デザインを目的に先行させてはならない
You must not
design before you set objectives.
Georges Rouault, 1871-1958
まずコミュニケーションデザインを考える上で大切なこと は、具体的なコミュニケーションに先行して(観念の上でにおいてすら)デザインが先 行す ることはあり得ないということです。多くのコミュニケーションデザインに関する新規の提唱をみても、それ自体が新しいというよりも、既存の コミュニケー ションのモード(様相)を前提にして、そのモードの変更・改善・付加などの提案を、多くのコミュニケーションデザイナーはおこなっています。つまり、既存 のコミュニケーションのモードについて確認をすることなく、コミュニケーションの新規デザインを吹聴するデザイナーがいれば、それには大いに警戒すべきだ と思うのです。
にもかかわらず、先行するコミュニケーションデザインの提唱に関する、歴史や経験的な先行研究を調べることは重要です。
グッドデザイン賞の部門にはコミュニーションデザインという用語が冠されたものがありますが、具体的な定義は示されておらずウェブデザインやソ フト ウェアの設計などが受賞作品になっています。2008年5月に照会したところ、グッドデザイン賞の当該の領域での審査に先立ち定義というものはおこなって いないが、コミュニケーションデザイン領域における審査対象は「広告やプロモーション活動、広報活動、各種媒体(プログラム、実体を伴った機会)、ソフト ウェア」などにあるということを教えていただきました。
この指摘は穏当ではありますが、人々が考えるコミュニケーションデザインに関する領域と大きく逸脱していないように思われます。コミュニケー ション デザインの名を冠した大学組織や企業名も見受けられています。コミュニケーションデザインの名を冠した大学院、学部、専門学校 の教育研究組織は、このメディアや美学的形式を取り扱うコミュニケーションを取り扱うものが多いのです。
他方、教育研究機関においてもコミュニケーションデザインを、そのような形式上の操作を社会的な関係の構築(ないしは操作)と考えるところもあ ります。例えば2005年4月に開設された大阪大学にあるコミュニケーションデザイン・センターという組織(現在では廃止されました)では、コミュニケー ションデザインの定義を「専 門的知識をもつ者ともたない者、利害の立場の異なるひとびと、そのあいだをつなぐコミュニケーションの回路を構想・設計する」と言及しています。
また、企業がコミュニケーションデザインの名前をつけたもの(企業名、研究所という名のコンサルテーション業務など)には、企業と顧客や社会と の関係のあり方のビジネスモデルを提供するものが多いのです。つまり経営学的なコミュニケーションのデザインがビジネスモデルとして提案されているので す。
ウィキペディア(日本語)のコミュニケーションデザインの定義をめぐっては、最初の提案者がウィキペディア(英語)からの翻訳を試みた形跡があ り、その訳語からくる違和感をめぐり日本語のレビューアーから異論がなされ、現在のところ明快な定義は与えてられていないようです。
ウィキには「コミュニケーションデザイン(英語: communication design)とは、人とコミュニケーションをとる印刷、工芸、電子媒体やプレゼンテーションのようなメディア幕間と関係がある デザインの下位の専門分野である」とあります(2013/09/29閲覧)。でも、デザイン=「下位の専門分野」などいうカテゴリーミステイク(=分類範 疇の意味水準を誤解し、誤った推論をすること)しており、決して推奨するものとは言えません。それに比べると電通の解説は多少ましですね。
ただし、いきなり「ラブレター」のデザインなどを事例に
出すところが、常識を疑いますね。日本の広告代理店の大手企業としてはとてもレベルが低く「恥ずかしい」表現となっています。
「「コミュニケーション・デザイン」とは、どのようなラブ
レターを作るかということだけでなく、どのような環境で渡すのがベストか、ラブレターという方法がコミュニケーションの手段として最適であるか、といった
ことを俯瞰して考え、最良の環境を設計(デザイン)していくことです」(2013/09/29閲覧)
デ ザイン系の人にとって、コミュニケーションデザインの歴史とは、デザインとして表象されたものにしか関心がない。しかし、文化人類学者が考えるコミュニ ケーション・デザインでは、人々が歴史的にいつごろから、コミュニケーションとデザインという用語を結合させるようになったのかについて、調べることがあ ります。下図は、Google Books Ngram Viewer を使った[communication]と[design]の英語書籍にみられる頻度変動である。現今のコミュニケーション・デザインという語彙の増加は 20世紀からはじまっているが、とりわけデザインには、1970年代以降の成長が顕著にみられることがわかるはずである。2000年以降の下降は、たぶん データサンプル数の関係になるもので、21世紀以降も増加傾向はあるものと予想される。
リンク(知識)
リンク(マニュフェストや提言)
リンク(組織)
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以前は、ここからは全国の大学で「コミュニケーション・デザイン」を学べる大学をあげていましたが、
現在では、グーグルで検索すればわかりますので、現在は削除しています。
注記:「はてな」で私は「コ ミュニケーションデザイン」定義をしていますが、コミュニティのピアによる編集がされる前のオリジナル原稿(一部加筆)しております。もちろん、 この文言に関してはコピーライトフリーで提供しています。先取権を主張する意思のない文章には自由に引用が可能です。