今回のテーマは はじめての人はこちらをよんでね!
マニュアル戦術の陥穽(かんせい)とその克服法!
読み手を意識するレポートを書く:情報の読み方とレポートの書き方/知的生産学入門
講師:池田光穂
1. マニュアルというのは、つねに実践(=実戦)とセットになっていることを忘れてはなりません。 2. マニュアルのない実践/実戦は、それはもうシュミレーション(模擬実践/模擬実戦)にほかなりません。 3. 後半の授業の目的は、優秀なレポートが書けるようになるために、さまざまなノウハウを授けることですので、今まで述べたマニュアル型の伝授とセットになった実践について以下で(簡単に)述べましょう。 |
* * *
(1)全く経験のない者がいきなり優秀なレポートが書けるわけがありません。文章を書くという経験がないとレポートは上手に書けません。したがって、千里の道も一歩からという教訓のとおり、短くても論理的に筋が通る文章を書きつらねる、ということが肝要になります。
【教訓】レポートの善し悪しは、レポート作成の経験の量にある程度反映される。
(2)文章を書く練習を重ねてゆくと、他人の文章の書き方がとても気になるようになるし、上手だと 思った人の文章の構成や修辞(レトリック)をまねてみたいと思うようになるでしょう。目標にしたい文章の構成や修辞をまねて文章を書く――課題のレポート にそれを応用してもよいでしょう――ことは、文章を洗練させるための十分なシュミレーションになります。もっとも小説を書くのに工業英語の論文を参照した り、論文を書くモデルに夏目漱石を範とするわけにはまいりません。その分野の中で優秀な文章だと評価を受けているものの中から、ひとつをモデルにしさない ということです。
【教訓】上手になるためには、上手だと思われている人の手口(ここでは文章の修辞)を模倣すればよい。
(3)人間というものは自己中心的な動物です。結構悪文を書く人でも、他人の悪文を批判をするときに は結構辛辣にまた的確に言えるものです(あれ?これ私のことだったりして(^_^)))。したがって、できたレポートをお互いに読んでもらい批判してもら うのは、レポートの改善にはても簡便で便利な手段です。その際に気をつけることは、他人の指摘をまず冷静に受け入れて、それが自分が採用した表現方法が適 切であるか吟味することです。相手が誤解している場合は、文章構成に欠陥があるということでしょう。相手の揚げ足とりとか、単に好みの問題だけなら無視し てもかまいませんが、<人間は自己中心的である>という命題にそくせば、わずかな指摘でも、それは改善の余地があると考えるべきでしょう。
【教訓】自分の文章を他人に読んでもらったり、聞いて批評を受ける。
(4)上手な文章を書ける能力は、他人の文章をよく読める能力と相互に関係しています。もちろん、読 むことと書くことは、それぞれ別の行為ですから、よく読めばよく書けるというわけではなく、よく読む人が書く訓練を積めば、よく読めない人に比べてその上 達は早い。よく書ける人が、よく読める訓練を積めば、よく読めない人にくらべて、その上達は早いということです。ということは、文章の、読解と批判能力を 鍛えれば、文章も上手になる潜在力がつくようになるということです。
【教訓】漫然と読書するのではなく、批判的読解する訓練を重ねる。
(5)最後は、まったく技術的なことです。誤字脱字を根絶し、簡潔で正確な文書を仕上げるには、文章を推敲し完成したと思った時点から、黙読5回、音読3回(この回数は恣意的なものなので、人によって多寡は自由に変えること)をこころみてください。私がこのように書くと「オッサン、何をうるさいことを書いているんだ!」と思う人がいるかもしれません。ところが、オットコ!どっこい、これは長文のレポート(卒業論文や投稿論文)を書く際に、推敲にかかる時間をあらかじめ計算するには非常に重要なポイントになります※。なお音読による修正は、なんか大昔の文章作法のように感じますが、木下是雄『レポートの組み立て方』(pp.135-139)にも、<プロトコルによる修正>として文章を的確にスラ〜っと読ませるための技法として採用されているのです。
※【問い】400字換算で200〜300枚にもなることがある修士論文を音読する時間を計算したことがありますか?
【答え】400字を70秒で音読すると、250枚なら5時間近くかかります。3回すると丸一日とりかかっても、せいぜい1日2回(10時間!)ですので、都合1日半それに専念しなければならないことになります。
以上のことをもういちど復習します
1.短くても論理的に筋が通る文章を書く
2.目標にしたい文章の構成や修辞をまねて書く
3.他人の批評を参照する
4.よく書くためには、よく読むことは必須!
5.完成した時点から、黙読5回、音読3回