスを受けていない

4.問題点 :(1)治療前の全身状態が把握されていないことがある 、(2)歯科医師のスキル、知識が十分でないことがある 、(3)治療後の不具合への対応方法が不適切なことがある 、(4)日頃の口腔清掃や定期検診が重要な理由を知らせていないことがある 、(5)インプラント治療に関する専門的知識や技能を有する歯科医師が必要

5.消費者へのアドバイス :(1)インプラント治療を受ける場合は情報を収集し、治療前には歯科医師に口腔内および全身の状況、治療方法や費用、リスク等に関する説明を求めましょ う、(2)インプラント治療で不具合が生じた場合は、他の医療機関への相談も検討しましょう、(3)歯科インプラントを長持ちさせるには、自分自身での適 切な口腔清掃と定期検診やメインテナンスが欠かせません 、

6.歯科医師会及び関係学会等への要望 :インプラント治療指針のより一層の周知及び、消費者がインプラント治療の専門的知識や技能を修得した歯科医師や歯科医療機関を選べるための取組みを要望 します


私は、この報告書の「6.歯科医師会及び関係学会等 への要望 」の中にある、「インプラント治療指針のより一層の周知及び、消費者がインプラント治療の専門的知識や技能を修得した歯科医師や歯科医療機関を選べるため の取組みを要望します」という箇所を読んで、びっくりした。独立行政法人「国民生活センター」は、上掲の文書のなかにある、ひどいインプラント治療とメイ ンテナンス欠如の理由が、この治療——というよりも原始的なサイボーグ手術——が自由診療でおこなわれるため、歯科医には、インフォームドコンセントをと らなくても、違法行為とみなすことができないからである。これは、法の瑕疵であり、保険医療をおこなっている医療機関は、公的な医療機関であるために、た とえ自由診療においても、保険医療にもとづくインフォームドコンセントが、手術後のメインテナンスにも、自由診療による多大なコストがかかることを説明す る義務があることを法制化しないかぎり、この不確実で危険な治療は今後続くと思われる。

それがわけのわからない途上国ではなく、なぜ日本で は横行するのか?途上国なら、メインテナンスのできる富裕層しかこのサイボーグ化手術を受けないからである。ところが、保険診療をおこなっているところ に、歯科医が患者につけこんで、メインテナンスの経済的負担もできない患者にもインプラント医療を勧める可能性があるからだ。現に、私の主治医は、ことあ るごとに、この治療法をすすめ、それを拒否すると非常に機嫌がわるくなる。そして、原因不明の歯痛で再訪すると「あなたはインプラントしないから歯並びが わるく、それが負担になってこんな状態になるのだ」と、痛いのに関わらず治療をせず、悪態をつく始末なのだ。私は、その後、大学病院に行き、治療してもら うためにさらに36時間痛みを抱えたままであった。さらに、その悪徳歯科医の待合室には、大手のサラ金業者の貸付ローン「インプラントローン」のパンフ レットとポスターが堂々と貼ってある。こんなちぐはぐな医療を野放図にさせるのは、日本政府の責任でもある。

あなたの 歯科インプラントは大丈夫ですか 」の2. PIO-NETにおける相談の概要の(2)主な相談事例は、レアなケースとは言え、実際に事例として取り上げるぐらいの蓋然性があるために、こ こで再掲しておこう。以下の情報は再掲ですので、かならず「あなたの 歯科インプラントは大丈夫ですか 」を参照してください。

(2)主な相談事例

1)治療前の検査や確認が不足しており、治療指針に沿わないと思われる事例

【事例1】

インプラント治療の相談に行った次の予約日にいきなり手術され、出血が止まらず 入院した

ネットでみつけた歯科医院でインプラント治療の相談をし、費用と手術の大まかな 説明を受け 次の予約をした。予約当日は、費用と手術の詳しい話を聞けると思っていたが、いきなり診察室 で治療が始まり3時間かかり医院を出た。約2時間後、口内から出血しはじめたため歯科医院へ戻 った。既にインプラントの仮歯を1本入れてあり、ガーゼを当てられ、痛み止めと化膿止めを処方 され帰宅したが、出血が止まらず救急センターを受診し入院となった。原因は今回のインプラン ト治療であるとの説明を受けた。 (受付年月:2017年4 月、茨城県・50 歳代・女性)

【事例2】

インプラント治療のリスクが上がる骨粗しょう症の薬を服用していたが治療された

数年前、歯科医師の勧めで健康な歯を抜き、すべての歯をインプラントにした。昨 年、定期検 診を受けたときに、レントゲン画像をみた歯科医師から「何か薬を飲んでいるか」と聞かれた。 骨粗しょう症の薬を飲んでいると伝えると「自分の手に負えなくなった。大学病院に行ってくれ」 と言われた。歯科医師には手術前にお薬手帳を提出していたが、薬について聞かれたことはなか った。大学病院では「顎の骨が腐食し始めている」と診断された。 (受付年月:2017年5 月、埼玉県・80 歳代・女性)

