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産学共創におけるコミュニケーション能力の涵養

Fostering communication skills to undergradraduate students in industry-academia co-creation social context

池田光穂

このスライドは、大阪大学大学院工学研究科×大阪科 学技術センター連携協力キックオフシンポジウム (第14回大阪大学共同研究講座シンポジウム) 「企業×阪大で何ができるか」2020年11月26日 (木) 14:15 から 18:00まで開催される、池田光穂「産学共創におけるコミュニケーション能力の涵養」分のスライドです。

産学共創におけるコミュニケーション能力 の涵養(Fostering communication skills to undergraduate students in industry-academia co-creation social context), 池田光穂、大阪大学COデザインセンター・センター長・rosaldo@cscd.osaka-u.ac.jp 2020年11月26日OSTEC 8階大ホール
共創イノベーションの失敗の歴史から学ぶ

    •    日本におけるこれまでの、大学と企業のベンチャービジネスのほとんどは、それらのアクターの一方あるいは両方の知財侵犯により失敗してきた(=大学人と企 業人の創造観と倫理感覚の違い)。そのような失敗から、企業は、大学との連携を嫌がり、べつの知的創造力をもつ企業を探すという。そして、大学は、ベン チャーが大学の金で運営しているために、企業損失には痛みを感じることなく、また類似のパートナーを探すという。このような状況が今後もつづけば、優良な 私企業は(必ず実を結ぶという予測と確信がないかぎり)大学と絶対にパートナーになりたがらないだろう。大学が無反省な理由は、失敗しても痛くないという 無責任体質と、研究者の後半生をこれに賭けるという切迫感と情熱がそもそも欠けているからである。そのようなことでは、産学連携の文脈でも「破壊的イノ ベーター」は生まれない。

    •    情報の非対称性はしばしば疑心暗鬼をうむ→「イノベーションの現場における対人コミュニケーション能力の涵養はますます重要になる」
オープンイノベーションへの文化的理解

    •    オープンイノベーションとは、これまで会社(ファーム)が囲い込んでいたイノベーションの現場を、会社(ファーム)の外にまで広げて、イノベーションのス ピードを促進させようとすること。要は、イノベーションにまつわる開発の現場を、密室(クローズド)的な環境から、オープンな環境に置くことで、よりス ピードアップさせようとする方法である。これで一番喜ぶのは、(従来型の)会社のほうではなく、市場と消費者である。(従来型の)会社は、これに対して抵 抗する傾向がある。しかし、米国のP&G社(Connect + Development )や日本のユニクロなどは、この方式を採用して、次々とヒット商品を出して、市場も消費者も喜びだしたので、(従来型の)会社は、オープンイノベーション のトレンドを無視することができなくなった。ウィキノミクスを提唱するドン・タプスコットなども、このトレンドに大きな関心をもっている。
オープンイノベーションの絵解き

出典:NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発 機構)『オープン・イノベーション白書(概略版)』初版、に赤字で加筆(池田)した。
COVID-19 流行でますます広がる日本の傷口

+ 小中高における論理的かつ批判的思考能力(critical thnking)の欠如:「大学に入学してからでは手遅れ」(友人のM教授)

出典:国立教育政策研究所「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」
骨太のコミュニケーション教育はCOデザインセンターから……

    •    社会への幅広い関心と課題発見のための多様なスキルを学ぶ横断型高度教養・高度汎用力基礎教育プログラム「コミュニケーションデザイン科目」、 Problem-Based Learning (PBL)も含む高度汎用力発展科目「COデザイン科目」からなりたつ科目を全学生に提供しています。また、兼任教員を通して「超域イノベーション博士課 程プログラム」のコースワークの立案ならびに運営も担当しております。また、一般の大学では教養部や一般教育部に相当する大阪大学全学教育推進機構におい て、各部局や研究所等から提供されている高度副プログラム、高度副専攻、科目等履修生高度副プログラムを取りまとめ認証するための横断型教育部門の管理運 営にも携わっています。
私の教育ポリシー
社学共創プロジェクトのご紹介01

