Regional development or Community building?
地域振興とは、経済地理学や地域経済学の用語でRegional development と呼ばれてきたものでした。また日本語で「まちづくり」や「むらおこし」の名で呼ばれるCommunity building、より正確にはCommunity re-buildingという意味も地域振興に加える人たちもいます。日本語で、地域振興と呼ばれるものは、地域振興関連法——いわゆる地域振興5法—— の適用範囲に入る活動を中心に述べられていることが多いので、正確には、私的あるいは公共的な意味をもっていたRegional developmentやCommunity re-buildingというよりも、行政主導の地域開発や「地域づくり」(officially regional and community depevopment plans)という意味あいになります。
そのため、日本で地域振興を学ぶためには、地域振興関連法——いわゆる地域振興5法——について知ることが出発点になります。
過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号) | Act on Special
Measures for Promotion for Independence for Underpopulated Areas, Act
No. 15 of 2000 |
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特定農山村地域
における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成5年法律第72号) |
Act on the
Promotion of the Improvement of Basic Conditions of Agriculture,
Forestry and Other Business in Hilly and Mountainous Areas |
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半島振興法(昭
和60年法律第63号) |
Peninsular Areas
Development Act, Act No. 63 of 1985 |
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山村振興法(昭
和40年法律第64号) |
Mountain Villages
Development Act, |
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離島振興法(昭和28年法律第72号) |
Remote Islands
Development Act |
豪雪地帯対策特別措置法 |
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奄美群島や小笠原諸島についての振興開発
特別措置法 |
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過疎地域活性化特別措置法(失効) |
過疎地域自立促進特別措置法の前の法律 |
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総合保養地域整備法 |
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地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設
の再配置の促進に関する法律 |
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水源地域対策特別措置法 |
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原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法 |
参議 院法制局は 「地域振興法」を説明して、その立法の目的は「国土の均衡ある発展」にあり、その発展のためには2つの類型があるとしています。すなわち、(1)「所与の 制約条件があるために自力でうまく発展が図れないような地域を対象に、国が地域格差の是正を図る観点から支援をする法律で、しばしばハンディキャップ法と も呼ばれ」るもの。もうひとつは(2)産業政策的観点をもつ「産業の過度な集中を防止したり、特定の産業の発展を促進するために、その目的に適した地域を 指定し、そこでの産業の振興を図る」法律です。それ以外にも、第三類型として、ダムや原発建設のための促進法です。
このように、法律が規定する「地域振興」というものは、非常にお堅いイメージがありますが、その理由は、地域振興のためには、税金などの公的資 金を投入し、地域の活性化をはかるという基本的理念と目的があるからです。
では上掲のような「原資」のない地域振興の活動について、みなさんはここで想像してください。現在ではクラウドファンディングや寄付やボラン ティアを募るという意見が出てきそうですが、そのような発想が出てきたのは遅くても21世紀に入ってからで、20世紀の時代の、地域振興は、公共的な資金 をベースにして、地域住民やボランティアの力を借りる地方政治の実践として地域振興が位置付けられてきました。そのような伝統があり、行政には従来型の地 域振興のアイディアやノウハウがいっぱいあります。他方で、資金が終わったために、まさにSDGsの言うところの、持続的可能でなくなったすでに終わった プロジェクトも山のようにあります。その多くは、簡単な報告書が残されるだけで、その成否に関する経営学的・地域経済学的検証が十分になされているわけで はありません。
現在の、日本の地域——定義上、人の住むところはすべて地域(region)です——において、さまざまな振興を試みる個人ならびに団体・法人
は、このような法律に関する知識や、所轄官庁との交渉が不可欠です。そのために、一見、お堅い法律が、使いようによっては地域を有効に再生させる手段に
なったり、単なる資金の投入におわり、終わってから「幻のような夢」として住民に思い起こされるだけの記憶なるのか、違いがでてくるでしょう。また、地域
振興の醍醐味は、結果ではなく、プロセスなのだ、という「評価手法」もこれまでは、地域住民はあまり重視してきませんでした。しかし、住民のアイデンティ
ティ意識の形成と地域振興が重要な意味をもつようになった現在、この最後のポイントも地域振興を学ぶ学生のみなさんには重要な点になると思います。
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