地域科学・地域研究・国別研究・戦略情報・地政学
Regional science, area studies, regional studies, country studies, strategic information, and geopolitics
地域研究を始めるための概念図(左)/マルチサイトエスノグラフィーと古典的なそれの違い(右)
left: A
conceptual diagram for getting started in area studies/ right: The
difference between multi-site ethnography and classical one
解説:池田光穂
■ 地域科学(regional science)の定義
地域科学ということばそのものは、常識的に定義できないよ うなことばではない(この表現が二重否定=肯定であることに注意)。地域科学とは「地域(region)を研究対象にする経験的あるいは実証的な諸 学問分野が集合した総合的科学」である。このことに異論をつける人は少ないだろう。
■ 地域研究 (area studies/regional studies)
【地域研究の定義】
地域研究(regional studies)とは地球上の地域に関するさまざまな情報を整理、統合する学際研究のことである。
また別の意味の個別の地域研究、つまりエリア・スタディーズ(area study, area studies)地域研究では、地球上の表面を大きな諸地域(アジ ア、アフリカ、北米、中南米、ヨーロッパ、オセアニア 等々の大区分あるいは、北アジア、東アジア、中米、南米、ミクロネシア等々のより細かい地域 の小区分)にわけておこなう、それぞれの地域別の研究分野領域がある。 ("interdisciplinary research (as in the social sciences) in a distinct geographic, sociocultural, or political area aimed at a scientific understanding of the area as an entity and at relating it to other areas" - Merriam-Webster.)
これらは、文化人類学、地理学、政治学、経済学など の「地域を研究対象にする経験的あるいは実証的な諸学問分野が集合した総合科学」である。地 域研究をおこなっている機関は、大学の研究所や国立あるいは私立のシンクタンクなどにある。(→「地域科学・地域研究・国 別研究」)
地域科学に類似する学問の名称に、地域の研究・エリ アスタディーズ (area studies)という用語がある。地域研究とは、地球上の表面を大きな諸地域(アジア、アフリカ、北米、中南米、ヨーロッパ、オセアニア等々の 大区分あるいは、北アジア、東アジア、中米、南米、ミクロネシア等々のより細かい地域の小区分)にわけておこなう研究分野がある。これも文化人類学、地理 学、政治学、経済学などの「地域を研究対象にする経験的あるいは実証的な諸学問分野が集合した総合科学」である。地域研究をおこなっている機関は、大学の 研究所や国立あるいは私立のシンクタンクなどにある。
これは、地域研究をおこなうことに具体的な目的があるから である。世界の諸地域の動向を知るということは、政治ならびに経済に大きな支配力を行使することができるからである。地域研究が第二次大戦後にアメリカ合 州国で大きく発展したのもこのことによる。(→戦略情報の 項目を参照してください)
■ 国別研究 (country studies)
政治研究を例にとればもっとも端的な例は軍事=平和研究に それをもとめることができる。アメリカ(合州国のアメリカ)の国防省では、地域研究は、国家間をこえる広域的な治安状況の把握の基礎としての国別研 究(country studies)というかたちで調査研究されている。日本の地理学教育における国別の教育には、それが換骨奪胎された形で化石的に残っているとい うのは言い過ぎだろうか?
■ 戦略情報 (strategic information)
問題にしている地球上の空間的領域(=地域)への国家レベ ルの政策を決定する際に、動員される情報の総体である。ここでの地域情報は、戦略を決定する際の資源となり、つねに変化し更新される可能性をもつものであ る。
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■ 地政学 (geopolitics)
このような地域研究ならびに国研究のルーツをなす、19世 紀的学問こそが地政学(geopolitics)である。政治や戦争に勝利するためには、敵の空間的配列とその動態に着目することが重要であると考えられ たのである。
● 地政学(geopolitics)
Rudolf Kjellen (1864-1922)[チェーレンと読む]によって考案された用語で、政治地理学に対抗した動態的な権力政治論として構想された。国家を領土を維持・開 拓・進展させようする有機的形態(Lebesform)とみるところは、この時代の国家観を反映している。
● 地政学についてより詳しく知りたい方はここへリンク(地政学:池田光穂)