エキスポランド・ジェットコースター事故
工学コミュニケーションの基礎(EE03)
概要「2007年5月5日(土)、午後0時50分ご ろ、大阪万博記念公園に隣接する遊園地で立ち乗りジェットコースター風神雷神IIが走行中、 左側車輪ブロックが突然脱落し、2両目車両が左に大きく傾いた。この2両目前方の乗客が保守通路手すりに頭部を強打して死亡し、 残り乗客19名も病院に搬送された他、事故を目撃した人のうち、15名も気分を悪くするなど負傷者と記録された。/各車輪ブロックには5つの車輪があり、 これを止めていたナットのところで車軸が折れ、しばらく走行した後、車輪ブロック全体が脱落、 左側支えを失った車両が大きく姿勢を崩した。/原因は車軸に金属疲労で深い傷があったところ、軌道が上向きから下向きに変わるところで、傷が進行中の車軸断面で、 かろうじてつながっていた部分が曲げ力に耐え切れずに引きちぎれた。この遊園地では、装置検査の頻度、検査そのものも不十分で、 同アトラクションを15年間走らせたまま、車軸損傷に気がつかなかった。国土交通省は翌6日、全国に緊急点検を指示した。 同遊園地は全施設の点検をし直し、風神雷神IIの廃止、撤去を決め、遺族の理解を得た上で翌2008年8月に営業を再開するも、 同年10月に倒産、2009年2月に破産した」http://www.shippai.org/shippai/html/index.php?name=nenkan2007_01_Expoland
ジェットコースター脱輪、女性死亡19人けが 大阪・万博公園(http://www.asahi.com/special/070505/OSK200705050005.html)
●製品の情報
風神雷神IIは1992年、“トーゴ”が製造した全長985メートルの立ち乗りジェットコースター
運用会社:株式会社エキスポランド(非上場:1971年-2009年)
●機械の構造上の特性
「車軸ユニットは車軸によってフレームに取り付けら れている」
●JIS基準による検査遵守の違反と自治体への虚偽 報告
「探傷検査」=部品を解体し、超音波などを使い目に 見えない傷を探していく。例年は、1、2月におこなう
2007年1月30日、目視による定期検査なし。5 月半ばに先送り。
吹田市には探傷検査「指摘なし又は良好」と報告
●長期的な技術者不足
ジェットコースターの探傷検査の要員は2名のみ。
●車軸が交換
導入以降なし。15年間。メーカー資料では8年ごと の交換が推奨。エキスポランド側はメーカーにも問い合わせず
●厳しい経営環境
安心・安全がコストの中に計上されていない
●ライバルの登場
USJ以来、客が半減。経営者としては、撤退の判断 をすべきだった時期が必ずあるはず。
●その後の監督官庁=国土交通省の検査
306基のうち、119基でJISでの年一回以上の 車軸の探傷検査をおこなっていない(=国の責任放棄)
「2007年5月6日、国土交通省は全国の遊戯施設
を監督する特定行政庁に対し、コースター等の遊戯施設の所有者等に車輪、車輪軸、軸受、台車及びそれらの取付部並びに軌条について、緊急点検(車輪軸は探
傷試験(上記注))の実施及び点検結果の報告を要請した。同時に遊戯施設の点検整備及び適切な運行管理を図るよう依頼した(第1次緊急点検)。
5月18日時点で、緊急点検を終えた103施設の256基のうち、車軸、車輪、レールに亀裂、破損があったのは、5施設の7基であった。また、探傷試験の
実施については、139施設306基の回答では、設置後1年以上の297基のうち、過去1年以内に車軸の探傷試験を実施していなかったのは89施設の
119基、探傷試験を1度も実施していなかったのは、61施設の72基であった。」http://www.shippai.org/fkd/cf/CZ0200802.html
●事故から倒産まで
「2007年(平成19年)に後述するジェットコー スター「風神雷神II」の脱輪事故の影響で客足が例年の2割以下に減少、また赤字もあり、同年12月10日から休園。2009年(平成21年)3月までに 再開する予定であったが、営業再開が見込めないため、2008年(平成20年)10 月28日に民事再生手続の開始を申請した[4][5]。負債総額は約16億円。ふれあい動物園を中心にさまざまな動物のパフォーマンスや新 しく子ども用ゴーカートを設置し、園名を変えてファミリータイプの遊園地として再生する予定としていたが、支援企業が現れず2009年(平成21年)2月24日の提出期限に再生計画の提 出が困難となった。そのため、2009年2月9日に取締役会で再建を断念して閉園することを決定し[6]、大阪地方裁判所に再生手続の廃止を求める上申書 を提出した。翌2009年2月10日に、大阪地裁が再生手続廃止決定を行い、 2009年2月には破産手続に移行した[7]」株式会社エキスポラン ド
■関連項目
JR福知山線脱線事故:「2005年(平成17年)4月25日に西日本旅客鉄道 (JR西日本)の福知山線(JR宝塚線)塚口駅 - 尼崎駅間で発生した列車脱線事故である。乗客と運転士合わせて107名が死亡、562名が負傷した」ウィキペディア「JR福知山線脱線事故」)
