劇場国家
theatre state
以下の『ブリタニカ国際大百科事典』の劇場国家の解 説はいかにも、1990年代の香りがする。その理由を紹介者が講釈するのが、このページの目的である。
「劇場国家・げきじょうこっか・theatre
state;アメリカの人類学者 C.ギアツが『ヌガラ-19世紀バリの劇場国家』 (1980)
において展開した概念。国家と儀礼の関係は従来,国家権力の荘厳さを演出するための目的と手段の関係で論じられてきた。しかしギアツが再現したバリ島の伝
統社会 (ヌガラ)
では国家は儀礼自体を目的とした劇場として位置づけられていた。現実の政治制度は分権的システムから構成され,この拡散的な政治システムを統合するのが劇
場空間としての国家である。そして王や貴族は人々の要請に基づいて盛大な国家儀礼を主宰することによって支配者たりえる。すなわち権力は不在であるが,そ
の祭祀性によって集合的な統合力を付与されるのである。このようにヌガラの国家構造は現実の政治制度の分散性と儀礼における象徴の凝集性という互いに矛盾
する要素から成り,西欧の権力国家観を相対化する重要な視点を提供しているといえよう」出典「劇場国家」)
以下は、ウィキペディアの記事
"In political anthropology, a theatre state is a political state directed towards the performance of drama and ritual rather than more conventional ends such as warfare and welfare. Power in a theatre state is exercised through spectacle. The term was coined by Clifford Geertz in 1980 in reference to political practice in the nineteenth-century Balinese Negara,[1] but its usage has since expanded. Hunik Kwon and Byung-Ho Chung, for example, argue that contemporary North Korea is a theatre state.[2] In Geertz's original usage, the concept of the theatre state contests the notion that precolonial society can be analysed in the conventional discourse of Oriental despotism.[3]" - Theatre state.
政治人類学では、劇場国家とは、戦争や福祉といった 従来型の目的ではなく、ドラマや儀式の上演に向けられた政治国家を指す。劇場型国家における権力は、スペクタクルを通じて行使される。この言葉は1980 年にClifford Geertzが19世紀のバリのネガラにおける政治的実践に関連して作ったものであるが、その後、その使用範囲は広がっている。例えば、Hunik KwonとByung-Ho Chungは、現代の北朝鮮は劇場型国家であると論じている。ギアーツの当初の用法では、劇場型国家という概念は、先植民地社会が東洋の専制君主制という従 来の言説で分析できるという概念に異議を唱えたものであった。
Bibliography;
Geertz, C. (1980) Negara: The Theatre State in Nineteenth-Century Bali.
Princeton University Press.[pdf_full_text]; Kwon, H. & Chung, B-H. (2012, Chap.2)
North Korea: Beyond Charismatic Politics. Rowman & Littlefield,;
Heder, S. "Political Theatre in the 2003 Cambodian Elections", in
Strauss, J. C. & O'Brien, D. C. (eds.) (2007, p.151) Staging
Politics: Power and Performance in Asia and Africa. I. B. Tauris,
★劇場都市 : 古代中国の世界像 / 大室幹雄著,三省堂 , 1981は、都市というものはユニヴァーサルに劇場性を備えたものだというテーゼに導かれて大室は中国の古代都市の劇場性をパノラマのように分析する。
書肆の筑摩書房の説明:「皇帝、知識人、遊侠、軽薄 少年たちが跳梁跋扈する劇場都市。宮廷と地下迷路を密通して上演されるさまざまな祝祭劇。—牧歌的生活を謳歌した竜山文化から都市成立以後の殷周文化への 変遷をダイナミックに描いた古代中国の都市文明論。社会学、歴史民族学、考古学、深層心理学の成果を駆使し、建築・庭園・芸術・舞踊・祭祀などの表徴から 都市を精緻に解読する画期的論考。」
章立て:都市がなぜ問題になるか
/都市の出現とその自覚
/大同コンプレックスと小康コンプレックス
/知識人の登場と退場
/宇宙の鏡
/権力の結晶
/遊戯の半都市
/日常生活の文法
/文法からの逸脱
/漢代バロックの生活
/遊侠と倡優
/アルカディア複合とユートウピア複合
/続いて現われる都市どもへの展望
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