    •    (財)大阪科学技術センターでは、池田(本講師)がコーディネター&ファシリテータとして関わり在関西の企業の若手中堅社員を主に対象とした人たちに「幅 広い視点から考え・整理できる力」を身に付け、「技術と時代の変化に対応し、新しい価値づくりに挑戦する人材」を養成することを目的とした「ネクストリー ダー育成ワークショップ」という事業を2017年度より展開して多くの参加者に好評頂いてきた(2020年度も「IoT、AI、ロボット、ものづくりにお けるイノベーション」と「ビジネスイノベーション」にそれぞれ焦点を当てた2つのプログラムを実施中)。
社学共創プロジェクトのご紹介02
プレゼン風景(ファシリテータのビズ・ノウハウのご紹介)

講師の先生の笑顔に注意!わくわくするとは?→「[スティーブ・]ウォズニアックはいわゆる「オタク」で見知らぬ他人とうちとけるタイプではなかった。つ まり、会合ではみんなの興奮がわからなかったが、彼は家に 帰ってから時間的に遅れて(=タイムラグ)知的に興奮することになる」(池田のHP「わくわくする経験とは?」より)
まとめ——この3つは覚えておいてねっ!!!

    •    大学と産業界の共創が失敗する第一の原因は、現場における信頼とコミュニケーションの不足である!→だからコミュニケーション教育

    •    オープンイノベーションは全部すっぽんぽんではない!! 市場と顧客に対して《秘密=魅力》と《オープンネス=親しみやすさ》が融合したことである!!→だからイノベーションの鍵はウチとソトの区別とそのメリハ リ

    •    職場の指導者(メンターやコーチ)が成功する最大の秘訣は、ともに遊び、リラックスできるかにかかっている!!!→クソ真面目と熱血暴言根性物語よ、さようなら ~(ハートマーク)

背景出典:神戸高速神戸ゲーセン「メトロ zoo」さん
メトロこうべ 猛毒ポスター 全10枚画像(神戸)
クレジット

産学共創におけるコミュニケーション能力の涵養(Fostering communication skills to undergraduate students in industry-academia co-creation social context), 池田光穂、大阪大学COデザインセンター・センター長・rosaldo__cscd.osaka-u.ac.jp 2020年11月26日OSTEC 8階大ホール

発表サマリー

1)日本におけるこれまでの、大学と企業のベン チャービジネスのほとんどは、アクターの一方あるいは両方の知財侵犯により失敗してきた。この状況が続けば、企業は大学とパートナーになりたがらないだろ う。また大学が無責任体質で研究者に切迫感と情熱が欠けていては、産学連携の文脈でも「破壊的イノベーター」は生まれない。それには「イノベーションの現 場における対人コミュニケーション能力の涵養はますます重要になる」というのが、今回の主旨である。

2)近年、P&G社やユニクロなどが、オー プンイノベーションで次々とヒット商品を出し、従来型の会社は、そのトレンドを無視することができなくなっているが、肝はその秘密と公開のバランスであ る。一方、現在の日本に目を向けると、学校の授業におけるデジタル機器の利用時間が短く、OECD加盟国中最下位であるが、チャットやゲームなど学校外の 用途では、他の加盟国同様に利用している。そのような状況では世界には太刀打ちできず、将来に不安が残る。

3)私の教育ポリシーは、指導するのではなく、「と もに遊ぶ。リラックスさせる。」ということに重点を置いている。2017年度よりOSTECの「ネクストリーダー育成ワークショップ」という、企業のリー ダー育成講座のファシリテータを務めているが、ワークショップの狙いどおりに受講者がユーモアをもって斬新なアイデアを発表すると、外部講師が満足するの を感じる。そういったわくわくする場を創り出すことは、コミュニケーションの上で大事なのである。

4)まとめると、大学と産業界の共創には、コミュニケーション教育が必要である。また、オープンイノベーションの鍵はウチとソトの区別とメリハリである。そして職場の指導者が成功する最大の秘訣は、ともに遊び、リラックスできるかにかかっている。

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文献

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