保健の地政学
Geopolitics of Health
※このメモはやがて池田光穂『実践の医療人類学』世界思想社、2001年の刊行に結実しました。
実践の医療人類学に関する書誌、ならびにこの本の有効活用のためのユーザーガイドはつぎのページ をごらください
カード番号 | タイトル
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内容 |
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1 | 医療化は普遍的な現象か? | 医療化は普遍的な現象か? 途上国においても、生活世界の医療化はつねにおこるものなのか? クラインマン(訳書p.62)によると、中国においてそうだということになる。彼はその理由を、(冗談か否かは不明だが)西洋医学のリバイアサン性に求め ている。 |
2 | 医療化を近代化のプロセスととらえる | ゾラの主張によれば、医療化は近代化のプロセスのなかで登場するものであるという (Zola 1972b) |
3 | 公衆衛生とヘルスプロモーションにおける<主体>と<身体>の形成 | プロモーションには何をつかうか?<教育を通して>→<図像> |
4 | 医療体系論なのか? | 生物医学モデル 民族医学モデル はたして、この二項対立なのか? |
5 | ヘルス・プロモーションにおける合理的運用モデル | い)目的:彼らの態度や行動を変えなければならない【意図】 ろ)彼らの態度や行動はその知識によって支えられている。【認識論】 は)彼らの知識が変われば、彼らの態度や行動も変わる。【仮説】 に)彼らの知識を変える実施計画をたて、それを実行する。【実践】 ※認識論の前提には、人間の合理的行動モデルがある |
6 | 社会変革モデル=近代化論 | い)目的:彼らの行動を変えなければならない【意図】 ろ)彼らの行動はその知識をも含む全体的図式(=宇宙観)によって支えられている。【認識論】 は)彼らの宇宙観が変われば、彼らの行動も変わる。【仮説】 に)彼らの宇宙観を変える実施計画をたて、それを実行する。【実践】 ※認識論は文化相対主義だが、意図と実践は社会に介入することを躊躇しないモデルである。 |
7 | 「信条システム」論を医療的多元論とからめてもっと鍛えること! | |
8 | 病気を存在論的にとらえる/病気を社会構築的にとらえる | ・研究対象が多様な混成体である場合、その批判はどのようにして可能になるのか? |
9 | この論文の一貫したイデオロギーとは何だろうか? | ・その主張に不整合はないだろうか? ・逆にイデオロギーに引かれて、事実をそのように解釈しすぎているのではないだろうか? ・もしそのような過剰解釈が許されるとしたら、それはどのような別のイデオロギーから保証されうるのだろうか?? |
10 | 抵抗の実践 | :モラルエコノミー論争を参考に再構成する。 |
11 | 文化変容を社会関係の変化としてとらえる(女性の地位の変化など) | どんな伝統も文化も一枚岩ではない。つねに内部に複数の競合する価値や規範がある |
12 | 答えを求めること | 今抱えている問題に必ず正解があると考えられるような合理的根拠はない。 |
13 | 文化の抑圧性 | 文化は抑圧的に働いてきた諸相があることを再確認 1.支配者が正統な「文化的」規範や価値を押しつけてきたという歴史的事実。 2.アジア文化、アメリカ文化などのように縦割りの区分を、恣意的に隣り合わせたり、疎遠にしたりする論理的な恣意的な操作における論理的誤り。 |
14 | 文化的ディアスポラ(ギデンズ) | |
15 | 「個人では守れることが、全体としては守れない」という社会状況 | |
16 | 協力の新しい定義 | 協力とは支配者側が正当性を得ている状態である。 |
17 | ヘゲモニー概念 | 暴力的に相手を従属させるのではなく、支配階級がリーダーシップをとることによって従 属階級との合意をとりつけることによって権力を掌握すること。 |
18 | ベゲモニー概念に自覚的になること | 自己のドミナントな理論への従属に対して自覚的になること。どうして、そのような理論
をとる(従属する)ことになったのか、自己の別の理論に対して、どのような「合意」が形成されたのかを冷静に分析すること。 支配の側が支配を正当化するのに成功するかどうかは、支配される側に全てこうあらねばならないと、思う込ませるかどうかにかかっている。 |
19 | あるがままの社会を記述することはあり得ない。 | あるモデルを通して社会をみる。これが民族誌の過去から現在に至る挑戦であった。しか し、社会を「表象」することの視点の権力性問題がとり沙汰されるようになって、この社会観の提示と、その視座の政治性を著者たちは明確にすることが現在で は不可欠になっている。 |
20 | 審問 | <外部から自分の文化について考える>という真の意味での民族誌的立場が、私の論文に
はあるのか? |
21 | この論文を中和化する方法 | ・「対象に受動的に向かい、自己を内容化する哲学」(アドルノ)に抵抗すること。 【処方箋】 1.それを描かしめた歴史的・社会的・政治的文脈を明らかにする。 2.この論文のイデオロギーを主張する。 3.日記等を用いて、その資料が採集された状況を再現する。 |
22 | 本書のポリシーを5原則にまとめる | 1.援助するものが、援助されるものをつくりだしてきた 救い手を差し伸べてきた先進諸国すなわち「援助する側」が、医療援助という枠組みを最初に想像/創造したのであり、「援助される側」はそれに連動して創 られたり、時に対抗的に形成された。 2.援助されるものは、フィクションではない 援助されるものの歴史的ならびに社会的構築という事実を認めることは、援助以前の彼らの姿を想像し、それを復権することに必ずしも結びつくわけではな い。むしろ、援助されるものの実態をあきらかにし、その中で構成される人びとの生き方を理解することをわれわれに要求する。したがって、援助されるものの 現在は、決してフィクションではない。 3.援助されるものの成り立ちは、客観的な表象化の過程を経て抽出されるものではない。枠組のなかでむしろ主観的に構成されるものである。つまり、援助さ れるものをどのように理解するかが、問題になる。理解に根拠をもつために状況は論争的であり、解釈の妥当性が議論にさらされる。その際に重要となるのは、 その解釈がだれのものであり、何のためのものであるかという議論である。(→ファノンとマノーニの解釈の違いについて:現象を本質主義化してはならない: ファノン「思考の人種化」) 4.第三階級と同様に、援助されるものの実体とは、何者かになろうとする人たちのことである。 |
23 | 国家に抗する社会 | PHCの社会正義<対>非協力的態度 人びとの抵抗であり、また国家の論理あるいは道徳の定義(=社会正義)に対する、一種の「対抗文化」(クラストル『国家に抗する社会』)の形成なのであ る。 |
24 | 社会的大衆の3つのカテゴリー | 1)現地において国家の末端で保健施策に従事する人びと(政府あるいは非政府組織の人
間、しばしば土地以外の出身者に占められる少数派) 2)PHC施策を通して(1)にリクルートされた現地側のエージェント(教師・若者・商店主で教育をうけたり、政治的発言力をもつ男性が多い) 3)沈黙する多数派(母子保健政策のターゲットとなる、母親や小さな子供たち) ■このような概念図式を通して何を言いたいのか→現地社会は一枚岩ではない |
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