2) 歯科医師の技術に問題があると思われる事例

【事例3】

インプラント体の埋めこみが浅く外してやり直した

インプラント治療後に頭痛がして、顎が腫れ痛んだ。歯科医師から勧められた耳鼻 科を受診し たが、耳や鼻には問題がなかった。他の医療機関でインプラント体の埋め方が浅いことが分かり、 外してやり直した。 (受付年月:2017 年 6 月、東京都・70 歳代・女性)

【事例4】

手術中から出血が止まらず「一日様子を見て」と帰されたが、鼻腔底が割れている ことが判明して救急搬送された

上前歯にインプラントを入れるため、下顎から削った骨を上顎に移植する手術を受 けた。手術 中、鼻から回ってくる血液を飲み続けていた。歯科医師に「一日様子を見て」と言われて帰され たが、出血が止まらないので病院に戻ったところ、前歯の上の鼻腔底を割ったため出血していたことがわかった。歯科医師では止血できず、救急車で他院の耳鼻 科に搬送され4日間入院した。 (受付年月:2018年 9月、神奈川県・50 歳代・女性)

3) 手術で生じた不具合への対処に問題があると思われる事例

【事例 5】

手術直後から痛みや痺れが生じたが経過観察とされた

去年、下顎にインプラントの土台を作る手術を受けた際に下顎や、唇、歯茎に強い 痛みが生じ、 それ以降、下顎等の痺れや頭痛が続いている。歯科医師から痛みが引いてから手術を進めると説 明され、1 カ月に 1 回ほど通院して経過を見たが、症状に変化はなく先が見えない状況である。 (受付年月:2017 年 10 月、東京都・30 歳代・女性)

【事例6】

インプラントで蓄膿を起こしていたのに対処されない

インプラント治療を受け、上の歯に仮歯を入れたが痛みがひどく、柔らかいものも 噛めず食べ られなくなった。歯科医師は「歯茎が固まるまでがまんするように」というばかりで処置してく れなかった。セカンドオピニオンを求めたところ「鼻の空洞にインプラントが刺さり蓄膿になっ ている。早くやり直さないと骨がだめになる」と言われた。 (受付年月:2018 年 11 月、埼玉県・50 歳代・女性)

4)日頃の口腔清掃や定期検診が重要な理由が説明されていない事例

【事例 7】

定期検診が重要な理由を説明されずデメリットを認識していなかった

自宅近くの歯科医院へ行き、「丈夫な骨だから、大丈夫」と診断されたので、イン プラントにし た。デメリットについての説明は何もなかった。3 本のうち 2 本が抜け、抜けた箇所の顎の骨が 半分溶けているとわかった。定期検診に行かなかったが、医者からは「定期検査に通うのは常識 だ。体質によっては骨が溶けることがある。」と言われた。事前にきちんと説明を受けていればこ のようなことにならなかった。 (受付年月:2015 年 3 月、埼玉県・40 歳代・女性)

【事例8】

定期検診を受けていたがインプラントが抜けてしまった

月に1回ほど定期検診を受けていたが、数年前に入れたインプラント6本のうち上 の4本が抜けて しまった。自分はインプラントを入れられる状態であったのか疑わしく、インプラントが歯周病 になりやすいことも知らなかった。ぐらぐらして出血し始めた際に相談したが、歯科医院長は待 ってほしいと言うだけで5カ月間何も指示はなく、今は離れた大学病院に通っている。 (受付年月:2018 年3 月、福岡県・70 歳代・女性)

5) 治療をどのように継続すれば良いのかわからないという事例

【事例9】

 紹介状を書くので好きな医療機関へ行けと言われたがどうすれば良い のかわからない

骨が薄いため骨を調整しながら6本インプラント治療をすると説明された。手術1 週間後あたり から膿うみ が出始めた。眼球を抑えても膿が出る。2回目手術後も膿は止まらず、治ると言われ2カ月 が過ぎたところで大学病院でもいいから好きなところに行け、紹介状を書くと言われた。どうす れば良いのかわからない。 (受付年月:2017年12月、埼玉県・50 歳代・女性)

【事例10】

麻痺を生じ治療を続けるのが不安になったがどうすれば良いのかわからない

歯茎の骨が薄いため、下顎の一部を切開して皮膚をインプラントする箇所へ移植したが、下顎 あたりの神経が麻痺して感覚がなくなった。歯科医師に話すと「神経はいつ戻るかわからない」 と言われ、このクリニックで治療を続けるのは不安である。どうすれば良いのかわからない。 (受付年月:2017 年1月、神奈川県・60 歳代・女性)


リンク

文献

その他の情報

Maya_Abeja

Copyleft, CC, Mitzub'ixi Quq Chi'j, 1997-2099

池田蛙  授業蛙 電脳蛙 医人蛙 子供蛙