Amagasaki derailment; "The Amagasaki derailment (JR福知山線脱線事故, JR Fukuchiyama-sen dassen jiko, lit. "JR Fukuchiyama Line derailment") was a fatal railway derailment which occurred on 25 April 2005 at 09:19 local time (00:19 UTC), just after the local rush hour. A seven-car commuter train came off the tracks on the JR West Fukuchiyama Line in Amagasaki, Hyogo prefecture (near Osaka), just before Amagasaki Station on its way for Dōshisha-mae via the JR Tōzai Line and the Gakkentoshi Line, and the front two carriages rammed into an apartment building. The first carriage slid into the first floor parking garage and as a result took days to remove, while the second slammed into the corner of the building, being crushed against it by the weight of the remaining carriages. Of the roughly 700 passengers (initial estimate was 580 passengers) on board at the time of the crash, 106 passengers, in addition to the driver, were killed and 562 others injured. Most passengers and bystanders have said that the train appeared to have been travelling too fast. The incident was Japan's most serious since the 1963 Tsurumi rail accident in which two passenger trains collided with a derailed freight train, killing 162 people." - Amagasaki derailment.
この2005年に、私は、大阪大学コミュニケーショ ンデザイン・センターに就職し、テレビで、この事件を知った。その2年後におこったのが、ジェットコースター風神雷神IIの事故である。私たちは、万博記 念機構の貸しビルの中に、入居していたので、エキスポランドの守衛さんと同じ契約をしていたため、守衛さんから、事故の惨状について、伺ったことがある。 そのため、私(池田光穂)にとってこの事件は他人事とは思えない2つの巨大事故であった。
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練習問題(黒田聡先生からの出題)
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実習:教科書082〜085と失敗学会Webサイト(下記URL)を参考に、「維持管理:厳しい経営環境のもとで安全を確保するためにはどうすればよいか」を考えてみましょう。技術者としてどのような姿勢をとるべきかを考え、「提案書」のストーリーをまとめてください。
http://www.shippai.org/shippai/html/index.php?name=nenkan2007_01_Expoland
【状況】
あなたは体験型遊興施設に納入する遊戯機械を製造す る企業の技術者です。このたび、遊戯機械の納入に際して添付する文書(取扱説明書、整備手順書等)の改善を担当することになりました。他社製遊戯器械でエ キスポランドにおいて発生した2007年事故当時は在職していませんでしたが、自社の遊戯器械事業の業績にも打撃があったことは知っています。当時の記憶 が風化しつつあることを懸念するあなたは、納入先施設と製造企業が納入後も利害を共にする関係にあることに着目して、添付文書の改善提案書を作成します。
なお、現行の添付文書には、遊戯機械の機能説明、構 造の説明、整備手順の説明、法令と業界規格が要求する製品安全情報のみが記載されています。また、遊戯機械納入後は問い合わせがない限り自社が保守に係わ ることはなく、安全運行に係わる維持管理は納入先施設担当者が担うことが納入条件となっています。
【条件】
1 対象
納入する遊戯機械に添付する文書の内容を検討する会議の社内参加者
2 目的
納入先施設と製造企業が納入後も利害を共にする関係にあることに着目して、現行納入文書の改善を提案する。
3 ユースケース
遊戯器械の安全運行を納入先施設が長期間にわたって維持し続けていただくために、製造企業としてできることを「従来の取り組みにとらわれず」に、社内に提案する。
4 本講義の主題はA〜Dです。
A 伝える情報を整理する
B 報告のゴールを設定する(理解、同意、態度変容 など)
C 対象者とその認識の現状を設定し、ゴールとのギャップを把握する
D ギャップを埋めてゴールへとアプローチするストーリーを描く
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◆製品は完成しても、ソフトウェアのシステムが問題
の場合は「ボーイング737MAXのソフトウェア問題」を参
照してください。
リンク
文献
その他の情報