領 有
appropriation
解説:池田光穂
領有とは、キリスト教会、団体として聖職禄を専有できることを定めた教会法に由来する。それが結果的に、事物の排他的独占という今日の定義になった が、語源には、奉仕義務(=聖職の実践)行為によって受け取ることができる便益(=財産の可処分権の取得)を保証したという意味が含まれていた。
今日では、領有は、他者の所有物をあたかも自分のものとして用いることを言う(ようするに「猫ばば」的行為のことである)。
この領有の概念がもたらす新しい意味作用は以下のような現象を描写する際にとくに際だつ。例えば、支配されてきた者(例えば、被植民者)が、支配す る者(宗主国)に対して、支配する者の事物をあたかも自分のものであるかのように振る舞うのは、植民地支配に対する「抵抗」の実践面を思い浮かべることが できる。他方、この逆であれば、植民地のシステムにおける典型的な「搾取」構造が見えるという訳である(実際に、そのような解釈が妥当であるかどうかは別 として)。
Copyright Mitzu Ikeda, 2002