はじめに よんでください

タテ社会の人間関係

The vertically‐structured society, her name is Japan

中根千枝先生(Chie NAKANE, 1926- 2021)近影(2014年産経新聞より[部分])

池田光穂

︎「思うに日本社会のいくつかの特徴を述べることはやさしいが、それらが社会全体 に対してもつ意義を説明することはそれほど容易ではない。たとえば、官僚について、財閥につい て、軍部について、政党について、簡単な説明を与えることはさまでむずかしくないが、各集団に それぞれの正当な位置づけを与え、他の党派との関係を規定し、これら集団の相違を識別し、これ を主とし、あれを従とすること——これは果てしない徒労のようにも恩われるが——それにもかか わらず、当然負わねばならない仕事である。本書を読んで、解答を得た疑問よりも新しく起った疑 問の多いことがわかったとしても、失望すべき筋合のものでは全くない」(ノーマン 1993:319)日本における近代国家の成立』より。

タテ社会とは、人間関係において、役職や階級などの 上下の序列が重視される社会のことで、中根千枝が1967年の著書『タテ社会の人間関係』で、日本社会の特徴を表すものとして、世界のみならず、日本人の 自己表象としても、21世紀のいまだに国民に膾炙している用語である(→日本文化人類学史)。——レイモン・アロンのプロジェクトである(と思われる)The nature of human society series のシリーズの一冊としても採用されている。

この書物は、日本の近代化の家庭、それによる社会変 化などを取り扱っていない(→日本の近代化はどのようにとらえられるべきか、日本社会はどうあるべきか、どのように進むべきか、については答えない)(中 根 1967:3)。日本の社会現象を材料として、社会人類学でいう「社会構造」を比較する上で、どのように位置付けられるかについての「新しい理論」を提出 する。

章立て

1.序論

2.「場」による集団の特性

3.「タテ」組織による秩序の発達

4.「タテ」組織による全体像の構成

5.集団の構造的特色

6.リーダーと集団の関係

7.人と人との関係

8.終わりに

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Japanese society / Chie Nakane, Berkeley : University of California Press , 1970,の章立て

●組織論としての「タテ社会の人間関係」を逆照射す るもの=日本の軍隊

「「日本軍兵士の大きな弱点の一つは、 直接部隊を掌握する指揮官、つまり小 隊・中隊長などの初級幹部将校で、少尉 からおむね大尉クラスのリーダーに事故 が生じた場合、指揮下の下士官兵が簡単 に戦意喪失することだ。日本軍下士官の 優秀さと精強さは日露戦争の頃から確認 されているが、問題は彼ら優秀な下士官 が、軍隊指揮と部隊の団結の維持という 点で、彼ら下士官より若く軍隊経験も浅 い小・中隊指揮官職務の代行ができない 点だった」田中正人『図解日本陸軍歩兵』p.184,2006.」

日本帝国の軍人で、前線で精神病を発症し、戦 後長く精神病院に入院していた人たちの多くにインタビューをとると、軍隊経験は「いつもなぐられていた」という(吉永 1987)。ECF(極端な事例による構成)であるかもしれないが、その発症と被害経験とは無縁ではないだろう。とりわけ彼らは「つねに殴られていた経 験」が、その心の中に消え去りがたく刻印されているわけだから……そう考えると、どのような軍隊にも陰湿ないじめは事欠かなかったにせよ、日本の軍隊にお けるいじめや虐待は日常茶飯事であったようで、この問題に切り込まない限り、日本の防衛力云々を単に「兵力」のみで誇ることは、ほとんど無意味どころか有 害ですらある。

日本の軍隊のらくろ帝国主義入門︎▶︎︎人間というものの失敗性▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎︎▶︎▶︎

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練習

1.猿蟹合戦の物語において、猿、蟹、栗、蜂、牛の 糞、臼は、水平的な権力関係にあることを示しなさい(→「猿蟹合戦にみ るビジネス倫理」)

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