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疾病文明論

"Diseases of civilization"

池田光穂

説明

「文明は新しいタイプ の感染の様式(→「ミクロ寄生」と「マクロ寄生」『病気の文明史』 を参照)をつくり出し、その感染症を圏内に維持し圏外からの感染症に対して疫学的 ならびに社会的に防衛する広義の「免疫」メカニズムを発達させた。農耕化に伴う感染症からの危機を、文明圏をつくるこ とで人類は病気と独自の共存関係をつくりあげた。マクニールはこのような文明の領域を「文明化した疾病の供給源」 (Civilized Disease Pool)と呼んだ。彼の主張を整理し模式的に示したのが図3である。この模式図では「文明化した疾病 の供給源」は疾病文明圏とし、文明圏において疾病を認識し対処してきた社会的活動としての医療体系をつけ加えた。どの ような文明圏においてもさまざまな種類の治療者がおり、社会階層などに応じて一定の分化をとげているからである。それ らを宮廷医療、大衆医療、土着医療からなりたつ多元的な医療体系として表現してある。歴史の資料としてもっともよく残 っているのは、王宮や貴族に仕えた医師たちが残した歴史資料である。だが実際には都市に住む大衆を対象にしたり村落民 を対象にする医療が存在していた。これらの医療の実態は歴史的資料として残されることは少なかった。同じ疾病文明圏内 の疾病構造は類似しているために、それらの疾病観や治療法は、それぞれの医療のあいだで相互に関連したり類似していた であろう」。

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文献

その他の情報

Copyright Mitsuho Ikeda, 2000

解説「病気の文明史

仮想・医療人類学辞典