大学の授業は「役にたつ」のか?
"Tentazioni di Sant'Antonio"
di Hieronymus Bosch (Olanda 1453 - 1516). Olio su tavola, 131 x 238 cm
aperto, 1501. Museu Nacional de Arte Antiga, Lisbona
池田光穂, 2003.02.14
I さんに
「大学の授業やくにたっていない」という主張はよく聞かれる。
多くの教員は「そんな一般化はやめくれ〜、私の授業を聞きに来てくれ〜」と言っているかも? あるいは 「役にたった【具体的な】教育はいったいなんだ?」と質問するかもね(そのココロは「そんなものはない」)。
シニカルな文化人類学者なら、メッセージの内容よりも、そのメッセージが言外に伝えたいこと——メタ・ メッセージと言います——を社会的に理解しようとします。
この批判のメタ・メッセージは、偏った情報にもとづく世論の操作のようです。つまり「大学はもっと役にた つ人材を輩出するために、役に立つ教育に励むべきだ」ということなのでしょう。それなら、そうとはっきり言えばいいのに、と私は言いたいですね。
少しでもそこらの大学で取材すれば、学生(当事者)が/学生の親権者たちが/大学当局が/大学教員が、考 えている「役に立つ」という内容は、多様なものがあることに気づくでしょう。また、それらの主張の中には相互に矛盾するものがあることがわかるでしょう。
大切なチェックポイントは、多様なニーズの大多数を満たすように大学が機能しているかどうかで、そのこと にもとづいて「こう世論に訴えるべきだ」とその種の主張する人は考えるべきですね。
まず、それらの声を声高に主張する人たちが大卒であり、自分の取材能力のリソースが在学時の大学教育ある いは大学の環境とどう関係しているか、反省しているかをチェックすべきですね。
人に(言外の)道徳を垂れるのなら、それらの自己反省をやってからにしてほしいですね。
【資料】
「大学で知識身につかず」が7割…読売調査 今の大学生や大学を卒業した若者について、知識や学力がきちんと身についていないと感じることがあるという人が70%に上ることが、読売新聞社の全国世 論調査(先月25、26の両日実施)でわかった。
身についていないと感じることがあると答えた人に、具体的な 点を聞いたところ、「筋道立てて考える習慣が身についていない」(54%)が最も多かった。また、同じく84%が、知識・学力不足の大学生の増加は日本企 業の競争力や技術力の低下につながると思う、と答えた。
今の日本の大学のあり方については、「満足」25%に対し て、「不満」は61%に上った。今の日本の大学が、学生にとってどのような場所になっていると思うか——では、「友人や仲間を作る」(53%)が最多で、 「専門的な知識や技術を身につける」(35%)や「教養を身につける」(21%)を上回った。
仮に小・中学生の子供がいるとして、どの程度の教育を受けさ せたいと思うかを聞いたところ、「大学」(58%)と「大学院」(6%)を合わせ64%に上った。ただ、これらの人に子供が大学に進学したくないと言った 場合の対応を聞いたところ、「子供の自由にさせる」が73%で、「大学に行くよう説得する」は26%だった。(読売新聞)
出典 「大学で知識身にづかず」が7割—読売調査(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl? a=20030213-00000011-yom-soci (2003年2月14日)
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